2011年03月30日
米国で急増するM&A差止めを求める訴え
西村あさひ法律事務所弁護士
Shearman & Sterling法律事務所客員弁護士
宇野 伸太郎
■はじめに
米国では、株主によるM&Aの差止めを求める訴えが急増している。ある統計によると、M&A差止めの訴えの件数は、連邦裁判所と州裁判所の合計で、2003年は18件、2006年は107件であったところ、2010年には335件へと増加している。また別の統計によると、証券取引法違反を理由とする連邦裁判所におけるM&A差止めの訴えは、2009年の7件から2010年には40件と急増している。
2011年に入ってもその勢いは衰えず、例えば、先日公表されたNYSEユーロネクストとドイツ証券取引所の合併に対しても、NYSEユーロネクストの株主により、合併差止めを求めるクラスアクションが提起されている。
このようなM&A差止めを求める訴えとはどのようなものであろうか。なぜ急増しているのであろうか。日本企業もターゲットになり得るのであろうか。
■M&A差止めを求める訴えとは
M&A差止めを求める訴えは、多くの場合、買収の対象となる会社や合併において合併比率が低い方の会社(以下、便宜上、「対象会社」と総称し、買収を行う会社及び合併比率が高い方の会社を「買収会社」という)の株主により提起される。差止めの根拠として、対象会社の取締役ら個人に株主に対する忠実義務(fiduciary duty)違反
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