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自社株を対価とする他社買収の規制緩和、産業活力再生法改正への期待

太田 洋

 自社株を対価として他の会社を買収するには現状、さまざまな障害がある。自社株を用いた他社株の公開買い付け(TOB)も制度上は不可能ではないが、日本国内では現実に行われたことは一度もないという。そこで、この障害を減らし、企業の合併と買収(M&A)を盛んにするための法改正が検討されており、この春にも国会に提案される見通しとなっているという。西村あさひ法律事務所の太田洋弁護士がその意義を解説した。

自社株対価TOBに関する
規制緩和等とM&Aの活性化
~産業活力再生法改正への期待~

 

西村あさひ法律事務所
弁護士・NY州弁護士 太田 洋

太田洋弁護士太田 洋(おおた・よう)
 1991年、東京大学法学部卒業、1993年に弁護士登録(司法修習45期)。2000年、ハーバード・ロースクール修了(LL.M.)、2001年に米国NY州弁護士登録。2001年~2002年に法務省民事局付(参事官室商法改正担当)、2007年に経済産業省「新たな自社株式保有スキーム検討会」委員。現在、西村あさひ法律事務所パートナー、日本化薬(株)社外監査役、電気興業(株)社外取締役、金融庁金融税制研究会委員。金融庁コーポレート・ガバナンス連絡会議にも参加。
 ■はじめに

 現在、1月24日にも召集される通常国会において、春ころにも法案を提出することを目指して、経済産業省が「産業活力の再生及び産業活動の革新に関する特別措置法」の一部改正法案(以下「改正産活法案」という)の取りまとめ作業を急いでいるようである。この改正産活法案では、自社株対価TOBに関する規制緩和などが盛り込まれることが検討されていると報じられており、わが国企業による海外企業の買収及び国内企業同士のM&Aの促進・活性化に大いに資するものと期待されている。そこで、以下では、上記規制緩和について、予想される内容と、それらが実現した場合に予想される効果とを概説することとしたい。

 ■自社株対価TOBの活性化の必要性

 わが国の企業が現金を対価として外国企業を含む他の企業を買収しようとする場合、i)対象会社が非上場会社であれば、その株主との相対での売買による株式取得の方法で、ii) 対象会社が上場会社であれば、現金を対価とするTOB(キャッシュTOB)の方法で、それぞれ実行することが可能である。

 一方、わが国の企業が自社の株式を対価として他の企業を買収しようとする場合、対象会社がわが国

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