2010年12月15日
▽筆者:釆澤嘉高
特捜部や証券取引等監視委員会の調べによると、尾原代表は2007年10月1日と4日ごろ、西友の社外取締役だった妻から、小売業世界最大手の米ウォルマート側が西友に対してTOBを実施するという情報を入手。同月22日の公表前に、自分名義と、代表取締役をしている会社名義で、西友株計26万8千株を計約2336万円で購入したとされる。株はTOB公表後に市場で売却し、計約1300万円の利益を得ていた。
調べによれば、夫婦は同居しており、取引の原資には2人が事実上共有する財産が充てられていた。妻は特捜部や監視委に対し一貫して取引への関与を否定。最終的に、妻については「情報を夫に伝えた」という部分が認定された。情報を伝えただけでは同法違反に当たらないため、夫のみが立件された。
西友は02年にウォルマートとの業務提携で合意。05年、第三者割当増資を通じて同社の連結子会社となった。07年のTOBはウォルマートが西友を完全子会社化するためのもので、西友はその後東証1部で上場廃止となった。
■TOB情報利用の株不正に抜け道、法改正求める声も
株式公開買い付け(TOB)をめぐるインサイダー取引は、金融商品取引法上の問題で、通常のインサイダー取引より、立件へのハードルが高く、法的な手間と工夫が必要とされる。それらが不可能である場合も想定され、不正の抜け道ができるおそれもある。証券市場関係者の間では法改正を求める声もあがり始めた。
インサイダー取引の典型的なケースは、ある会社が株式発行や業績修正をする際、その会社役員・社員ら「会社関係者」が、情報公表前に株を売買してしまう事案だ。この会社役員らから情報を得た家族も「第一次情報受領者」とされており、株取引を禁止されている。
ところが、TOBの場合は、TOBをされる側の会社役員の家族が株取引をしても違法にならないケースがあり得る。TOBする側では、その会社役員らが「公開買付者等関係者」となり家族も取引が禁止だが、TOBされる側の会社役員らは「関係者」にあたらず、「第一次情報受領者」とされ、家族は株取引が禁止されない「第二次情報受領者」にあたるものとされてしまうからだ。今回の西友のケースでも
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