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グーグル・ヤフー提携 公取委、苦渋の決断 残る懸念、海外では監視も

 米グーグルと日本のヤフーの提携について、公正取引委員会が2日、改めて「独占禁止法上、問題ない」との判断を下した。「競争は維持される」との両社の説明を覆す材料がなく、国会議員や有識者らから懸念する声が強まるなか押し切った形だ。一方、グーグルの市場シェアが高い欧州の当局は、同社の正式な調査を決めた。

  ▽筆者:小島寛明、五十嵐大介

  ▽この記事は2010年12月3日の朝日新聞に掲載されたものです。


 ■公取委、揺さぶられ、判断

 提携によって国内における検索エンジンなどの技術の約9割がグーグルのものとなる。公取委は提携を容認する一方で、「両社の説明どおりに提携が実施されない場合には、検索サービスや検索連動型広告の分野に大きな影響を与える」として、今後も両社の動向を注視する方針だ。「目安箱」として専用メールアドレス(kensakukoukoku@jftc.go.jp)を開設し、関連情報の提供を受け付ける。

 ヤフーが7月に発表したグーグルとの提携は主に、(1)検索エンジンをグーグルの技術に切り替える(2)利用者が打ち込んだ検索語に連動して広告が自動的に表示されるシステムの提供も受ける――との内容だ。公取委は、この2点をめぐる懸念について下記のように判断し、「引き続き両社間の競争は行われ、直ちに独禁法上問題とはならない」と結論づけた。

 公取委は夏ごろから、独占禁止法違反事件の部署の担当者らも含め、事件化の可否を検討。だが、最終判断は「問題なし」だった。背景には、企業努力で良質な商品を提供した結果、ライバルの事業が困難になっても、公正な競争であって独占禁止法に違反することにはならない――との考え方がある。

 日本のヤフーが質の高い検索エンジンを求め、それを提供できるグーグルを選んだことでグーグルの支配力は強まるが、それだけでは「違法」といえないという。

 世界市場で優位に立つグーグルがその地位を利用してヤフーの提携先選びをめぐって、ライバル社を排除するような行為があれば独禁法に違反する可能性があるが、調査の結果、そういう行為は見つからなかった。だが、公取委のある幹部は言う。「今後、あきらかな問題があれば、ちゅうちょせず事件にする」

 ■欧州委は正式調査へ

 2日午前、公取委。自民党の議員連盟「インターネット検索問題調査研究会」会長の川崎二郎・元厚生労働相は竹島一彦委員長と向き合い、提携への懸念を伝えた。両社の提携発表は7月。その前に相談を受けた公取委が「問題ない」と判断したことにさかのぼって、苦言を呈した。「拙速だったのではないか」

 提携をめぐる懸念の一つは、グーグルとヤフーの両社が協調して検索連動型広告の料金を引き上げるのが容易になることだ。議連の会合に出席したネット広告主は、提携発表後すでにグーグルの広告サービスで価格が上がっていると訴えた。一方、グーグルは「価格を操作することはあり得ない」と否定している。

 検索結果の順位付けが「ほぼ同じ」になることについての懸念もある。東京大先端科学技術研究センターの御厨(みくりや)貴教授は「検索エンジンが独占され、知識の画一化がさらに進むのは困る」と語る。

 グーグルの市場シェアが一部で9割を超えた欧州では、すでに当局が監視の動きを

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