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米国立公文書館「漏洩40年の記念日に」国防総省秘密文書を全公開

奥山 俊宏

 ベトナム戦争の経緯の裏表を詳細につづった米国防総省秘密文書「ペンタゴンペーパーズ」の完全版が6月13日、米政府の国立公文書館で公開された。1971年6月13日、ニューヨーク・タイムズがこの文書をもとにした記事の連載を始めたが、それ以降これまでに出回っている文書のコピーはいずれも「不完全で、品質にも多くの問題を抱えている」(公文書館)という。米政府は今回初めて「報道へのリーク(漏洩)から40年になる記念日」に、48箱、約7千ページの文書の全体の原本を公開することにした。

▽筆者:奥山俊宏

 この文書は「合衆国-ベトナム関係 1945-1967」と題され、国防長官の「ベトナムタスクフォース」によって作成された。公開された文書の冒頭にある添え状によれば、1967年6月17日、当時のロバート・マクナマラ国防長官の命令でタスクフォースは作られた。第二次世界大戦以降のベトナムへの米国の関与について「百科事典的(広範)に、そして、客観的に」調査するようにというのがマクナマラ国防長官の指示の内容だった。その調査結果をまとめた文書は1969年1月15日、後任のクラーク・クリフォード国防長官に提出された。文書は「トップシークレット」(最高機密)に指定された。

拡大ダニエル・エルズバーグ博士

 国防次官補の特別補佐官や国務省のベトナム大使館員などを歴任し、当時は空軍系の民間研究所ランド・コーポレーションに勤務していたダニエル・エルズバーグ博士は、この文書の執筆

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筆者

奥山 俊宏

奥山 俊宏(おくやま・としひろ) 

 1966年、岡山県生まれ。1989年、東京大学工学部卒、朝日新聞入社。水戸支局、福島支局、東京社会部、大阪社会部、特別報道部などで記者。2013年から朝日新聞編集委員。2022年から上智大学教授(文学部新聞学科)。2023年から「Atta!」編集人。

 著書『秘密解除 ロッキード事件  田中角栄はなぜアメリカに嫌われたのか』(岩波書店、2016年7月)で第21回司馬遼太郎賞(2017年度)を受賞。同書に加え、福島第一原発事故やパナマ文書の報道も含め、日本記者クラブ賞(2018年度)を受賞。 「後世に引き継ぐべき著名・重要な訴訟記録が多数廃棄されていた実態とその是正の必要性を明らかにした一連の報道」でPEPジャーナリズム大賞2021特別賞を受賞。

 そのほかの著書として『内部告発のケーススタディから読み解く組織の現実 改正公益通報者保護法で何が変わるのか』(朝日新聞出版、2022年4月)、『パラダイス文書 連鎖する内部告発、パナマ文書を経て「調査報道」がいま暴く』(朝日新聞出版、2017年11月)、『ルポ 東京電力 原発危機1カ月』(朝日新書、2011年6月)、『内部告発の力 公益通報者保護法は何を守るのか』(現代人文社、2004年4月)がある。共著に『バブル経済事件の深層』(岩波新書、2019年4月)、『現代アメリカ政治とメディア』(東洋経済新報社、2019年4月)、 『検証 東電テレビ会議』(朝日新聞出版、2012年12月)、『ルポ 内部告発 なぜ組織は間違うのか』(同、2008年9月)、『偽装請負』(朝日新書、2007年5月)など。

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