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JR西前社長「自問自答、でも、危険性に気づけず」

 運転士1人を含め、107人が死亡した惨事の責任の所在は明らかになるのか。JR宝塚線(福知山線)脱線事故で、初の刑事裁判が神戸地裁で始まった。おわびの言葉を語りながらも罪を否定するJR西日本の山崎正夫前社長(67)。遺族、負傷者の悲しみや怒りは今も消えず、約40人が傍聴してその姿を見つめた。

  ▽この記事は2010年12月21日の朝日新聞夕刊(大阪)に掲載されたものです。

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 ■山崎前社長「何としても潔白を」

 山崎前社長は午前10時に法廷に姿を現し、傍聴席に一礼して入廷した。起訴状の朗読時は弁護人の前の長いすに座り、口を結んで聴き入った。106人が死亡した場面になると、大きくつばをのみ込んだ。時折、大きく肩で息を吸い、眉をひそめた。

弁護士とともに神戸地裁に入る山崎正夫JR西日本前社長(手前)=21日午前9時29分、神戸市中央区、森井英二郎撮影弁護士とともに神戸地裁に入る山崎正夫JR西日本前社長(手前)=21日午前9時29分、神戸市中央区、森井英二郎撮影
 岡田信裁判長から「間違いはありますか」と意見を問われると、山崎前社長ははっきりした口調で「私には異論がございます」と語った。スーツの右ポケットから紙を取り出すと、傍聴席に向き返って深く一礼し、続いて検察官側にも頭を下げて約10分間かけて読み上げた。

 「106名もの尊い命を奪い、多くのお客様に大変なけがを負わせてしまいました。いかに無念だったか。ただただ深くおわび申し上げるほかありません」と述べた。しかし、「あえてATS(自動列車停止装置)を設置しなかったとの指摘については、非常なるショックを覚えている。何としても潔白を明らかにしたい。『努力なくして安全なし』をモットーに幅広く安全推進の取り組みをしてきた」と訴えた。

 無罪を主張した山崎前社長は嘱託社員として、JR西日本本社ビルの一室に毎朝出勤している。事務机と応接セット、裁判関係の資料が収められた本棚があるだけの1人だけの空間。弁護士からの問い合わせの電話を受けたり、裁判で使う資料をまとめたりして過ごしている。

 一方、事故当時の安全対策の責任者として、ほかの時間は、事故犠牲者の墓参りや遺族宅の訪問にあてている。延べ100人以上の遺族に会い、おわびを重ねてきた。月命日には必ず事故現場を訪れ、犠牲者を追悼している。

 2009年7月に在宅起訴されて以降、健康状態がすぐれないという。法廷に立つことを考えるとなかなか寝付けず、睡眠薬が手放せない。本社の医務室で、定期的にカウンセリングも受けている。

 ■山崎前社長意見陳述要旨

 JR宝塚線脱線事故の初公判で、山崎正夫被告(67)の意見陳述の要旨は以下の通り

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