2010年12月10日
▽この記事は2010年12月9日の朝日新聞夕刊に掲載された原稿に大幅に加筆したものです。
▽関連記事: ついにペイオフ現実に、緊迫の日本振興銀行
▽関連記事: 日本振興銀行破綻 銀行の債務をすべて保護する時代の終焉
▽関連記事: 振興銀転落の軌跡 開業6年で破綻 金融行政の課題は?
▽関連記事: 《一問一答詳録》日本振興銀行新社長に就任した作家・江上剛氏が記者会見
▽関連記事: 振興銀が敗訴 SFCG債権二重譲渡問題 東京地裁《判決ほぼ全文も》
▽関連記事: 振興銀監視 体制ひ弱 金融庁検査3度
木村元会長は冒頭、深々と頭を下げて陳謝。同銀行の破綻について、木村元会長は「中小企業を保護するという理念は正しいと思う。しかし、私の力不足で失敗した」と述べ、再び頭を下げた。
外部の調査委員会が「不適切」と指摘した親密な取引先でつくるネットワークをめぐる融資について、木村元会長は「違法性のある取引があったとは認識していない」と述べた。
起訴状によると、木村元会長や元社長西野達也被告(55)らは、金融庁の立ち入り検査直前の2009年6月と検査中の同年8月、振興銀のサーバーに接続して計723件の業務メールを削除するなどしたとされる。
木村被告は7月に警視庁に同法違反容疑で逮捕され、勾留されていた。保釈保証金1千万円を納付し、8日に保釈されていた。
記者会見での主なやりとりの概略は次の通り。
木村元会長: このたびは日本振興銀行の預金者、取引先、株主、司法当局など多方面の多くの方にご迷惑をおかけしたことをお詫びします。本当に申し訳ありませんでした。
なにぶん半年近く、情報から隔絶されていたので、どこまで十分に答えられるかわかりませんが、質問をお受けします。
――起訴内容について、どのような主張をするつもりか?
弘中弁護士: その点は公判前整理手続きをしていて、弁護側の主張は2回出している。大きな意味では、認める。特定の日時の検査に対し、検査忌避と評価される行為があったことは認める。検察側は細かい日時などを伴う主張を出していて、これには自分の記憶と違うところもあり、細かな点については認められないところはある
――「認める」というのは09年6月と8月のメール削除、虚偽答弁したという3つの点、いずれも共謀があったのか?
弘中弁護士: 共謀の程度もあるが、こちらの意思に反してやったこと、こちらが「やるな」と言ったのにやったということはない、つまり木村の意思に反していないことは認められるが、どの程度の意思疎通があったのか細かい点では争いがあります。
――木村さんは、昨晩はどのように過ごした?
木村元会長: 何も準備ができず、私の親しい方々にいろいろと食べものを用意していただいたりしました。着るものなどを用意してもらいました。
弘中弁護士: 都内のホテルに泊まった。
――振興銀行が破綻し、預金者保護のあり方の枠組みも決まりつつある。預金者、取引先へひとこと。
――認否について。検査妨害行為は木村氏自らが指示したという立場でいいのか?
木村元会長: 先ほど弘中弁護士から説明いただいたが、現在、その争点を煮詰める作業をしている最中だと理解している。その中で、どういう形でご指摘のような点について整理をしていくのか、裁判の中で明らかにしていきたいと思う。
――当初、否認していたが、変わったということ?
木村元会長: 取り調べの刑事さんにも申し上げたが、思い込みとか、思い違いをなるべく排した上で裁判に臨みたいということで、弁護士の先生たちのご助言もいただいた上で、公判前整理手続きを念頭において、基本的に調書にはサインをしなかったということです。
――今後、金融業とどうかかわっていきたいか?
木村元会長: まずは裁判に専念するということ。結果として、経営者として失敗したということなので、金融という世界からは一歩も二歩も距離をおいた上で自分が何をなすべきかということを考えていきたいと思います。正直申し上げて、現時点では、きのう保釈されたばかりで何も考えがまとまっていません。申し訳ありません。
――検査忌避については認める方針ということだが、動機はどう主張する?
弘中弁護士: 非常に微妙で難しいが、まず客観的事実として……、メールが問題になっているが、メールはサーバーの中にすべてあった、そこにあったメールには一切手をつけていないし、そのような指示はなかった。それとは別に、検査官のところに調べるのに便利なように、その一部を抽出してコピーしたものを持ってきてくれと言われている。その時に、作業にあたったメンバーの何人かが、それぞれの判断によって、いくつかのメールを落としたものを提出したということ。そういうことにも、もうすこし抽象的でして、詳しい方法についての認識はなかったので、検査に対して何も考えずにすべて出すということではなく、十分に気をつけてやれというたぐいのことがあって、それが行員どうしの意思疎通の問題があり、それは確かに検査忌避であるし、行員がやったことは木村の一定の指示や姿勢を忖度してやったわけで、そういう意味では、検査忌避があったわけで、その隙があったことは認める。が、どこまで削除を指示したかについては争う、ということです。
――「十分に気をつけてやれ」というのは従前から指示していたということ?
弘中弁護士: 検査の時の対応として、何も整理せずに検査に不必要か必要かも考えずに出すのではなくて、必要なものを変に誤解されないように出そう、とかいろんな出し方があると思うが、それは多少は、それまでの金融庁での検査などを踏まえて堅く対応した、と。さらにメンバーは、木村さんの言動なり姿勢が無関係だったわけではなく、大きな方向性の中で行われた、と。なので基本的には責任があるということです。
――公判前整理手続きの見通しを。保釈条件は?
弘中弁護士: 保釈条件は、事件関係者、証人として予定されている西野氏などと接触しないということ。公判前整理手続きは2回やりまして年内にあと1回。検察の主張が出て、証拠開示も相当程度出ているが、本件はメールが問題になっているが証拠物が膨大。ギガの上の「テラ」という単位である。HDが何台いるんだ、という話。手帳など物の関係もある。閲覧方法について技術的な打ち合わせをしている。弁護側は2回にわたり、予定主張事実を出していて、検査忌避については、かなりの部分は認めるということで出している。この点とこの点は争う、と出している。検察官の予定主張事実については、特に求釈明をする点はないし、証拠開示はあるだろうけど、あと1、2回ですむんじゃないかと思う。ひとつは年末に入っているし、1月には終わるのでは。年度内に初公判があるのではないかと思う。
――認否について。木村さんの指示の認識は?
木村元会長: 私自身は「メールの内容を確認しておくように」と指示したことは覚えている。作業をする準備ができたことを聞いて、「浅草橋でやってきたらどうか」ということも言ったこともあります。
――日本振興銀行が破綻したが、中小企業を抱えた新銀行の理念は正しかった?
木村元会長: 私は、理念は正しいと今でも思っている。お客様は確実にいらっしゃると思っている。正確な数字は手元にありませんが、取引先は5万社近くあったと思う。その内訳の少なからぬ部分は、買い取り債権によるものということはあるが、日本振興銀行自身がプロパーで融資したところも2~3万社ある。それは普通の地銀では、正確な数字ではないかもしれないが、第一地銀で5千から1万ではないかと思う。それと比べても数は確実にいらっしゃったと信じている。私が力不足だった。ぜひ、もっと力のある方がこのマーケットをやっていただきたいな、と私が言う権利も立場にもないが、お客様がいらっしゃるのは事実だし、私が退任する3カ月前から日本振興銀行でも問題視していたヤミ金の問題があります。悲しいかな、日本振興銀のお客様の中でもヤミ金に手を出してしまったということがあった。ヤミ金の場合は
有料会員の方はログインページに進み、朝日新聞デジタルのIDとパスワードでログインしてください
一部の記事は有料会員以外の方もログインせずに全文を閲覧できます。
ご利用方法はアーカイブトップでご確認ください
朝日新聞デジタルの言論サイトRe:Ron(リロン)もご覧ください