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小沢氏vs裁判官やりとり一問一答「報道後も秘書を呼んで確認したことない」

1月11日午後、被告人質問終了

 資金管理団体「陸山会」をめぐる土地取引事件で、政治資金規正法違反(虚偽記載)の罪で強制起訴された民主党元代表・小沢一郎被告(69)の第13回公判は、11日午後も東京地裁(大善文男裁判長)で続いた。政治資金収支報告書の処理について、小沢氏は「秘書に任せ、自分は見ていなかった。大多数の議員が見ていない」と述べた。

  ▽この記事は2012年1月12日の朝日新聞に掲載された原稿に大幅に加筆したものです。

  ▽注:法廷でのやりとりは記者のメモから起こしたもので、正確に聞き取れなかった部分があります。聞き取れなかった部分は「〓」などと表示してあります。

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公判を終え、東京地裁を出る小沢一郎・民主党元代表=11日午後5時35分、東京・霞が関

 2日間に及んだ被告人質問が終わり、裁判は最大の山場を越えた。地裁は2月に、捜査段階で「小沢氏に虚偽記載を報告し、了承を得た」と認めた石川知裕・衆院議員(38)ら元秘書の供述調書を証拠採用するか判断を示す。判決は4月26日を軸に調整している。

 小沢氏は、最後に質問した裁判官に対しても「収支報告書の作成は信頼できる秘書にすべて任せており、報告は受けていない」と繰り返した。

 裁判官は、同法が政治団体の代表に対して会計責任者の選任・監督責任を定めている点を指摘し、「国会議員として天下国家(の話)に邁進(まいしん)していると言っていたが、代表としての責務はどう考えるのか」と追及。小沢氏は「私だけでなく大多数の国会議員は収支報告書にいちいち目を通すことはないし、そこまでする必要もない」と強調し、「おしかりを受ければその通りだが、ややこしい事務でないので秘書に任せているのが実態だ」と述べた。

 裁判官が「あなたのように大きな役職を歴任した方だけでなく、初当選した議員もそうか」と質問すると、小沢氏は「たぶんそうだと思う」と述べた。

 また、4億円の扱いを任せた石川議員が違法行為をした場合の監督責任を問われると、「秘書がそういうことをやるという考えは全くなかった」と述べた。

 石川議員らが収支報告書上の会計責任者の署名を代筆していたことは、「決して良いとは思わないが、実態として公正に記入されているなら、それほどとがめ立てることではない」という認識を示した。

 ■解説:「決定打」欠いた指定弁護士の追及

 指定弁護士にとって、小沢氏が被告人質問で一切を否認するのは織り込み済み。客観的な証拠や過去の説明との矛盾を突き、小沢氏の関与を浮かび上がらせるのが狙いだった。金の流れの不自然さや「秘書任せ」の不可解さは2日間の質問で深まったが、有罪とする「決定打」は欠いたように見えた。

 購入原資となった4億円について、小沢氏は「個人資産」と強調。過去の会見などでは「政治献金」「銀行融資」と説明していたが、指定弁護士はこの変遷は立証が不要だとして追及しなかった。

 強制起訴を決めた検察審査会が「説明を変えて出どころを明らかにしないことが虚偽記載の動機を示している」と批判していたことを考えると、市民の要請に応えたと言えるだろうか。

 指定弁護士の「得点」もあった。銀行の融資書類に自ら署名したことや、秘書への監督責任の不備を認める答えを引き出した。土地売買の契約締結の報告があったことさえ否定し、裁判にかけられた今に至っても「収支報告書を見たことがない」と主張した小沢氏の態度は、いかにも不自然だ。捜査段階と法廷での説明の食い違いも示せた。

 だが、「政治団体の代表が収支報告書の内容を知らないのはおかしい」という道義的責任と、刑事責任は厳密に区別されなければならない。地裁は来月、東京地検特捜部の捜査で「小沢氏の関与」を認めた内容の元秘書らの調書を、証拠採用するか判断する。裁判官の心証は即断できないが、唯一の直接的な証拠の採否は、結論を占うものになる。

 ■1月11日午後の法廷でのやりとり

 《13:30~14:00》

 ■村本道夫・指定弁護士が質問

 村本指定弁護士:村本から何点かうかがいます。陸山会の収支報告書の内容について、秘書から一切報告うけていないのですか?

 小沢議員:はい。

 村本指定弁護士:理由は、秘書は人間として信頼で成り立つのが前提ですべて任せている、収支報告書の作成は、収入支出の記載をすれば良い、ということでよろしいですね?

 小沢議員:はい。主な理由はその2つです。

 村本指定弁護士:信条として、仕事の上で、他人を信頼して仕事をするお考えなのですね?

 小沢議員:はい。

 村本指定弁護士:経験などは信頼の条件にはならないのですか?

 小沢議員:基本的には、秘書でも同僚でも誰でも、信頼して人間関係を作り、つきあっています。

 村本指定弁護士:石川さんについても信頼していたのですか?

 小沢議員:もちろんです。

 村本指定弁護士:特段の理由はあるのですか?

 小沢議員:特別の理由というものではありませんが、いわゆる書生の形で、やっているのは昔は数多くあらゆる分野でありましたが、私の所だけかなと思っている。彼は確か学生の時から私の所にいて、卒業してからも私のそばで面倒をみてくれていたのが、他の者よりも長かったように思います。どの書生でも同じですが、その意味でさらに長い間、互いに知り合い、その上で信頼関係が深まったのではないかと思います。

 村本指定弁護士:池田さんも同様ですか?

 小沢議員:はい。同じようなケースだったと思います。

 村本指定弁護士:秘書に裏切られたことはないですか?

 小沢議員:基本的にどのような結果になろうとも人を恨んだことはありません。何かあったとしたら自分の不徳といたすところです。

 村本指定弁護士:裏切られた経験はあるのですか?

 小沢議員:裏切るということはどういうことを裏切るかというかわかりませんが、私は裏切られた思いで人様を見たことはありません。

 村本指定弁護士:今回の事件では石川さんや池田さんの検面調書や公判供述を聞いて、信頼して間違いないと思いましたか?

 弘中弁護人:異議あり。まず、検面調書を見たかどうか確認してください。

 村本指定弁護士:公判で述べられた検面調書です。

 村本指定弁護士:今回の事件で公判の供述を聞いて、2人を信頼して間違いなかったですか?

 小沢議員:はい。

 村本指定弁護士:収支報告書の処理も間違いないですか?

 小沢議員:彼らは法律にのっとり、正しく記載していると思っています。

 村本指定弁護士:あなたは、収支報告書は見ていないのでしたよね?

 小沢議員:はい。

 村本指定弁護士:どうしてそう言えるのですか?

 小沢議員:根本は私は秘書を信じています。付随の理由は指定弁護士の質問でも言いましたが、報告書の内容そのものが複雑なものではなく、当たり前にやれば誰でもできるというものですから。

 村本指定弁護士:石川さんは、4億円は収支報告書の処理したと言って、池田さんはりそな4億円を記載していると言っていましたが・・

 弘中弁護人:異議あり。そんなことは言ってません。

 大善裁判長:石川さんはそのようなまとめ方ではなく、一連のものと理解していますが、いかがでしょうか?

 村本指定弁護士:池田さんは、りそな4億円を記載していると・・

 弘中弁護人:理解が違っていると思います。

 村本指定弁護士:いや、そうですか?

 大善裁判長:質問を変えてください。

 村本指定弁護士:あなたの石川さんへ渡した4億円は池田さんや石川さんの証言は内容が違うことは理解していますか?

 大善裁判長:質問が違っていません。変えて言ってください。

 村本指定弁護士:石川さんへ渡した4億円について収支報告書の記載が池田さんと池田さんの証言内容が違うと思うが。

 弘中弁護人:池田さんと池田さんとなっていて、意味がわかりません。

 小沢議員:2人の証言は正確に覚えているわけではありません。資金足りないということなので、用立てたということです。それを石川も後任の池田も報告書にきちんと掲載しているものだと信じています。

 村本指定弁護士:収支報告書の作成で、石川さんと池田さんに任せているという収支報告書は、信頼し、任せていたとしても、政治団体の1年の収支報告書を把握するためで、大切な資料になるのではないですか?

 小沢議員:先ほど述べたと思いますが、私が申し上げているのは収支報告書が重要ではない、と言っているわけではありません。正確に収入支出をきちんと正確に報告し、必要に応じて国民の目にする〓は、否定していません。

 村本指定弁護士:あなたは陸山会の代表者であり、政党支部もそうですが、そのほかの3つの関連団体があって、収支状況を把握するのは大事なのではないですか?

 小沢議員:政治団体の運営がスムーズにいっていることがわかればそれでいい。何度も申し上げていますが、読み書きそろばんができれば、収支報告書はきちんと作れる内容なので、これを秘書に任せるのは不自然ではありません。

 村本指定弁護士:任せることではなくて、政治団体の寄付の動き、支出についてですが、動向を得ることは、あなたの政治活動を支えるのに大事な情報なのではないですか?

 小沢議員:【語気強める】ですから今、申し上げた毎年末にそういうことになっていたが、政治団体の活動がうまくいっているかどうかは、やりとりはしていたと思います。

 村本指定弁護士:毎年末、数字を教えてもらったのですか?

 小沢議員:【語気強める】数字を教えてもらったとは言っていません。うまくいっているかどうかの類いの話です。

 村本指定弁護士:寄付の横ばい、増減など、増えている、減っているの話はありませんでしたか?

 小沢議員:ほとんどなかったです。うまくいっているのかを互いに理解しあえる同志が、政治家と秘書の関係です。

 村本指定弁護士:あなたが代表を務める政治団体の政治基盤は収入や支出を把握する必要は無かったのですか?

 小沢議員:ですから、政治団体の運営でうまくいっているかについてはあったと思います。その具体的な数字をあげてのやりとりはありませんでした。

 村本指定弁護士:収支報告書の作成は、収入や支出が〓であるということですか?

 小沢議員:はい。(公判で)専門家の先生もおっしゃっていました。

 村本指定弁護士:家計簿の収入や支出のように、現金で書けば良いと?

 小沢議員:資産ももちろんありますが。はい。

 村本指定弁護士:谷中証人は、手付金前払いは、実際現金で出た分は〓とおっしゃっていましたね。石川さんに処理が全任されていた。

 小沢議員:法律的なことはわかりませんが、収支報告書を適正に記載して報告して作成することは複雑なことではありません。

 村本指定弁護士:政治団体の寄付金は、制限ありますよね?

 小沢議員:はぁ・・あると思います。

 村本指定弁護士:政治団体の収支報告書の現金として、受けて良いのか判断が難しくはないのですか?

 小沢議員:そんなことはありません。わからないことや気がつかないことがあれば、総務省に聞けばわかります。

 村本指定弁護士:総務省に当たらなければ判断できないことがあるのですか?

 小沢議員:そういう意味で言ったわけではありません。書式的に法律的に知識が必要なことがあれば聞けばわかると言ったのです。

 村本指定弁護士:フォーラム21の時、池田さんから聞かれた言葉はありますか?

 小沢議員:ありません。処理の仕方は周知の事実です。

 村本指定弁護士:次のことを聞きます。平成16年10月22日にりそな銀行から借り入れた4億円は寄付。これまで平成16年10月に4億円を借り入れ、平成17年10月に2億円を返済していますが、それは理解されていますか?

 小沢議員:いいえ。

 村本指定弁護士:理解されていない?

 小沢議員:申し訳ありません。何度も言っていますが、金融機関の具体的なやりとりや秘書に裁量でやるようにまかせていますので、どういう法的立場だとか、どういう金融機関のやりとりになっているかどうかとか、わかりません。

 村本指定弁護士:りそな銀行の個人口座に振り込まれたことはわかりますか?

 小沢議員:わかりません。

 村本指定弁護士:利息分が出されていることは公判でわかったと証言されたのではなかったですか?

 小沢議員:はい、最近聞いて驚きました。

 村本指定弁護士:4億円はあなたの口座に、利息分を上乗せして振り込まれたのでないですか?

 小沢議員:そこまで理解していたわけではありません。ただその話を最近、聞きました。利息も私の個人口座から支払われていたということを申し上げました。

 村本指定弁護士:誰から聞いたのですか?

 小沢議員:覚えていません。この問題が発生して、相当たってから何かの拍子にひょいと聞きました。

 村本指定弁護士:裁判になってからわかったのですか?

 小沢議員:さぁ・・裁判になってからかその前か。そんな古い話ではありません。

 村本指定弁護士:言っている趣旨がよくわからないのですが、利息が払われていることはいつどのように聞いたのですか?

 小沢議員:その後のことは聞いていません。個人の預金口座から払い込まれたことを聞いて、「えーっ」と言ったら、後日返還されましたというたぐいの話です。いつ具体的になったかについてはわかりません。

 村本指定弁護士:4億円の利息〓は、陸山会から返還を受けたのですか?

 小沢議員:払われたことと後の話は、〓です。

 村本指定弁護士:支払われたことと返還されことは一緒に聞いたのですか?

 小沢議員:はい。

 村本指定弁護士:どなたから聞いたかどうかは記憶にないのですか?

 小沢議員:明確に記憶はしていませんが、確か南弁護士だったかと。

 村本指定弁護士:平成17年収支報告書の政治活動費の内訳です。陸山会の収支報告書に、平成16年10月30日に4億円の記載があります。このことを言っているのですか?

 小沢議員:だろうと思います。収支報告書を見ただけではわかりませんが。

 村本指定弁護士:あなたは、どこへ返還されたのか理解しているのですか?

 小沢議員:直接現金でもらったわけではありません。僕の個人口座ではないでしょうか。確認していないのでわかりませんが。

 村本指定弁護士:りそな銀行の個人口座の中身は、内容確認しないのですか?

 小沢議員:ほとんどしません。まさに秘書は手続きの中で、やっていることで、それをだいたいにして個人の口座で利子を支払ったことは知りませんでした。後日聞いて、わかりましたと言いたい。

 村本指定弁護士:陸山会の収支報告書で、池田さんが平成17年10月31日に返済したという記載があり、その日に返済したんだろうということがわかりますか?

 小沢議員:だろうということしか。

 村本指定弁護士:甲173号証示します。平成19年3月9日の欄を示します。453万円という陸山会のりそな銀行の口座から、平成16年の借り入れ分の利息支払いとあります。りそな銀行の個人口座に転換されています。これを聞いたのではないですか?

 小沢議員:え?

 村本指定弁護士:今のことを知っていたのですか?

 小沢議員:知りません。最初から申し上げている通り、利息が支払われたことは全く知らないし、見せてもらったものも本物であれば、そういう形で戻されたというのはさっき申し上げた通りで、つい最近聞いた話です。

 村本指定弁護士:戻された内容について、平成17年10月31日に利息があなたの所へ戻したとなっていますが、実際、現金で戻されたのは、平成19年3月ではないですか?

 小沢議員:私はわからない。どういうことですか?

 村本指定弁護士:池田さんは今の利息について虚偽の記載をした、ということです。

 小沢議員:検事の主張じゃないですか?

 村本指定弁護士:証拠で理解されませんか?

 弘中弁護人:異議あり。尋問でやることではないと思います。

 河津弁護人:時期が不明確です。明確にして言ってください。

 大善裁判長:質問を

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