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山梨県民信組の融資で旧経営陣に賠償命令 前理事長らに計3億円 《判決全文》

 墓地開発をめぐる不正融資で損害を受けたとして、山梨県民信用組合(本店・甲府市)が小泉正仁前理事長(70)ら前代表理事2人に賠償を求めた訴訟の判決が11月9日、甲府地裁であった。林正宏裁判長は「注意義務を怠り、組合に損害を与えた」と述べて原告側の主張を全面的に認め、請求通り3億円の支払いを命じた。

  ▽筆者:床並浩一、菊地雅敏

  ▽この記事は2010年11月10日の朝日新聞山梨版に掲載された原稿に加筆したものです。

  ▽関連資料: 山梨県民信用組合の元理事長らの賠償責任を認めた2010年11月9日の甲府地裁判決の全文

 

 訴えられたのは、小泉氏と三科長親前常務理事(65)。関東財務局から業務改善命令を受けた県民信組の新経営陣が、第三者委員会の見解を踏まえ、昨年3月に提訴に踏み切っていた。

山梨県民信用組合本店=甲府市相生1丁目山梨県民信用組合本店=甲府市相生1丁目
 判決によると、甲府市の不動産会社が横浜市内で墓地開発を計画。2004年1月、同信組の前身で、小泉、三科両氏がいた旧甲府中央信用組合に構想の概要を伝え、13億2200万円の融資を求めた。これを受け、同3月に、前月の合併で発足した県民信組が7億6千万円を融資した。

 東京都内の不動産会社が飼料会社など地元地権者から用地を取得後、融資を受けた甲府の会社が譲り受け、造成工事に着手。墓地の売却代金で05年2月に全額を一括で返す計画だったが、用地取得が進まず、支払期限を過ぎても元金の返済はなかった。

 林裁判長は判決で、県民信組の当時の審査体制について「統一的な審査体制が確立されていなかった」と指摘。甲府の会社が1億円の債務超過で「破綻(はたん)懸念先」として信用に重大な問題があり、「確実な担保をとるなど、相当な措置が講じられているか確認すべきだった」と結論づけた。

 判決を受けて県民信組側は、「過去にけじめをつけ、地域社会の発展に必要不可欠な信組として取り組む」と話した。

 一方、 小泉氏と三科氏は11月22日、判決を不服として、東京高裁に控訴した。小泉前理事長の代理人は「控訴理由に関しては、(東京高裁に提出する)準備書面などで明らかにしていく」とコメントした。

 ●合併直後から不祥事発覚相次ぐ

 山梨県民信用組合は、甲府中央、やまなみ、美駒、谷村の4信組が2004年に合併して発足。それ以後、不祥事の発覚が相次いだ。

 06年10月には元職員2人が顧客数十人分の預金などから計約1億6千万円を着服していた疑いが判明。関東財務局が、監査機能の強化などを求める業務改善命令を出した。08年6月に、同財務局が再び業務改善命令を出す。不正融資や職員の不祥事の報告を怠たるなど経営管理や内部管理態勢に問題があるとの判断からだ。

 同年6月に小泉前理事長や三科前常務理事ら旧経営陣が、経営悪化を招いた責任を取って辞任。理事長の後任に整理回収機構(RCC)出身の坂井俊次氏が就任した。09年に450億円の公的資金が注入され、資本増強が図られた。

 ●信頼回復へ新経営陣懸命

 新経営陣にRCC出身の坂井氏のほか、上部団体の全国信用協同組合連合会(全信組連)出身者を迎え、信頼回復に取り組んできた。

 旧経営陣を相手取った今回の民事訴訟もその一環だ。問題をさらけ出すことで預金流出のリスクを伴うが、すべては「過去と決別するため」と踏み切った。墓地開発資金を融資した甲府市の不動産会社を暴力団の関係先と認め、反社会勢力と一切の取引を解消する基本方針を公表。これを受けて、県内の他の金融機関も同様の方針を打ち出すこととなった。

 450億円の公的資金注入で財務内容が改善されつつある。2011年3月末までに職員500人、有人店舗40店の態勢に縮小する経営強化計画も順調に進む。一方、成長産業として期待できる農業向け融資を増やすため、長野県川上村の出張所を支店に格上げさせるなど、攻めの態勢も整えつつある。

 反面、内部調査を強化したことにより、

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