2010年12月17日
▽この記事は2010年12月17日の朝日新聞朝刊2面に掲載されたものです。
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■後任の笠間氏は久しぶりの「現場派」
「検察の将来を考えた。信頼を取り戻すには、どうすればいいのか。何が必要なのかを考えた末の結論だ」
大林氏は最近、辞意を固めた理由を周辺にこう説明したという。この周辺関係者をはじめ法務・検察の幹部たちは「政治の圧力はなく、本人が決めたこと」と強調した。
不祥事を起こした大阪地検特捜部を抱える関西のある検察幹部は、「遅かれ早かれ、検事総長が責任を取らないと、収まりがつかない状況だった」。検察批判が渦巻く中で、トップ交代以外に鎮める方法はないとの考えを示した。
2002年の大阪高検公安部長による詐欺・汚職事件の際に、当時の原田明夫・検事総長が戒告処分を受けた例はある。しかし、不祥事で引責辞職までするのは、戦後初めて。過去にない検察の危機感の表れとも言える。
国会や報道で辞任論が噴き出ても、郵便不正事件の捜査当時は東京高検検事長で、報告を受ける立場になかった大林氏は、「私に何か責任があるのか」と、周辺には強気の姿勢を見せていた。
普段はほとんど公の場に姿を現さない大林氏が、記者会見を開いたのは、大阪地検の前特捜部長らが犯人隠避罪で起訴された10月21日。この段階では、辞職の意思はないと印象づけた。記者から総長の責任論について質問が相次ぐと、「改革策を講じ、検察職員と全力で取り組むのが私の果たすべき責任」「検証や検察の思い切った改革は、相当の決意を持ってやらないといけない」と繰り返した。
検察内部の検証を受けて、年明けから「検察の在り方検討会議」で外部有識者による議論が本格化する。少なくとも、検討会議が一定の結論を出す来年3月までは、検事総長にとどまるとの見方があった。そのムードの中で、定年の65歳まで1年6カ月を残した辞職が明るみに出たため、法務・検察に衝撃が広がった。「郵便不正事件の監督責任、というなら説明がつくがそうではない。なぜ辞めるのかはっきりしない」「検察改革を見届けるまでは、辞める必要はない」。辞職を疑問視する意見も多く聞かれた。
一方で、大林氏は急に辞意を固めたのではないとの見方もある。責任を取らなければ収まりがつかないとの危機感が募る中、内部検証結果を年内に発表すると決めた時点から、このタイミングでの総長交代というシナリオが
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