2010年12月28日
▽筆者:小松隆次郎
▽写真:安冨良弘
▽この記事は2010年12月28日の朝日新聞朝刊2面に掲載された原稿に大幅に加筆したものです。
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検事生活37年の間に法務官僚の経験はなく、31年を捜査現場の地検で過ごした。一線検事の時期、旧日本軍を研究した「失敗の本質」という本に影響を受けた。「勇ましい意見が正論で、消極論は意気地なしとされる風潮はおかしい」。見立てと証拠が合わない時、立件を急ぐ上司にも「引くべきだ」と進言した。「諦めが良すぎる」と嫌みを言われた。
東京地検特捜部長を務めた1999~2001年、政界捜査で村上正邦・元労相ら国会議員経験者4人を次々に逮捕、起訴した。その目に、いまの特捜検察は「暴走している」と映る。「どこに欠陥があるか承知している」とも語った。
リクルート事件でかつて取り調べを受けた元被告は「私の言い分をよく聞き、何度でも調書を書き直してくれた」と振り返る。心がけてきたのは「自分の価値観を押しつけないこと」だったという。
周囲をなごませるのが得意だ。元上司は「時に冗談を交えて彼が話すと、緊張した場が、すっとほどけた」。声楽をたしなむ妻の独唱会を主催し、自ら軽妙な司会で場を盛り上げたこともある。
「捨て石になってもいい」。硬軟併せ持つベテランが、検事生活の「延長戦」に臨む。
◇
27日夕方に開かれた記者会見の冒頭、笠間氏は紙を見ることなく、次のように発言した。
大林総長が退任されたことについて触れる。大林総長が突然に退任されたことは、大阪地検特捜部の捜査検事が証拠の隠滅行為をしたという(事件の)発生により、検察の改革の必要性、重要性が非常に高まったと(いうこと)。前総長が退任することで、全検察職員に対して意識の覚醒を促したと思っている。この決断については大変重く受け止め、検察の再建に邁進しなくてはならない。小津次長、全職員と一丸となって頑張っていく。
大阪の検事による証拠隠滅事件など一連の事態に関し、最高検は12月24日に原因の究明、再発防止策を打ち出した。一方で、法務省の方では法務大臣の下に置かれた在り方検討会議において、検察の在り方について議論をいただいている。最高検の再発防止策を具体化し、早急に実施に移す。検察の在り方検討会議には出来る協力をどんどんしていく。再発防止策をやっていく、在り方検討会議の議論に協力することが私に課せられた使命と思っている。
一方で不祥事を起こしておいて口幅ったいが、検察は従前から厳正中立、不偏不党、法と証拠にもとづいて科刑をやってきた。このことは非常に重要で、日々の事件に関して地道にやっていく。検察の信頼回復にとって重要。全国職員に対してはそういうところをきっちりとやるように指導する。もう一つ、裁判員裁判はいよいよ本格的な運用段階にはいってきた。裁判員の皆さんは真摯に審理に加わっていただき、敬意を表したい。裁判員裁判の円滑運用に引き続き努力してきたい。検察の国民からの信頼回復に全力を注ぎたい。そのことに努力したい。支援、協力をたまわりたい。
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