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新興市場活性化へ向け 菅政権が「金融成長戦略」を策定

 金融庁は7日、金融市場の競争力を高める金融成長戦略(アクションプラン)を正式に発表した。信頼性と成長力を失った新興株式市場の改革を柱に据えている。だが、近年は国内新興市場を素通りしてアジア新興市場に上場をめざす国内ベンチャー企業が増えており、市場活性化への道のりは険しい。

  ▽筆者:畑中徹、前地昌道、安川嘉泰

  ▽この記事は2010年12月8日の朝日新聞朝刊に掲載されたものです。

 

 ■信頼回復まったなし、金融庁が本腰

 「金融自身も成長産業」。7日に会見した東祥三内閣府副大臣(金融担当)は力を込めた。アクションプランは、政府が6月下旬に示した「新成長戦略」の金融分野に金融庁が肉付けし、実現に向けた工程表を示したものだ。とりわけ、長期低迷する新興市場立て直しは緊急の課題。経済の成長には、若い企業の活力が欠かせないからだ。

 新興市場の活性化プランの策定に向け、金融庁は夏から作業を本格化した。東京証券取引所のマザーズや大阪証券取引所のジャスダックなどの国内新興市場に上場せずに、いきなり韓国などへの上場をめざす数十社の企業やベンチャーキャピタル、機関投資家などから「国内の新興市場の、どこが不満なのかを徹底的に聞いた」(幹部)。

 その結果、新興市場に対し「上場審査の信頼性がない」「上場しようとする企業へのサポート態勢が足りない」「資料の虚偽記載も目立ち、安心して投資できない」との問題点が出され、「そもそも新興市場の位置付けがあいまいだ」という意見まで出た。

 最近の新興市場では、有価証券報告書などの虚偽記載が相次ぎ、信頼性が失われた。そこで新規の上場審査では、各取引所や主幹事証券会社、監査法人が情報交換で連携できる枠組みを新たにつくる。

 本来、新興市場からは「未来の大企業」の誕生も期待されるが、「成長が見込めない企業も多い」(金融庁幹部)のが現実。そこで、成長性の乏しい企業については一定の基準を設けて市場から退出させる案も検討する。

 一方で、成長が期待される上場前の企業には手厚い支援態勢を準備する。ベンチャーキャピタルが投資している企業など、有望株の新興企業をピックアップして「優良企業リスト」を作成、公表する。国内の有望企業が海外市場に逃げず、将来的に国内の新興市場に上場してもらえるようリストにのせた企業を官民でバックアップできるような態勢を整える。

 ある金融庁幹部は「日本のベンチャー企業の、国内へのつなぎとめは緊急の課題だ。新興市場を元気づけるための議論は長年繰り返してきたが今回ばかりは本気だ」。

 ■アクションプランの行方を占う新ジャスダック

 東京ですら力を失いつつある金融界の現実を前に、大阪証券取引所は埋没するのを避けようと必死だ。10月にアジア最大規模の新興市場である新ジャスダックを発足させたのは危機感の裏返しでもあり、成長戦略を先取りした面もある。

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