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時効を考慮し企業の不正調査は迅速に

渋谷 卓司

 役職員がかかわる横領などの不正を発見した企業が、役職員を刑事告訴したり損害賠償請求訴訟を起こす場合に問題になるのが「時効」。渋谷卓司弁護士が刑事、民事の時効制度を詳細に解説し、むざむざ時効の完成で法的措置の機会を失うことがないよう、企業内での不正調査は迅速かつ効率的に進める必要があると訴える。

 

社員等による企業に対する不正と時効の問題

西村あさひ法律事務所
弁護士 渋谷 卓司

渋谷 卓司(しぶや・たかし)
 1990年慶應義塾大学法学部卒業、2004年ジュネーブ国際大学(MBA)修了。1992年から2010年まで検事。東京地検特捜部、法務省刑事局(刑事法制課、国際課)、外務省在ジュネーブ国際機関日本政府代表部などで勤務。2010年4月弁護士登録。危機管理・コンプライアンスを中心とした企業法務を主に担当。

 ■はじめに

 昨年末、オウム真理教信者らによる一連の犯行の1つである逮捕監禁致死罪により特別指名手配中の被疑者が出頭し逮捕された(その後、逮捕監禁罪で起訴)。報道によれば、被疑者は出頭の理由の1つに、自身が関与を疑われた別件殺人未遂事件の時効が完成したことにより、その事件の濡れ衣を着せられるおそれがなくなったことを挙げている由である。こうした報道を見て、既に事件後16年から17年近くが経過し、後に発生した殺人未遂事件については時効が成立したにもかかわらず、逮捕監禁致死事件について時効が成立していなかったのはなぜなのかという疑問を抱いた方もいるのではないだろうか。その答えは

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