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「生涯現役社会の実現」へ、注目される企業の取り組み

 公的年金の支給が始まる年齢が65歳へと引き上げられつつあるなか、企業は今、定年を延長したり、定年後も雇用を継続したりするなど高年齢者の雇用により前向きに取り組むことを期待されている。厳しい雇用状況が続いており、60歳を過ぎて職を失うと、無年金、無報酬となってしまう可能性が出てくる。「生涯現役社会」の実現に向け、企業の取り組みが注目されている。

日本経営倫理士協会専務理事
千賀 瑛一

日本経営倫理士協会・千賀瑛一専務理事千賀 瑛一(せんが・えいいち)
日本経営倫理士協会専務理事。東京都出身。1959年神奈川新聞入社。社会部、川崎支局長、論説委員、取締役(総務、労務、広報など担当)。1992年退社。1993年より東海大学(情報と世論、比較メディア論)、神奈川県立看護大学校(医療情報論)で講師。元神奈川労働審議会会長、神奈川労働局公共調達監視委員長、「経営倫理フォーラム」編集長。日本記者クラブ会員。

 ■長年の職業人生で養った知識、経験を生かす

 少子高齢化の急速な進行により、労働力人口の減少が見込まれている。高齢者・女性・外国人がますます労働力として無視できなくなってきている。特に高年齢者が長年の職業人生で養った知識や経験を生かし、企業の継続的な戦力として生かされることは、企業にとって有利とされている。いわゆる団塊の世代が65歳に到達し始めることもあり、意欲と能力がある高齢者の働く場づくりを進めていくことが大切だ。

 平成18年に施行された「高年齢者等の雇用の安定等に関する法律(高齢法)」では、事業主に対し(1)65歳以上の定年引き上げ(2)継続雇用制度の導入(3)定年の定めの廃止――のいずれかの措置を義務づけており、企業は平成25年度までにそれらを段階的に実施しなければならない。

 ■セミナーなどで制度の普及、浸透図る

 希望者全員が65歳まで働ける企業の割合は平成22年6月1日現在で46.2%、70歳まで働ける企業の割合は17.1%にとどまっている。このような状況下で同法にもとづく高年齢者雇用の確保と推進のため、厚生労働省は取り組みをさらに強く推進しようとしている。一方、企業サイドには、景気動向、人件費コスト上昇に対する不安、あるいは労働能力の個人差に対する扱いなどへの懸念があるようだ。

 ■積極的な取り組み求める厚労省

 年金の支給開始年齢は段階的に引き上げられており、男性では定額部分が平成25年度に65歳までの引き上げが完了。さらに同年度から報酬比例部分の60歳から65歳への引き上げが開始される。女性の場合は5年遅れ。

 厚生労働省が行った「高年齢者の雇用状況」の調査(平成22年)によると、希望者全員が65歳まで働けるようにすることを目標としている企業の割合は、中小企業(31~300人)で48.8%、大企業(301人以上)で24.0%。70歳まで働けるようにすることを目標としている企業の割合をみると、中小企業(31~300人)で17.9%、大企業(301人以上)で10.4%であった。「希望者全員が65歳まで働ける企業」「70歳まで働ける企業」のいずれの目標数値についても、中小企業が大企業より大きく先行しているのが注目される。

 各都道府県の労働局やハローワークでは、独立行政法人高齢・障害者雇用支援機構など関連団体と連携をとりながら企業に働きかけをしている。各労働局やハローワークの職員、あるいは、民間人に委嘱している「70歳雇用支援アドバイザー」らが、企業に出向いて定年延長等の周知徹底、取り組みへの助言をしている。

 ■問われる高年齢者雇用への姿勢

 今年度には

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