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日債銀元会長らに逆転無罪《判決要旨・記者会見全文》

奥山 俊宏

 日本債券信用銀行が1998年に破綻したときの首脳3人に8月30日、逆転無罪の判決が言い渡された。起訴から12年。大蔵省で理財局長や国税庁長官を歴任した窪田弘・元会長(80)、日本銀行で高松支店長や国際局長を歴任した東郷重興・元頭取(67)、日債銀生え抜きの岩城忠男・元副頭取(73)の3被告全員の有罪が覆された。東郷元頭取は判決後、岩城元副頭取や弁護人とともに記者会見し、「火中の栗を拾い、私心なく頑張ってきたのに刑事訴追され、何でこういうことになるのか納得いかない部分はあるが、明快な無罪判決をいただき、うれしい」と述べた。

 

 東京高裁刑事717号法廷。裁判所職員によって事件名が読み上げられているとき、法廷にある時計の針が10時半へと進む。

東京高裁の庁舎に入る東郷元頭取(手前右)、岩城元副頭取(手前左)ら=8月30日午前10時1分、東京・霞が関で

 裁判長に促されて自席を立つとき、東郷元頭取がつまずいて、転びそうになる。岩城元副頭取がその身体を支える。2人は並んで、裁判長に正面から向かい合って、証言席の前に立つ。もう一人の被告、窪田元会長の姿はない。病と闘っているからだ。

 裁判長が「本日出廷していない窪田被告」も含め被告3人の名前を口に出して確認する。

 「東京地方裁判所が言い渡した判決に対し、各被告人からそれぞれ控訴の申し立てがあったので、当裁判所は、次のとおり判決する」

 一瞬の間を空ける。

 「原判決を破棄する。被告人らはいずれも無罪」

 東郷元頭取と岩城副頭取は会釈するように軽く頭を下げる。

 裁判長から「元の席に戻ってください」と言われて、東郷元頭取は改めて深く一礼する。

 裁判官席の脇にホワイトボードが用意される。その一番上には

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