2012年04月24日
この裁判の意義のひとつは、政治資金規正法の「欠陥」を改めて浮き彫りにしたことだ。
政治資金規正法は、政治団体の収支報告書の記載、提出義務者を、オーナーである政治家ではなく、秘書らが務める会計責任者に負わせる。
「政治家を煩雑な会計実務から解放し、政治活動に専念させるため」がその理由とされるが、実は、この規定が政治家を虚偽記載などの刑事責任追及から守る最大の防波堤になってきた面があるのだ。
政治家はこの規定をたてに、虚偽記載事件が起きても、「知らなかった」と言い張ることができた。このため、検察は戦後長い間、政治家と会計責任者らとの具体的で明白な共謀の証明がない限り、政治家の摘発は困難との立場をとってきた。小沢議員に対する虚偽記載での告発を不起訴にしたのも、その流れに位置づけられる。
しかし、国民から選ばれた検察審査会は小沢議員の起訴を求めた。
敗戦直後に作られた同法は政治腐敗が起きるたびに改正を繰り返してきたが、「政治家」を収支報告の主役にする法改正はついに行われなかった。立法権を握る政治家側が「カネを集めてばらまく」自由を確保するため、温存させてきた結果ともいえる。
小沢議員の裁判でも最大の焦点は、小沢議員と会計責任者の大久保隆規元秘書や会計実務を担当していた元秘書の石川知裕衆院議員らとの共犯が成立するかどうか、だ。
小沢議員は疑惑発覚後、国会での説明を拒み、「法廷で真実を述べる」と語ったが、公判では「収支報告書は秘書に任せ、報告も受けていない」「記憶にない」と繰り返した。
保守政治家の「政治活動」の実態がカネ集めとバラマキであり、肝心なことは政治家の指示・了承なしでは行われることはないはずだ、と大物政治家の元秘書はいう。多くの国民に小沢議員のこの説明はどう映ったであろうか、
この裁判は法改正の必要性を改めて印象づけた。
小沢議員の裁判でさらに特筆すべきは、訴追側の指定弁護士がよりどころとする検察捜査のずさんな実態が次々に明らかになったことだ。
東京地裁は、石川議員らに対する検事の取り調べを「虚偽供述に導く危険性の高い違法・不当な捜査」と断じ、小沢議員との共犯部分の供述の多くを証拠から排除した。石川議員ら元秘書3人に有罪判決を言い渡した裁判でも、供述調書の多くは証拠から排除されており、検察は抜本的な捜査改革を迫られることになる。
公判では、検察審査会の1回目の起訴相当議決を受けた検察の再捜査で、任意の取り調べを受けた石川議員がその場で語っていない事実が記載された検事の捜査報告書の存在も、隠し録音で発覚した。この報告書は検察審査会に提出されており、小沢議員側が「検察審査会の審査員を重大な錯誤に陥らせた」などとして公訴棄却を求めた。
小沢議員の裁判で明らかになった捜査の問題点は、大阪地検の証拠改ざん・犯人隠避事件で指弾された検察組織の病弊と根を同じくするものだ。検察は徹底捜査で事実を明らかにし、改革に生かすことが求められる。
さて、小沢氏は有罪なのか、無罪なのか。それとも、公訴棄却なのか。
陸山会の土地購入資金4億円を小沢議員が提供し、それが代金支払いにあてられたこと、その直後に石川議員が政治資金をかき集めた別の4億円を預金担保にし、小沢氏が同額の銀行融資を受けて陸山会に貸し付けたこと、計8億円のカネが陸山会に入ったのに収支報告書には片方の4億円しか記載されていない――という客観的事実はある。
「石川議員の引き継ぎで、収支報告書のあと処理を小沢氏に報告した」とする池田光智元秘書の調書も証拠採用されている。
法曹関係者の間では、政治家を安全地帯に置く政治資金規正法の構造や、共謀を証明する証拠が希薄なことから、疑わしきは罰せずの原則に立って小沢氏を無罪にすると予想する声も多い。
その一方で、間接事実と池田調書などから、共謀を認めて有罪判決を導けるという声もある。
石川議員の犯行は、小沢議員との「主従」関係から、小沢議員の了解なしには行われるはずがない。「偽装」の装置である4億円の預金担保融資に小沢議員は直接かかわっている。裁判所が証拠採用した供述調書と客観的な事実で石川議員の共謀を認定するのは十分に可能――との指定弁護士の主張に合理性があると受け止めているからだ。
これに対し、小沢弁護団は最終弁論で土地取引をめぐる石川議員の行動を以下のように説明した。
石川議員は当初、小沢議員から受け取った4億円で土地代金を決済しようと考え、小沢議員もそうするものと受け取っていたが、石川議員は先輩議員の示唆を受け、その4億円を担保に銀行から同額の融資を受けて土地代金を払おうと考え直した。急遽、銀行と折衝し、代金決裁当日の朝、小沢議員の自宅に融資関係書類へのサ
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