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テレビ番組海外転送訴訟 録画方式も「主体は業者」 最高裁

 日本のテレビ番組を海外在住者向けに転送するサービスについて、最高裁第一小法廷(金築誠志裁判長)は20日、利用者の指示で録画して転送する方式も「業者の管理、支配下で受信した放送を機器に入力し、複製される場合、主体は業者だ」と述べ、サービスを適法と認めた二審・知財高裁判決を破棄した。

  ▽筆者:延与光貞、赤田康和

  ▽この記事は2011年1月21日の朝日新聞に掲載されたものです。

  ▽関連記事:   テレビ番組の海外転送サービス「個人の機器でも著作権法違反」 最高裁「テレビ局の権利を侵害」

  ▽関連資料:   1月20日の最高裁判決(裁判所ウェブサイトへのリンク)

 

 著作権法が許容する「私的利用」とはとらえず、業者が介在する転送ビジネスを違法とする判断だ。ただ、今回のケースでは、機器の管理状況がはっきりしていないことから、被告となった業者が著作権を侵害したかについては判断せず、審理を知財高裁に差し戻した。

 「ロクラク」の名称でサービスを展開していた「日本デジタル家電」(浜松市)に対し、NHKと東京、静岡の民放9社がサービス差し止めと損害賠償を求めていた。

 ロクラクは、業者が貸し出す親機を国内に設置し、ネット回線に接続。海外にいる利用者が子機で指示を出すと親機が録画し、自動的に子機に転送する仕組みだ。

 2009年1月の二審判決は「業者は、利用者が私的に視聴するための環境や条件を提供しているだけ」と違法性を否定したが、こうした仕組みについて第一小法廷は「業者は単に複製を容易にする環境整備にとどまらず、放送を受信して入力する枢要な行為をしている」と認定した。

 08年5月の一審・東京地裁判決は、形式的に著作権を侵害しているのが客であっても、管理・支配し、利益を得る店側の責任とする「カラオケ法理」を採用して違法性を認めた。最高裁は「カラオケ法理」そのものは採用しなかったが、著作権侵害の主体を形式的な行為者に限定しない考え方は踏襲した。

 番組転送サービスをめぐっては、18日に別の小法廷で、利用者が購入した親機を業者が預かり、録画せずにリアルタイムで子機に転送する方式についても違法とする判決が出ている。

 ■利便性の確保も重要

 《解説》番組転送サービスをめぐる二つの訴訟で、最高裁がいずれも実質的には「違法」との判断をしたのは、番組を転送・録画している主体を「業者」と捉えたからだ。

 著作権法は、個人が楽しむために著作物を私的に利用する自由を

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