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1-3) 発覚翌日、米国務省日本部長と中曽根幹事長が接触

奥山 俊宏

 米国の大手航空機メーカーから総理大臣・田中角栄ら日本の政治家に裏金が渡ったとされるロッキード事件は1976年に明るみに出た。この連載『秘密解除・ロッキード事件』では新たな資料をもとに新たな視点からこの事件を見直していく。第1部では、疑惑が発覚した当時に自民党の幹事長を務め、のちに首相になった中曽根康弘のメッセージとして米政府ホワイトハウスに届いたある言葉に焦点をあてる。その第3回。

  ▽筆者:奥山俊宏

  ▽敬称は略します。

  ▽この記事は岩波書店の月刊誌『世界』2011年1月号に掲載された原稿に加筆したものです。

 

 1976年2月6日、金曜日、東京にいた国務省日本部長ウィリアム・シャーマンと自民党幹事長・中曽根が接触した。事前に表敬のために予定されていた接触だったが、話題は、前日に発覚したロッキードの問題になった。

 駐日大使館から国務省にその日のうち送られた公電に中曽根の発言の概要が報告されていた注4

 それによれば、中曽根がまず触れたのは、日本共産党の「スパイ査問事件」だった、とされている。共産党委員長の宮本顕治はこの事件で監禁致死や死体遺棄などの罪に問われて戦中に有罪判決を受けたが、戦後まもなく復権していた。民社党委員長・春日一幸は1月27日の衆院本会議でその経緯を取り上げて「真相を明らかにするべき」と政府に迫った。年内に衆院総選挙が予定されており、春日の共産党攻撃は自民党に有利に働くと中曽根は考えていたようだ。公電によれば、中曽根はシャーマンに「選挙の年に有益な動きだったのに、直後にロッキードの問題が持ち上がったのは不運だった」とぼやき、「ロッキードの大騒ぎは総選挙のタイミングにも影響を与える」とも述べた、とされている。

 報告公電によれば、中曽根は続けて、ロッキードに対する米国内の調査の影響が日本に波及したことについて、米側への苦情と注文を次のように口にした、とされている。

 「このようなことがらについて国内問題として調査するのはいいことかもしれないが、他国を巻き込むのは別問題であり、慎重に検討されるべきだ。米政府にはこの点を認識してほしい。この問題はたいへん慎重に扱ってほしい」

拡大1976年2月6日に駐日大使館から国務省に送られた公電のうち「春日の共産党攻撃」に触れた部分

 そして、中曽根はある「疑惑」にも言及した、とされている。

 「ロッキードに有利な取引はニクソン大統領と田中

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筆者

奥山 俊宏

奥山 俊宏(おくやま・としひろ) 

 1966年、岡山県生まれ。1989年、東京大学工学部卒、朝日新聞入社。水戸支局、福島支局、東京社会部、大阪社会部、特別報道部などで記者。2013年から朝日新聞編集委員。2022年から上智大学教授(文学部新聞学科)。『法と経済のジャーナル Asahi Judiciary』の編集も担当。近刊の著書に『内部告発のケーススタディから読み解く組織の現実 改正公益通報者保護法で何が変わるのか』(朝日新聞出版、2022年4月)。
 著書『秘密解除 ロッキード事件  田中角栄はなぜアメリカに嫌われたのか』(岩波書店、2016年7月)で第21回司馬遼太郎賞(2017年度)を受賞。同書に加え、福島第一原発事故やパナマ文書の報道も含め、日本記者クラブ賞(2018年度)を受賞。 「後世に引き継ぐべき著名・重要な訴訟記録が多数廃棄されていた実態とその是正の必要性を明らかにした一連の報道」でPEPジャーナリズム大賞2021特別賞を受賞。
 そのほかの著書として『パラダイス文書 連鎖する内部告発、パナマ文書を経て「調査報道」がいま暴く』(朝日新聞出版、2017年11月)、『ルポ 東京電力 原発危機1カ月』(朝日新書、2011年6月)、『内部告発の力 公益通報者保護法は何を守るのか』(現代人文社、2004年4月)がある。共著に『バブル経済事件の深層』(岩波新書、2019年4月)、『現代アメリカ政治とメディア』(東洋経済新報社、2019年4月)、 『検証 東電テレビ会議』(朝日新聞出版、2012年12月)、『ルポ 内部告発 なぜ組織は間違うのか』(同、2008年9月)、『偽装請負』(朝日新書、2007年5月)など。
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 ご連絡はokuyamatoshihiro@gmail.com または okuyama-t@protonmail.comに。メールの内容を暗号化する場合はPGPで。パブリックキーのIDは7D2BAD43550EAD96

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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