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防衛省職員があたご航海長聴取メモを廃棄 情報公開請求受けた直後に 「個人的な走り書きだから」

奥山 俊宏

 2008年2月に房総半島沖で海上自衛隊のイージス艦「あたご」と漁船が衝突した事故で、防衛相があたごの航海長から事情聴取した際のメモが、朝日新聞記者の情報公開請求を受けた直後に防衛省職員によって廃棄されていたことが分かった。職員は、情報公開請求があったことは分かっていたものの、「個人的な走り書きであり、『行政文書』にはあたらない」と考えて廃棄した、と同省に説明しているという。防衛省は昨年11月、メモが情報公開法の対象となる「行政文書」にあたることを認めた上で、「保存期間満了により廃棄しており不存在」と記者に回答していた。専門家は「廃棄は情報公開法の趣旨に反する」と批判している。

  ▽筆者:奥山俊宏

  ▽この記事は2011年1月8日の朝日新聞夕刊に掲載された原稿に加筆したものです。

  ▽関連資料:イージス艦「あたご」航海長聴取メモの不開示決定(存否応答拒否)を取り消した防衛大臣の決定の理由の全文(PDFファイル)

  ▽関連資料: 海上自衛隊護衛艦「あたご」航海長聴取の記録の存否応答拒否に関する記者の意見書

 

 あたごの航海長は衝突事故が発生した2月19日の午前中に、海上幕僚監部の指示を受け、ヘリコプターで東京・市谷の防衛省に移動。正午から大臣室で石破茂・防衛相らの事情聴取を受けた。その際、同省運用企画局の職員がメモを取っていた。これらは、刑事事件として事案解明の捜査にあたる海上保安部の了解を得ず、しかも、行方不明者捜索が続く中で行われていたため、のちに国会などで問題となった。同月28日の記者会見で防衛事務次官は、事情聴取の際に運用企画局の職員がメモを記録したことを明らかにしていた。

 情報公開法に基づく、防衛相へのこのメモの開示請求は3月4日付で受け付けられた。しかし、同省大臣官房の情報公開室の説明によれば、同月下旬から4月上旬までの間に、メモを作成した運用企画局の職員当人がこのメモを廃棄したという。同省はそのことを知らせないまま、5月7日、「対象文書の存在の有無を明らかにすると捜査に支障を及ぼすおそれがある」という理由で文書不開示の決定(存否応答拒否)をした。

 この決定に異議を

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筆者

奥山 俊宏

奥山 俊宏(おくやま・としひろ) 

 1966年、岡山県生まれ。1989年、東京大学工学部卒、朝日新聞入社。水戸支局、福島支局、東京社会部、大阪社会部、特別報道部などで記者。2013年から朝日新聞編集委員。2022年から上智大学教授(文学部新聞学科)。2023年から「Atta!」編集人。

 著書『秘密解除 ロッキード事件  田中角栄はなぜアメリカに嫌われたのか』(岩波書店、2016年7月)で第21回司馬遼太郎賞(2017年度)を受賞。同書に加え、福島第一原発事故やパナマ文書の報道も含め、日本記者クラブ賞(2018年度)を受賞。 「後世に引き継ぐべき著名・重要な訴訟記録が多数廃棄されていた実態とその是正の必要性を明らかにした一連の報道」でPEPジャーナリズム大賞2021特別賞を受賞。

 そのほかの著書として『内部告発のケーススタディから読み解く組織の現実 改正公益通報者保護法で何が変わるのか』(朝日新聞出版、2022年4月)、『パラダイス文書 連鎖する内部告発、パナマ文書を経て「調査報道」がいま暴く』(朝日新聞出版、2017年11月)、『ルポ 東京電力 原発危機1カ月』(朝日新書、2011年6月)、『内部告発の力 公益通報者保護法は何を守るのか』(現代人文社、2004年4月)がある。共著に『バブル経済事件の深層』(岩波新書、2019年4月)、『現代アメリカ政治とメディア』(東洋経済新報社、2019年4月)、 『検証 東電テレビ会議』(朝日新聞出版、2012年12月)、『ルポ 内部告発 なぜ組織は間違うのか』(同、2008年9月)、『偽装請負』(朝日新書、2007年5月)など。

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