政権樹立の陰で暴力団が暗躍した「竹下ほめ殺し事件」

　戦後の自民党一党支配に幕を引き、今にいたる政界流動化のきっかけともなった金丸信・元自民党副総裁の5億円ヤミ献金事件。1992年に発覚したが、公判に付されず20万円の罰金で処理されたため、捜査資料が法廷で開示されず多くの謎が残されている。この連載「金丸事件：特捜部長と金庫番が語る20年目の真実」では、ヤミ献金事件とそれに続く脱税事件の捜査を東京地検特捜部長として指揮した五十嵐紀男弁護士、金丸氏の秘書で金庫番とも言える存在だった生原正久氏の証言で真相に迫る。この連載5回目の本稿では、戦後保守政権の恥部を暴いた「竹下ほめ殺し」事件の捜査を検証する。

　■「竹下ほめ殺し」事件

　東京佐川急便経営陣が暴力団に巨額資金を流出させた動機を解明する捜査の中で、国民を絶句させる政界スキャンダルが明らかになる。金丸が竹下政権樹立のため右翼の攻撃封じを暴力団稲川会会長の石井進に要請していた「竹下ほめ殺し」事件である。

　87年秋の東京・永田町。中曽根康弘首相の後継を決める自