メインメニューをとばして、このページの本文エリアへ

証券訴訟の損害額算定の傾向とその「振れ幅」

 有価証券報告書などの虚偽記載で被害を被った投資家が、株式発行会社などに損害賠償を求める証券訴訟が急増する中、株価下落による株主の損害額の認定が、同じ事件でも裁判所によってばらつくケースが目立つ。株価形成には様々な要素があり、損害額の算定が難しいため、最終的に裁判所の裁量にゆだねられるためだ。細野敦弁護士が、破綻した不動産開発会社「アーバンコーポレイション」の訴訟を主な題材に、裁判所の損害額算定の傾向を分析し、法の安定性、公平性などの観点から問題点を指摘する。

 

証券訴訟の損害額算定の傾向とその問題点
 ~裁判所の裁量は広く認められるべきなのか?~

 

西村あさひ法律事務所
弁護士 細野 敦

細野 敦(ほその・あつし)
 1988年、一橋大学法学部卒業。1990年から2008年まで裁判官。この間、東京地裁、最高裁司法研修所付、鹿児島地家裁名瀬支部、最高裁広報課付、宮崎地裁、東京地裁、東京高裁などを歴任。1992~93年 アメリカ合衆国ノートルダム大学法科大学院客員研究員。2008年3月に弁護士登録。

 ■はじめに

 開示書類の虚偽記載によって被害を被った投資家が、証券の発行者である会社などに対して損害賠償を求めるいわゆる「証券訴訟」が2004年の旧証券取引法の改正をきっかけに急増していることは、2011年6月1日付けの本誌「虚偽記載の責任 急増する証券訴訟、企業情報開示で」でも解説されている。

 そこでも取り上げられているとおり

・・・ログインして読む
(残り:約7978文字/本文:約8450文字)