2011年05月06日
川村元社長は2004年と05年に、いずれも小沢氏の元秘書である石川知裕被告(37)=現・衆院議員、政治資金規正法違反(虚偽記載)罪で起訴=と大久保隆規被告(49)=同罪で起訴=に対し、公共工事受注の謝礼としてそれぞれ5千万円ずつの裏金を渡したと証言した。一方、弁護側は「検事の誘導があったのでは」と繰り返し反対尋問で追及した。
検察側の質問に答えた川村元社長の証言によると、04年9月に大久保元秘書と議員会館の事務所で2人きりになった際、小沢氏の地元の「胆沢ダム」(岩手県奥州市)工事を下請け受注するための条件として、「本体工事の(元請け)ゼネコンが決まった後に5千万円、岩石採取工事のゼネコンが決まった後に5千万円を納めて頂きたい」と要求された。
その後の同年10月15日に大久保元秘書の代理として指定された石川議員に5千万円を、さらに05年4月中旬に大久保元秘書に5千万円を、それぞれ東京・赤坂のホテルで渡したという。
石川議員に渡した際には、ロビーのソファで「大久保さんにお渡しください」と言い、「極力目立たないように紙袋をスライドさせた」という。また、大久保元秘書に渡した際には「お約束の品なので、どうかお納めください」と言い、「テーブルの下で目立たぬように渡した」という。
川村元社長は小沢氏の事務所について、「力が強く、我々下請け業者は施工実績があっても反対されると参入できないと聞いていた。それを阻止するために、事務所の方々に営業活動をした」とも証言した。
営業の対象は大久保元秘書で、03年11月に事務所を初めて訪れて胆沢ダムの受注を依頼した際には、「同業者よりも(あいさつが)遅い」と怒られたという。その後、お歳暮として松阪牛と現金100万円を渡したり、東京・向島の料亭で4、5回接待したりして関係を築いたという。
これに対して、裏金授受を否定する弁護側は、「5千万円も渡すのに時刻を覚えていないのは不思議だ」「本当は石川議員と、大久保元秘書に(裏金が)渡っていないのではないか」「あなたが私的に流用していたのではないか」などと川村元社長を厳しく追及した。
東京地検特捜部が作成した元社長の供述調書の内容が変遷している点も指摘。09年7月の内偵段階で作られた元社長の調書では、裏金を渡した相手は「はっきりしない。確か石川秘書」とあいまいだったのが、石川議員らが逮捕された後の10年2月の調書では「間違いなく石川秘書に赤坂のホテルで渡した」と断定されている不自然さを強調した。
弁護側は川村元社長に「検事の誘導があったのでは」などと問いただしたが、川村元社長は「(誘導は)ない」と否定。「記憶を封印していたのであいまいな点があった。記憶がだんだんと戻ってきたということだ」と、特捜部への供述が変化した理由を説明した。
この日の法廷では、石川議員は川村元社長を終始にらみつけていた。裏金授受の際の2人の位置関係を元社長が図面に書き入れた際には、「座ってないから書きようねぇわな」と発言する場面もあった。
今後の公判でも、水谷建設関係者への尋問が続く予定だ。結審は8月で、元秘書3人への判決は秋以降になりそうだ。
■検事と元社長のやりとり
4月27日午前10時過ぎ、川村元社長が法廷に入ってくるのを、石川議員は腕組みしたまま、にらみつけた。証言によれば、川村氏は2003年(平成15年)11月から2010年1月まで水谷建設の社長を務めた。2003年の売上高は400億円前後。胆沢ダムの下請けに参入した。検事の質問に答え、川村氏は小沢事務所への「営業」の経緯を話していった。その一問一答を記者のメモから再現
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