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《詳報》 オリンパスに訴えられたオリンパス社長、請求に応じず

奥山 俊宏

 企業買収をめぐって取締役としての注意義務に違反したとして、オリンパスが同社の高山修一社長らに損害賠償を求めて起こした訴訟の第1回口頭弁論が3月1日、東京地裁民事8部(大門匡裁判長)で開かれ、高山社長の代理人弁護士は請求棄却の判決を求めた。会社が現職の社長を相手取って訴訟を起こすという異例の事態で、この訴訟の法廷では、代表取締役である高山社長ではなく、3人の監査役が原告の会社を代表している。

 

オリンパスから訴えられたオリンパスの高山修一社長(左)と、株主から訴えられたオリンパス社外取締役の来間紘氏(右)=2月27日午後5時47分、東京・西新宿で

 この訴訟で被告となっているのは、1982年1月から2001年6月までオリンパスの代表取締役を務めた下山敏郎元社長(請求額10億円)、91年6月から2005年6月まで代表取締役だった岸本正寿元社長(同)、2001年6月から昨年10月まで代表取締役だった菊川剛・前社長(請求額36億1千万円)、昨年10月から代表取締役を務め、今年4月20日に辞任する予定の高山現社長(請求額5億円)を含む11人の現旧取締役。1日の口頭弁論では被告全員が請求棄却の判決を求めた。

 会社側の主張によれば、同社では、1985年以降の円高によって営業利益が大幅に減少し、下山社長時代に、営業外で利益をあげようと、安全な金融商品だけでなく、債券や株式の先物取引、金利・為替スワップ、仕組み債、特定金銭信託、特定金外信託によって積極的な資金運用を始めた。ところが、1990年にバブル経済が破綻し、同社は金融資産に含み損を抱えてしまった。この含み損を取り戻すため、ハイリスク・ハイリターンのデリバティブなどの金融商品に手を出したが、さらに損失が増える結果となり、その金額は98年ごろには950億円ほどに膨らんでいた。

 今回の訴訟の被告となっている山田秀雄、森久志の両元副社長は当時、同社の財務部門に所属し、こうした損失の「飛ばし」を実行した。会社側の主張によれば、2人は、同社の決算を作成する上で連結しなければならない関連会社にはならないように見せかけた受け皿ファンドを社外に作り、含み損を抱えた金融商品を高値の簿価で買い取らせ、同社から損失を分離するスキームを策定し、当時の岸本社長の了解を得て実行に移した(損失分離スキーム)。会社側の主張によれば、この実行には、中塚誠・元取締役が実務者として関与し、菊川前社長も少なくとも2000年1月までには報告を受けて認識していた、とされる。

 このように「飛ばし」た損失は1千億円を超えていたが、いつかは解消しなければならなかった。そこで、山田、森の両元副社長は、アルティスなど国内3社を買収する際にその代金を水増しし、また、英国の医療機器会社ジャイラスを買収した際に助言を受けたというアクシーズ側への支払いを水増しし、それら水増し分を還流させて損失を解消することにした(損失分離解消スキーム)。両元副社長は、国内3社の買収については2008年2月22日の取締役会で承認の決議を得た。助言会社への巨額の支払いについては2008年9月26日の取締役会と2010年3月19日の取締役会で2度にわたって承認を得た。高山社長はこれら3回の取締役会でいずれも承認に賛成しており、会社側は今回の訴訟でこれについて「経営判断の前提となった事実の認識に不注意な誤りがあるとともに、経営判断の推論過程及び内容が著しく不合理であって、善管注意義務違反が認められる」と批判している。

 3月1日の弁論で、下山元社長の代

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