2011年03月17日
外国法事務弁護士・米NY州弁護士
スティーブン・ギブンズ(Stephen Givens)
私は在日外国人の一人として、地震発生後の外国報道機関、外国投資家、在日外国人のパニック反応、不確実な情報の言い散らしを見て恥ずかしく感じる。
ニューヨーク・タイムズ等は発生日以降、連日、大々的に地震関連ニュースを1面に載せている。焦点をあてているのは、東北地方での深刻な災害や救助活動の取材よりも、東京電力・福島原子力発電所から放射能が(彼らの所在地である)東京まで来る恐れや在日外国人の感想、避難の計画などだ。記事を読むと、その多くの情報源は、現場にいる日本人ではなく、東京にいる外国人仲間だ。つまり外国の特派員は同じ在日外国人を取材して、その情報をまともなニュースとして世界に送っている。
私はフェイスブックを通じて在日外国人コミュニティーの構成とムードはよく把握できているつもりだが、在日外国人の多くは、唯一の情報源である英語のメディアを目にして海外に避難しようとしている。私のある「フレンド」はきょう、「危険」な東京から「安全」なテルアビブに戻るという。彼女の帰国のニュースを受けて彼女の「フレンド」の反応は「拍手!」「安心した!」「よかった!」。皮肉にも、避難しようとしている在日外国人の動きが報道され、パニックの悪循環が加速する。
今週の株の大暴落の主な原因も外国投資家のパニックのようだ。外国の機関投資家は日本の上場株の3割以上を保有しているが、たいていの外国のファンドマネジャーはロンドン、ニューヨークにいる英語の情報源に頼る人たちだ。彼らが遠くからファイナンシャルタイムズの地震関連ニュースを読むと、「売り」「日本撤退」に駆け込む結果となる。
在日外国人たちのフェイスブックのページを見ると、彼らの多くの「フレンド」の中に日本人が極めて少ないことが分かる。ニューヨーク・タイムズ、その他の大手外国機関の在日特派員のフェイスブックページも同じだ。数百人の「フレンド」のうち、日本人のフレンドはわずか、日本人がいるにしても欧米の大学を卒業しているような人たちで、いわゆる普通の日本人とは違う。
開国から150年以上経っても、在日外国人コミュニティーの日本への根っこがこれだけ浅く、外国人同士の「出島」にアイソレイト(孤立化)されていることを不気味に感じる。海外にいる外国人が日本に関する情報を得るためにこの在日外国人に頼っていることもおかしいし、日本にとっても好ましくない。日本人自身がもっと効果的に日本の情報を外に伝える必要性を強く感じる。
▼ギブンズ氏の記事
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Stephen Givens(スティーブン・ギブンズ)
外国法事務弁護士、米ニューヨーク州弁護士。ギ
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