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1-2) 米上院の暴露が朝刊に突っ込まれる

奥山 俊宏

 米国の大手航空機メーカーから総理大臣・田中角栄ら日本の政治家に裏金が渡ったとされるロッキード事件は1976年に明るみに出た。この連載『秘密解除・ロッキード事件』では新たな資料をもとに新たな視点からこの事件を見直していく。第1部では、疑惑が発覚した当時に自民党の幹事長を務め、のちに首相になった中曽根康弘のメッセージとして米政府ホワイトハウスに届いたある言葉に焦点をあてる。その第2回。

  ▽この記事は岩波書店の月刊誌『世界』2011年1月号に掲載された原稿に加筆したものです。

  ▽筆者:奥山俊宏

  ▽敬称は略します。

 

 日本国内でロッキード事件が火を噴いたのは1976年2月5日、木曜日の未明のことだ。

 朝日新聞朝刊にアメリカ総局発の記事が突っ込まれた。

1976年2月5日の朝日新聞2面に掲載された第一報拡大1976年2月5日の朝日新聞2面に掲載されたロッキード事件の第一報
 「米上院の多国籍企業小委員会(チャーチ委員長、民主党)は4日の公聴会で米ロッキード航空会社が多額の違法な政治献金を日本、イタリア、トルコ、フランスなどに行っていたことを公表した」

 つけられた見出しは「ロッキード社 丸紅・児玉氏へ資金」。1面ではなく、2面の腹にその記事は掲載された。

 中曽根との関係を一部に知られていた右翼のフィクサー、児玉誉士夫の名前にその記事は次のように触れていた。

 「同小委員会で明らかにされたリストによると、数年前から1975年末までに708万5千ドル(約21億円)が日本の右翼政治家、児玉誉士夫氏に贈られている。同委員会では、この金がどのように使われたのかについては明らかにしていない」

 その日の夕刊から、各紙も参戦して、続報が大展開された。その見出しの数々が暴露のマグニチュードをよく物語っている。

 「ロッキード社献金問題 対日工作費は30億円 政財界に衝撃 国会論戦の焦点に 社党あす追及 特別委設けて米に調査団も 米上院委 領収証のコピー公表 児玉氏に21億円 政府当局者にも?」

 この日、「ロッキードの支払いに関する東京での報道」と題する公電が、東京にある米国の駐日大使館から米ワシントンDCの国務省にあてて送られた注3

 「朝刊で大きく報じられるにはワシントン特派員電の東京への到着が遅すぎたが、夕刊では一面トップの見出しとなっており、ラジオやテレビのニュース番組でも

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筆者

奥山 俊宏

奥山 俊宏(おくやま・としひろ) 

 1966年、岡山県生まれ。1989年、東京大学工学部卒、朝日新聞入社。水戸支局、福島支局、東京社会部、大阪社会部、特別報道部などで記者。2013年から朝日新聞編集委員。2022年から上智大学教授(文学部新聞学科)。『法と経済のジャーナル Asahi Judiciary』の編集も担当。近刊の著書に『内部告発のケーススタディから読み解く組織の現実 改正公益通報者保護法で何が変わるのか』(朝日新聞出版、2022年4月)。
 著書『秘密解除 ロッキード事件  田中角栄はなぜアメリカに嫌われたのか』(岩波書店、2016年7月)で第21回司馬遼太郎賞(2017年度)を受賞。同書に加え、福島第一原発事故やパナマ文書の報道も含め、日本記者クラブ賞(2018年度)を受賞。 「後世に引き継ぐべき著名・重要な訴訟記録が多数廃棄されていた実態とその是正の必要性を明らかにした一連の報道」でPEPジャーナリズム大賞2021特別賞を受賞。
 そのほかの著書として『パラダイス文書 連鎖する内部告発、パナマ文書を経て「調査報道」がいま暴く』(朝日新聞出版、2017年11月)、『ルポ 東京電力 原発危機1カ月』(朝日新書、2011年6月)、『内部告発の力 公益通報者保護法は何を守るのか』(現代人文社、2004年4月)がある。共著に『バブル経済事件の深層』(岩波新書、2019年4月)、『現代アメリカ政治とメディア』(東洋経済新報社、2019年4月)、 『検証 東電テレビ会議』(朝日新聞出版、2012年12月)、『ルポ 内部告発 なぜ組織は間違うのか』(同、2008年9月)、『偽装請負』(朝日新書、2007年5月)など。
 ツイッターはhttps://twitter.com/okuyamatoshi
 ご連絡はokuyamatoshihiro@gmail.com または okuyama-t@protonmail.comに。メールの内容を暗号化する場合はPGPで。パブリックキーのIDは7D2BAD43550EAD96

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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