2012年01月27日
▽筆者:砂押博雄、奥山俊宏、上地兼太郎
▽この記事は2012年1月27日の朝日新聞に掲載された原稿に加筆したものです。
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2008年5月、米国のワシントンDC郊外のNRC本部。扉の厚い、防音対策が施されている部屋で、保安院の主席統括安全審査官を筆頭とする保安院職員と、独立行政法人・原子力安全基盤機構のスタッフ計6人が、NRC幹部らと向き合っていた。会議の議題はB5bだった。
冒頭、NRC側は、連邦法の秘密保持に関する解説書を保安院側に手渡した。資料と言えるものはこの解説書だけ。会議でのやりとりをメモすることも許されず、口外することも禁じられた。
保安院職員らは宿舎のホテルに戻ると一室に集まり、全員で会議の記憶を呼び起こし、メモにまとめるなどしたという。同様の会議は06年春にも行われた。
NRCからもたらされた、B5bに関する詳細な情報は、保安院幹部ら数人しか閲覧できないよう制限されたまま、その後も関係機関や電力会社に伝わることはなかった。
内閣府原子力委員会の幹部は、福島第一原発の事故後に来日したNRCの元委員長から、非公開のB5bの情報を原子力安全・保安院に伝えていたことを聞かされた。「情報は保安院が抱え込み、内部でも共有されていなかった。がくぜんとした」。同委員会の別の幹部は「国内の原発でもこの安全対策を備えていれば、事故の拡大を防げていた可能性は高い」と話す。
東電幹部も「(B5bが義務づける機器や装備などを)保安院から示されていれば、時間はかかったかもしれないが、対応する余地はあった。。たとえば、空気駆動バルブでも、ちょっと型式を変えれば、手で開けられるバルブもあると思うが、そういう選
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