□圧力容器の「健全性」
――きょうの未明の会見でお話があったんですが、圧力容器に関して、「下のほうに穴があいている可能性が高い、下のほうの穴から放射性物質を含んだ水が出ていると考えるのがふつうである」というお話がありました。
私、そういうこと申し上げたことはございません。
――副社長から伺ったのではなく、きょうの未明の会見で(原子力設備管理部の課長が言った話で)す。
いろいろな可能性が考えられるということは申し上げているかもしれませんが、それを断定的に判断したということではないと思います。
――「そう考えるのが普通である」というお話がございました。で、そういう状況で、今のところ東電さんとしては圧力容器の状態について健全性が保てているというお考えを示してこられていますが、そういう認識が正しいのか。
原子炉の中の状況について、非常に限られたデータで状態を判断してきておりまして、したがいまして、明確に申し上げるのは困難を伴う状況ですが、全体としてみると、これまでのいろいろなパラメーター(水位や圧力の計測数値)の変化を見ますと、大きな変化が起きたということはない、と思っております。原子炉の中の水が格納容器の中に出てきている可能性は考えなければなりませんが、いまおっしゃったような、ある特定の部位で破損しているということを我々として判断しているということはございません。
――原子炉を経由した水が外に流れ出ている可能性がきわめて高い状況の中で、圧力容器の健全性が保てているというお考えなんでしょうか?
「健全性」というのをどのように定義するかということになると思いますけども、原子炉圧力容器にはさまざまな配管も接続されておりますし、そこにはポンプがあったり、バルブがあったりするわけでありまして、その全体で原子炉一次系という系統を構成しております。その中のどこからか水が出ている可能性は否定できないと思いますが、圧力容器そのものの健全性について何か問題があるということを決めるような手立てはないと思います。
――この状態が「健全性が保てている」とお考えなのか?
「健全性」というものをどういうふうに定義されるかということによるわけで、一次系からさまざまなルートを通って原子炉の中の水が表に出ている可能性は否定はできませんけれども、原子炉圧力容器そのものが大きな損傷を受けているというふうに我々が判断しているというわけでは決してございません。
――それでは、副社長の「健全性」の定義はいかがですか?
一次系の中から放射性物質が表に出てきているという可能性はさまざまなルートについて考える必要がありますが、「健全性」という漠然とした概念について議論するのは今の状態ではあんまり……、出てくる放射能の量と関係はな……、明確に関係づけて原子炉の健全性を議論するということではないと思います。
――「健全性」という言葉が使われてきたわけですが、これからその言葉にこだわらないということでいいですか?
原子炉からどのくらい放射性物質が表に出てくるかというのが重要なわけでして、今後、さまざまな検証していく中で、さまざまな検討がされると思いますが、現時点でどこを通って放射性物質が格納容器の中に出てきているのか判断する材料は持ち合わせていないということでございます。
――官邸(総理大臣官邸)から「あなたの考える健全性とは何か」と問われても同じ回答ですか?
格納容器から出る放射能をいかに最小化するかということが重要なことでありまして、それに向けてさまざまな努力をしているということであります。
原子炉圧力容器が健全であったのかどうかということにつきましては、現時点では我々はそれを明確に確認する手立てはございません。これは、この事故に関して検証する中で明らかになっていくべき性格のものだと思います。
検証というのは、当然、この事故については、多くの国内の機関、海外の機関も含めて、どういうことが起きたのかということが検証されていくことだと思います。
――炉の穴の話について「私は承知していない」という話がありましたが
原子炉の底部については、明確にその場所だと決定づけて判断したことではないと申し上げたということです。
――皆さん(原子力設備管理部の課長たちは)いろいろな可能性について我々(記者)に説明してくれているので、武藤さんのほうから「変な発言がないように」とかプレッシャーがかからないように私からお願いします。
いっさいそういうプレッシャーをかけるというようなことはございませんし、起きていることについてきちんと説明するのが我々の基本的な考え方でございます。
□トレンチの高線量水の報告遅れ
――きのうの午後3時半ごろ、1~3号機のタービン建屋外のトレンチの立坑に水がたまっているということなんですが、副社長はこれについて、いつ、ご存じになったか?
きのう午後発見された水の件だと思いますが、私は本日、これについて報告を受けております。
――きょうの何時ですか?
放射線の量も含めて内容につきまして報告を受けましたのはきょうの午後になります。
――陣頭指揮をとっている立場の方が24時間たって知るというのはどういうことなんでしょうか?
事実関係については確認をしたいと思いますが、内容につきまして線量率を含めて報告を受けたのはきょうの午後です。
――感想は?
内容については、きちんとプレスするように社内で指導したということです。
――担当者にはどういう指導を?
事実関係をしっかり確認する必要があると思いますし、水をどういうふうに処理するのか、速やかに対策を講じるようにと指示をしております。
――報告が来るのが遅いと思いませんでしたか?
できるだけ迅速にいろいろな情報を共有するというのは、こうした事態をスピーディーに対処していくのに重要なことだと思いますので、ご指摘のような点を踏まえて、さらに社内でしっかりをやっていきたい。
――世間から「隠した」と思われるような恐れはないか?
まったくそういう意図はないと思っておりますが、ご指摘のようなことのないように社内でしっかり確認したいと思います。
――世間から見ると「隠蔽」と言われて仕方ないんじゃないですか?
そういう誤解を招くことがないように、情報の流れについて再度確認して徹底したいと思います。我々としては、日々、できるだけ透明性高くしたいと思っています。ただ、さまざまなことが起きますので、重要度の高いものについては、できるだけ速やかにご報告できるようにしたいと思います。
□トレンチの水をどうするか?
――これが海に流れ出てしまうとすると、たいへん心配なんですが、ここはどういう構造になっているのか、海に流れた形跡はあるのかないのか?
トレンチというのは、タービン建屋からさらに地下をずうっと通った通路になっているわけで、その通路が立ち上がって立坑になっているわけで、その立坑の中に水があると確認されたということであります。その水の深さの立坑の深さを比較しますと、水の高さのほうが低いということが確認をされております。
――今回、見つかった水なんですけど、放射線管理区域外でこれだけ高いのが観測されたのはどうでしょうか?
通常はそういうことのないところでありますので、通常の事象ではないと思っております。
――事故が起きているので、「通常の事象ではない」のは当たり前で、その程度のご認識ということなんでしょうか?
特に2号機につきましては、線量がたいへん高いので、外に出ることのないような方策を考える必要があると思っておりまして、その点について現在、検討しているところです。
――きのうの午後3時に分かったことがきょうの午後にならないと私どものところに届かない。しかも、特段の対応策が現時点でとられていない、と。情報収集が遅いと。改善の必要性はお感じになっているのでしょうか? 対応について、迅速性について、改善されていないようにお見受けするんですが、その…はどう思われているんでしょうか?
ご指摘のような点につきましては、これに限らず、さまざまなことが起きていますので、特に重要度の高いものについては、迅速に情報を共有して対処策をスピーディーに考えられるようにしたいと思います。
――遅いと思っておられるのかどうか?
経緯も含めて再度よく確認をして、しっかりと対策をとりたいと思います。
――この水に関して措置は?
できるだけ早く対処を考えたいと思います。
――きのうまでの段階ではタービン建屋の地下の高濃度の水の排水をしましょうということでした。きょうになると、外にも見つかった、と状況が変わったわけです。今後、排水作業はどういうふうに行われるんでしょうか?
きょうのトレンチの水につきましては、屋外だということもありますので、まず、これ以上、状態を悪化させないようにするということが大事だと思います。その処置につきましては、できるだけ早く考える必要があると思います。屋内につきましては、1号機はホットウェル(復水器)の中に戻すことを考えたわけです。ほかの号機につきましては、ホットウェル(復水器)の中に水がありますので、これを他のタンクに移すということで準備を進めてきておりまして、これが空けば、タービン建屋地下の水を移せるということで、今、準備を進めています。
――地下の排水作業をストップして屋外の対策をしなければならないのか?
屋外の水について処理する方策が決まれば、それについて当然、全力を挙げて対策をとっていくことになる。外の環境に対する影響を最小化するということで優先度を決めていくことになると思います。
□現場作業員の置かれた環境
――現場作業員に支給されている食事が過酷という話が出ていんですが。
現場の状況は、現場の環境から厳しい状況にあるとよく認識しているつもりです。非常にスペース的にも限られている中で、どうやって工夫をするかということについては、きょうも社内で議論したことですが、できるだけ現場で作業をしてもらう方々が困ることのないように、生活支援をしっかりサポートして、現場で少しでも働きやすい環境を作っていくことは大事だと思います。どうしても生ものは持ち込めないので、制約がありますが、できるだけ充実していきたいと思っています。
――交代要員を送ることはできないのか?
たいへんに多くの方が被災をされる中で、発電所で仕事をされている方も、厳しい環境の中で発電所で使命感をもって仕事をしていただいている。そういう中で仕事をしていただける方々には本当に深く感謝しなければならないと思っています。そういった厳しい環境の中で仕事をしていただているので、我々としても、できるだけの支援をして、環境を少しでも良くすることが重要だと思っております。新しい人を東京あるいは柏崎(新潟県にある東京電力の柏崎刈羽原子力発電所)を含めて投入をしまして、現場でもローテーションを回して、休みが取れるような、そういう作業環境、勤務環境を作っていくということで、すでに実施することといたしております。