2011年06月05日
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証拠採用されたのは、元秘書・池田光智被告=政治資金規正法違反(虚偽記載)罪で起訴=を取り調べた2人の検事が、以前に担当した別の2事件の裁判記録。2008~09年に大阪地裁で判決があった老舗ソース製造会社「イカリソース」をめぐる詐欺事件と奈良県生駒市の元市議会議長による汚職事件で、2人の検事の取り調べに問題があったとして、判決で自白調書の任意性が否定されていた。
弁護側は「これらの事件と、陸山会事件の取り調べでの検事の言動が類似している」と指摘し、池田元秘書の自白調書についても任意性がないと訴えた。
この日は、イカリソースの事件を担当した花崎政之検事=現・大阪地検=、元生駒市議会議長の事件を担当した蜂須賀三紀雄検事=現・大阪地検=がともに出廷した。
弁護側は蜂須賀検事に対して、「(元議長の事件で作成した)調書の任意性が否定された。その後の取り調べの教訓にしたか」と質問。蜂須賀検事は「同じような指摘を受けないように、(陸山会事件では)教訓にした」と答えた。
この日の証人尋問は、岩手県釜石市で被災した元秘書の大久保隆規被告が上京できずに、いったんほかの元秘書2人と公判が分離されたことから設定された。大久保元秘書らを調べた田代政弘検事=現・新潟地検=も証人として出廷した。
3人の公判は、この日で証人調べがすべて終了した。審理は被告人質問を残すだけで、7月に検察側が論告・求刑、8月に弁護側の最終弁論があり、秋に判決が言い渡される見通しだ。
証人尋問の一問一答のポイントを記者のメモから再現する。
■過去の裁判記録を証拠採用
午前10時開廷。まず池田被告を取り調べた蜂須賀、花崎の2検事の別の事件の裁判記録の証拠採用をめぐり、弁護側と検察側が応酬。
弁護人: 全国の裁判例を検索できるシステムはない。最高裁のホームページの検索機能はあるが、花崎検事と蜂須賀検事の固有名詞までは出てない。しかし、4月になって、あるジャーナリストから「任意性が問われた事件があるはずだ」との情報を得て、研修所時代の教え子の力でようやく記録が取り寄せられた。こうした事情なので、やむを得ない事情に該当する。
検察官: 任意性、信用性を争う方針を策定する時に、判決を調べることはできたはず。
弁護人: 公判前整理手続きの最終盤ではあったが、調査をする時間はなかった。
裁判官3人が合議したあと、裁判長が「採用します」。
これに対し、検察官が異義。「関連性、必要性のない証拠を採用した際は……」
裁判長: 美しくない気がしますが。弁護側ご意見は。
弁護人: 理由がない。
裁判長が異義を棄却。弁護人が採用された証拠の要旨を告知する。
弁護人: 花崎検事の被疑者調書の証拠能力が否定された。池田への取り調べと言動が類似している。無罪となり、検察側控訴もない。蜂須賀検事の被疑者調書が任意性なしとして証拠能力を否定された。取り調べ時の言動が池田への取り調べと類似している。
■田代政弘検事に対する尋問
続いて大久保被告と石川被告を取り調べた田代政弘検事の証人尋問に入る。
□弁護人と田代政弘検事のやりとり
――検察官経験は。
14年目に入る。
――捜査従事の経緯を聞きます。平成22年1月5日の大久保調書は任意性を争ってないので、それを踏まえて答えて。21年4月から特捜部勤務だが、陸山会事件の捜査にかかわったのはいつから?
平成21年7月下旬から。
――建設会社の取り調べはやった?
従事した。
――何社か聴いた?
はい。
――川村(尚・元水谷建設社長)の供述状況は知っていたか。平成21年7月以降。
川村の供述について逐一、聞かされていたわけではない。後になって聞かされたこともある。
――いわゆる1億円問題のことだが、川村供述について検討する機会はあった?
私自身はしてない。
――川村が小沢事務所を口実に金を引っ張ったという見方も出来るが、そういう検討もなかった?
私自身はわからない。
――大久保を22年1月5日に在宅調べしてる。なぜ大久保を調べることに?
主任検事から指示された。
――継続的にやれと?
1月5日の時点ではわからなかったが、私はその後も、と思っていた。
――どんな準備を。
これといって特別な準備はしてない。報道状況とか主任検事から情報もらったくらい。
――捜査資料の確認は。
捜査報告書は見ている。
――西松事件の際に作成された大久保の調書は?
調書は見せられてない。
――それで取り調べができると?
当初は、本件について、大久保がどういう弁解をするか、ということだった。
――西松事件の大久保調書は全く見てなかったと?
調書自体は見てなかったと思う。
――偽証では?
大久保の供述状況について一定程度、知らされたが、手元に調書が来たことはないと思う。
――弁解状況を確認するというのは。
今回の政治資金規正法違反について。
――いわゆる陸山会事件?
そうです。
――さらの状態で大久保に接した?
全くさらというわけではない。陸山会の収支報告書、資金の流れ。前年には石川被告を私が調べている。
――大久保を調べたのは平成22年1月5日のみ。1日だけの約束だったという理解でいいか。
それは、私は聞かされてない。
――時間は。
午前10時から17時くらい。
――調書作成している。問答調書の形になっているが、その目的は。
大久保の供述の合理性、信用性はわからなかった。時間のない中で、供述調書も作らないといけなかった。
――大久保の答えの記載について正確に?
基本的にはそう。
――なるべく言ったように。
そうだったと思います。
――思います?そうしたんじゃないの?
趣旨が不明なら確認して要約も。問いただして、まとめる。インタビューのようにそのまま反映しない。
――同一性確認のため1月5日付けの調書を示します。その内容を質問する。乙49号証として請求されているが、まず間違いない?中身は、あなたがとった調書か。
はい。
――複数点聞きます。第一点。大久保が池田から、小沢からの借り入れの返済について報告を受けたかどうかの質問に記憶は。
記憶だと、平成19年になってから返済したという報告を受けたと思う、という供述だった。
――3丁。ここにあなたの問い。「4億円の返済はどのようにしたのか」と。答えは「報告を受けたように思います」と。大久保は「思います」と表現したのか。
はい。
――断定はしてないんですね。「受けた」と。
記憶はっきりしてないが、こういう形式なので、断定してたら、そう書く。
――それに続く、報告を受けた時期、方法についての回答。きわめて不自然。報告を受けたとしたら、という前提の説明か?
「受けたと思います」ということなので、その時期をお尋ねした。
――「受けた」という前提?
大久保が報告を受けた、ということは、そういうこと。受けたように思いますと言っていたので。
――受けたと決めたわけだ、あなたは。
受けたかどうかはっきりしない、という言い方だったら「受けたとしたら」になるが……。
――この調書の中に、大久保が、りそな銀行から借り入れたのを知っていたかどうかと質問があり、回答は「当時は知らなかったが、報道で知った」と。これ、当時の供述ですね。
はい。
――深沢の土地の本登記が平成17年1月7日だったことを知っていたかどうか、の回答。「当時、私は知らなかった」と。これも大久保の供述内容?
そうです。
――最後。この調書の5丁の最後、2つの問答。この中で「小沢から4億円の借り入れ、土地代金の支払いについて、平成16年の収支報告書に記載しなかったのはなぜか」と質問している。ここで「記載しなかった」と断定した根拠は?
平成22年1月5日だから、石川から、小沢からの4億円は記載していない、という供述を得ていた。さらに、その前、池田からその4億円を平成19年に返済したが、それも収支報告書に記載していない、という供述も出ていた。この4億は記載されていない、という形で弁解してくるだろうと、それで調べをしていた。大久保被告もこの点では「記載していません」と言われていた。
――収支報告書に、「小澤一郎 4億円」の記載があったことは知ってたでしょ。
知っていました。
――だから、この断定の根拠を聞いてるんですよ。
大久保からも、その点について確認している。
――その答え、「見落としていた」と記載がある。あなたが記載した?
そうです。
――大久保が「私が提出前のチェックの段階で記載を見落としてしまったとしか説明しようがありません」と。特段作文はしてない?
してません。
――この調書は、検察が乙49号証として請求しているが、立証趣旨は「大久保が提出前に確認していた事実、逮捕前から認めていたこと」という。疑問。むしろ逆。逆の効果。この調書で大久保が確認したかどうかの問答はした?
調書には記載してない。
――なぜ?大事な大前提じゃないの。
大久保がチェックしていた、という会話をしていた前提になっていた。
――きわめて大事な問いと答え。
現在のように争点になっていれば。当時は、問答は必要ないと。
――きわめてできの悪い調書。否定すると思うが、あえて聞く。大久保はこのとき、「実際は任せていて、見ていなかった。西松事件のとき、山本検事にも言った。どっちにもとれる調書」という説明を田代検事にしたと。
そんな話、しなかったと思う。
――「実際は見ていなかった」と言ってない?
そういうことはなかったと思う。
――2つの問い答え。「チェック見落とし」。これについては、大久保は、あなたが、(大久保が)「見ていない」と言ったら困って、「これでどうだ」と提案してきたと。
そんなことはない。
――宣誓してるんですよ。何で、わかったような、わかんないような答えを。
大久保の答えですよね。
――大前提の問い答えを入れなかったのはミスじゃないか。
ミスかどうかはわからないが、今は、入れておけばよかったと思ってる。
――入っていないのは間違いないね。
調書がそうなってる。
――大久保とはこれで1回、会ったきり?
はい。
――その後、陸山会で3人逮捕。石川を担当。
はい。
――石川を調べていた当時、大久保は誰が?
宮本検事。
――池田は?
蜂須賀検事。
――あなたが石川を担当、宮本が大久保、蜂須賀が池田。3人とも東京拘置所にいた。3人の中ではそれぞれ供述状況を確認する機会は。
そういう機会はない。
――承知しないまま調べてた?
それを把握して指示を出すのが主任検事や副部長の役割。我々は勝手に情報交換しない。
――平成22年1月19日に石川被告から自白調書を録取した。
はい。
――その前に、宮本検事から大久保被告の供述状況を聞く機会があった?
宮本検事からはなかった。
――主任検事からはあった?
ちょっと記憶がはっきりしません。
――なかった可能性も?
はい。
□公判立会検察官による田代検事の証人尋問
――前回の証人尋問で弁護人から、石川被告を最初に調べる前の報道内容について質問を受けた。弁護人は「21年12月27日より以前の報道では、石川被告は16年の収支報告書について調べられることを予想できなかったのでは」と聞き、あなたは「報道を具体的に把握していない」と答えた。それに補足したいことは。
尋問の後、改めて報道を調べてみた。12月27日より1週間くらい前に、4億円の土地購入原資が収支報告書に記載されていない疑いで東京地検特捜部が石川被告を調べる方針だとあった。
――12月21日付読売新聞1面を示す。
私が調べた記事のうちの一つです。当時もこの報道がされていたことを認識していたことを思い出した。石川被告も当然見ていただろうし、石川被告の取り調べ時の態度から、予め予想して調べに臨んできたと思ったし、今も思っている。
――石川被告の態度とは。
4億円の記載は何を意味するのかという問いに、りそな銀行からの4億円だと逡巡することなく答えた。
――前回の証人尋問で弁護人から「4億円の借り入れは何を記載したのかという点について、21年12月27日付調書に記載していないが」と問われ、「想定通りの供述をしてきたので、まったく弁解する気がないと思って記載しなかった」と答えた。16年の収支報告書の4億円はりそな銀行の4億円だと説明する可能性が高いと予想した根拠は、備考欄に書いてあったからという他にある?
先行する池田被告の調べで、返済した4億円を19年の収支報告書に記載していないと出ていたので、石川被告もそれに合わせる形で収入も記載していないと説明するだろうと思った。
――小沢からの4億円は?
記載していない、とはっきりと言っていたので、さすがにそれを覆すことはなく、記載しなかった理由などについて反論してくるだろうと思った。当時、私に対しては、一切弁解はなく、この法廷で初めて弁解している。
――前回の証人尋問で弁護人から、石川被告が「民主党代表選をおもんぱかった」と動機を語ったことについて、「16年当時の永田町の状況について調査しなかったか」と聞かれ、「ある程度は調べたと思う」と。弁護人は「石川被告は『郵政解散で民主党が負け、臨時代表選がある』と思った」とし、あなたは「若干調べたが、選挙の前は民主党が負けるとはそんなに言われていなかった」と。補足したいことは。
これについても尋問の後、再度調べてきた。16年9月~17年3月の読売新聞、朝日新聞、毎日新聞、日経新聞の縮刷版の記事を確認した。16年秋ごろというのは、「小泉首相が郵政民営化法案が通らなければ解散?」という趣旨の記事はあったが、仮に解散すれば自民党が分裂して負けるから解散しないのでは、という記事がすべてだった。選挙になれば民主党が大敗、という記事は見当たらなかった。
――「代表選をおもんぱかって」という供述は、最初の調べからあった?
一切ありません。
――当初は何と供述していた?
「特に深い理由はない。忙しかったので、翌年にして池田被告に引き継いでしまおうと思った」と。
――保釈後の石川の取り調べの調書97ページを見ると、石川被告の発言として、「強制捜査の前に早く認めないと、ここは恐ろしい組織で何をするかわからない状態」と言って、あなたの判断は「うんうん」と言ったとなっていますが、確認できますか?
はい。
――うんうん、という意味について、あなたは証人尋問で聞かれ、「石川被告が調書に署名した後で、気がゆるんだ」と証言され、「調べのことを気にしながら、どう展開しようとか考えていた。この先、どう取り調べを終えようかとか考えていた」と言いましたね。
はい。
――このうち、どう展開しようとか、どう終わろうか、というのはどういう意味ですか?
証人尋問を終えてから、反訳書をよく読んでみました。水谷建設についての調書を取り終わって、もう一度、供述が変わるかどうかを確認しようと思いました。石川被告はとりつく島もなく、それはやっていない、それだけはえん罪だと言った。水谷建設についてこれ以上の供述を得ることはできないと思い、別の質問にするのか、無理か、どういう形で調べを終わらすかを考えていました。その時、恐ろしい組織という話がありました。これはまったく耳に入っていない状態で、相づちを打ってしまいました。
□弁護人による田代検事の証人尋問
――平成22年10月の石川被告の最初の調べの調書で、収支報告書への記載が「りそなの転換したもの」という当然の前提で、確認の記載がないことを尋ねましたね。
はい。
――収支報告書の記載が、りそなの転換の4億円だねという答えを誘導しようとして、基本の前提問題で記載をしようとしなかったのではありませんか?
違います。
――石川被告の取り調べ状況で、あなたは供述調書の任意性が焦点となって呼ばれているという認識はありますね。
はい。
――任意性で呼ばれたのは何度目ですか
2回目です。
――それはいつごろですか。
平成13年ごろだったと思います。証人に出た時は、もう東京地検にいましたが、事件自体は甲府地検の事件でした。
――どういうところを任意性で争ったのですか
暴力団組員の対立で、暴力団への逮捕、監禁致傷事件で、大量の被疑者が検挙され、私が調べた被疑者が、事前に共謀したことを供述したので、それを公判で争われました。
――任意性の争点の理由は?
検事に恫喝されて、意にそぐわない調書に署名されたと言われました。
――箸にも棒にもかからないと思っていたのですか?
まぁそうです。
□立会検察官による田代検事の尋問
――平成13年の甲府の任意性を争われた事件で、結論はどうなったのですか。
任意性や信用性が認められました。
(田代検事に対する証人尋問はこれで終了。続いて蜂須賀三紀雄検事が証人に立つ。)
■弁護人と蜂須賀三紀雄検事のやりとり
――一般論として、検事としてどういう目的で
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