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東京弁護士会がオリンパスに警告「内部通報社員の人権を侵害」

奥山 俊宏

 東京弁護士会(竹之内明会長)は27日、オリンパス社内で内部通報窓口(ヘルプライン)を利用した社員に対して「重大な人権侵害」があったとして、同社に警告書を出した。弁護士会の人権救済の措置の中では「警告」はもっとも重いという。同社は「警告内容を精査し、改善すべき点があれば改善していく」とのコメントを発表した。

  ▽筆者:奥山俊宏

  ▽この記事は2012年1月28日の朝日新聞に掲載された原稿に加筆したものです。

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拡大記者会見する東京弁護士会の白井副会長(右端)、中村人権擁護委員長(中央)、大辻弁護士(左端)=27日午後2時51分、東京都千代田区霞が関で

 警告書によると、同社の社員・浜田正晴さん(51)は、大口取引先社員の相次ぐ中途採用について、会社のコンプライアンス(規範順守)の上で重大な問題が発生する可能性があると考え、2007年6月11日、社内のコンプライアンス室に設置された「コンプライアンスヘルプライン」に通報した。ところが、コンプライアンス室長と危機管理室長は同月27日に浜田さんの上司から事情を聴取した際に、浜田さんが通報したとの事実をその上司に知らせた。コンプライアンス室長はその後、7月3日に、通報に関する調査結果として「重要取引先から続けて2人を採用することについては、先方に対する配慮を欠いたといわざるを得ない」などと記載した電子メールを浜田さんに送ったが、その際、そのメールを浜田さんの上司と人事部長にもCCで同送した。警告書はこれについて「通報者の個人情報の漏洩」と指摘し、「ヘルプライン運用規程に違反し、かつ、浜田さんの人格権を侵害する」「企業のコンプライアンスや公益通報窓口への信頼をも揺るがす」と批判した。

 浜田さんはその後、8月27日に部長付への異動を上司から告げられ、10月1日付で実際に異動させられた。さらに、警告書によると、合理的根拠がないのに社外の人脈との接触を禁じられ、「達成できない業務目標」を設定されて、「極端に低い成績評価」をつけられ、「こんなんでいるんだったら必要ないよ」と言われるなど「パワーハラスメント」を受け続けた。警告書はこれらについて「通報への報復など不当な動機・目的があった」と指摘。さらに異動については「人事裁量権を濫用したものであり、浜田さんの人格権を侵害した」とし、パワハラについては「長期間に及んでおり、人権侵害の程度は極めて重大」と判断した。

 記者会見した東京弁護士会の白井剣副会長によると、27日午後、同弁護士会の人権擁護委員会の中村秀一委員長、大辻寛人弁護士らとともに東京・西新宿のオリンパス本社に出向き、総務人事本部長、法務部長、人事部長と面会し、23ページの警告書をすべて読み上げたという。同社の総務人事本部長はこれに対し、「厳粛に受け止めています。現在、会

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筆者

奥山 俊宏

奥山 俊宏(おくやま・としひろ) 

 1966年、岡山県生まれ。1989年、東京大学工学部卒、朝日新聞入社。水戸支局、福島支局、東京社会部、大阪社会部、特別報道部などで記者。2013年から朝日新聞編集委員。2022年から上智大学教授(文学部新聞学科)。『法と経済のジャーナル Asahi Judiciary』の編集も担当。近刊の著書に『内部告発のケーススタディから読み解く組織の現実 改正公益通報者保護法で何が変わるのか』(朝日新聞出版、2022年4月)。
 著書『秘密解除 ロッキード事件  田中角栄はなぜアメリカに嫌われたのか』(岩波書店、2016年7月)で第21回司馬遼太郎賞(2017年度)を受賞。同書に加え、福島第一原発事故やパナマ文書の報道も含め、日本記者クラブ賞(2018年度)を受賞。 「後世に引き継ぐべき著名・重要な訴訟記録が多数廃棄されていた実態とその是正の必要性を明らかにした一連の報道」でPEPジャーナリズム大賞2021特別賞を受賞。
 そのほかの著書として『パラダイス文書 連鎖する内部告発、パナマ文書を経て「調査報道」がいま暴く』(朝日新聞出版、2017年11月)、『ルポ 東京電力 原発危機1カ月』(朝日新書、2011年6月)、『内部告発の力 公益通報者保護法は何を守るのか』(現代人文社、2004年4月)がある。共著に『バブル経済事件の深層』(岩波新書、2019年4月)、『現代アメリカ政治とメディア』(東洋経済新報社、2019年4月)、 『検証 東電テレビ会議』(朝日新聞出版、2012年12月)、『ルポ 内部告発 なぜ組織は間違うのか』(同、2008年9月)、『偽装請負』(朝日新書、2007年5月)など。
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※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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