2011年04月13日
入試にまつわる不正とその法律問題
西村あさひ法律事務所
弁護士 渋谷 卓司
■はじめに
新入学の時期である。今年は有名大学の入学試験を舞台とする、携帯電話と質問投稿サイトを用いた不正受験事案が発生し、一時はマスコミで連日報道されるなど社会的注目を集めた。ひるがえって考えると、古くは中国の科挙(官吏登用試験)の時代から、試験にまつわる不正は古今東西を問わず存在した。冒頭の事案は被疑者である受験生(少年)の逮捕にまで発展したが、大学受験に限っても、入試にまつわる不正が刑事事件に発展した例は過去にも存在する。興味深いのは、その内容の違いにより、問われる犯罪の名前も異なる点である。そこで、本稿では、大学入試の不正に絡み、過去にどのような犯罪があったかを紹介した上、今回の事案を振り返ってみたい。
■過去の事例
(1) 入試問題の事前入手
入試問題を事前に入手できれば、試験当日は用意していた解答を答案用紙に書くだけで済む。今からちょうど40年前、国立大学を含む2大学の入試問題を3年間にわたり不正に入手して、試験前に受験生(実際にはその親たちであろうが、それも含めて受験生という)に販売した事件が発覚した。
当時、それらの大学の入試問題は、内容が外に漏れないよう地元の刑務所の印刷工場で印刷されていた。本件は、その刑務所の受刑者Aらと元受刑者Bが共謀し、Aらが当該印刷された入試問題を塀の外に持ち出し、Bがこれを販売したというものである。
その際、Aらが刑務所から持ち出した方法は相当、奇抜である。(1)1年目は、Aが入試問題を破り、運動時間にボールに仕込んで塀の外に投げ出して、外で待っているBに渡し、(2)2年目は、Aが出所
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