(2)「対策案を出したのに突然『玉井外し』が始まった」
2012年01月20日
▽構成:週刊朝日・山本朋史、朝日新聞・村山 治
▽この記事は2012年1月17日発売の週刊朝日に掲載されたものです。
▽この連載の1回目: 「社外取締役の私に途中まで対策をすべて任せた」
▽関連資料: 2009年2月3日の村上ファンド事件控訴審判決(裁判所ウェブサイトへのリンク)
▽関連資料: 2007年7月19日の村上ファンド事件一審判決要旨
■京阪電鉄に株を持ってもらおうと阪神上層部に提案
私は、阪神のアドバイザーの大和証券SMBC(当時)の助言能力をあまり評価していなかったし、社外取締役の私を疎外する行動にあきれはて、もう放っておけと思いました。それで直接、村上(世彰)氏と何度か会いました。本当にこれを解決することを考えると、彼もそんなに長く阪神株を持つまいと。どのぐらいの期間持つか、単刀直入に聞いてみようと思ったのです。
「1年持ってるのか、2年持ってるのか」
「まあだいたいええとこですな。非常にスムーズにいったときには1年でエグジット(出口=株を手放す)してもいいし、それから場合によっては2年くらい持ってもいいし。それはなりゆき次第です」
これは一つの収穫でした。阪神にしてみたら、もう下手したら未来永劫、筆頭株主でおられるんやないかと、錯覚してますからね。通常、海外のファンドは、みんな契約年限が比較的短いもので、10年先なんて、持てるわけはありません。早ければ1年、遅くとも2年の間には出る。出るときにどういう出方をしてもらうかを考えないかんと阪神側に説明したのです。村上氏は会社に株を引き取ってくれとは絶対に言わない。これまで彼の投資実績のなかで、彼は一回もそれを言ったことがない。
ここで私は上層部だけに、
「これを奇貨として、消極的に考えず、積極的に今後、阪神が発展していくために業務の共同体になってくれるような企業に村上氏の株を持ってもらう。阪神と組むことで相手にも非常なメリットになるような、そこを考えようじゃないか」
と提案したのです。
私が考えていたのは3社でした。一つは同業者、一つは不動産、もう一つは百貨店でした。電鉄については、非常にメリットの大きいのは京阪電鉄。これといっしょになれば、まさに「京阪神急行電鉄」になる。それから、会社の規模とか、会社の穏健篤実な社風だとか、そういうとこから考えて、非常に類似性が高い。しかも競合しません。じつは、京阪電車のほうも非常に望んでおられたとも聞きますね。
業務提携の話はずっと以前からあったようです。問題は株をどれぐらい引き取ってもらうか、という話になったのでしょう。京阪は非常に堅実な会社ですからね、それをぜんぶ一時に借り入れでまかなって買うというたら、財務的にもコスト的にも過大な負担を強いる。私がそのアイデアを出したときには、西川社長が「いや、京阪にはじつは当たりましたんや」と言う。で、色よい返事が得られなかった。3等分して、10%を持ってくださいとでも西川社長は言ったのかもしれない。私は場合によったら5%でもいいと。あるいは将来、そういうふうに考えておいて、資金的余裕ができたときに持ってくださいというふうな絆をつくっておければいいんだと思いましたね。
村上氏とその話をしたときに、彼は、こう言い
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