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「これだけの政治家を片っ端から呼んだら大変なことに」

(7) 金丸氏以外の国会議員に捜査が及ばなかった事情

村山 治

 戦後の自民党一党支配に幕を引き、今にいたる政界流動化のきっかけともなった金丸信・元自民党副総裁の5億円ヤミ献金事件。1992年に発覚したが、公判に付されず20万円の罰金で処理されたため、捜査資料が法廷で開示されず多くの謎が残されている。この連載「金丸事件:特捜部長と金庫番が語る20年目の真実」では、ヤミ献金事件とそれに続く脱税事件の捜査を東京地検特捜部長として指揮した五十嵐紀男弁護士と金丸氏の秘書で金庫番とも言える存在だった生原正久氏の証言で真相に迫る。東京佐川急便の渡邊廣康元社長は、金丸氏以外の政治家にも巨額のカネをばらまいていた。しかし、立件されたのは金丸氏の5億円と金子新潟県知事の1億円だけ。金丸氏から5億円を分配されたとされる約60人の政治家も不問とされた。7回目は、不発に終わった政界捜査を検証する。

  ▽筆者:村山治

  ▽この記事は9月20日に出版された単行本「小沢一郎vs.特捜検察20年戦争」(村山治著、朝日新聞出版)に収載された原稿の一部を取り出し、それに加筆したものです。

  ▽関連資料:「渡邉廣康の政治家への現金交付状況一覧表」と題する書面

  ▽注:本文中の敬称は原則、略しています。


 ■政界を汚染した「佐川マネー」

 佐川清・佐川急便会長と渡邊廣康・東京佐川急便元社長は、それぞれ有力な政界人脈を持っていた。その意向を受けて東京佐川急便からは巨額の資金が政界に流れ込んでいた。一方、国会では、佐川急便側が、その豊富な資金力で、路線免許を取得したり、業務にかかわる道路運送法違反などでの行政処分をもみ消したりしたのではないか、などと追及されていた。政官財界やメディアの一部では、東京佐川急便事件が、リクルート事件を上回る「佐川疑獄」に発展する可能性があると見ていた。

 筆者が入手した東京佐川急便の当時の経理資料や関係者によると、同社は86年1月、パーティ券200枚を購入する形で運輸政務次官(衆院議員)に4000万円寄付(銀行口座から出金)したのをは

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