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国外資産は課税当局にはわからない?

伊藤 剛志

 国際的な脱税や税逃れを摘発する体制整備が急ピッチで進んでいる。日本の課税当局も、海外当局と協力して納税者の国外資産を把握することが可能になり、少なくとも、スイスの銀行に預けておけばバレない、という状況ではなくなった。最近の課税当局による国外資産の情報取得システムについて伊藤剛志弁護士が詳細に解説し、適正な税務申告と納税を呼びかける。

 

国外資産は課税当局にはわからない?

西村あさひ法律事務所
弁護士・NY州弁護士 伊藤 剛志

 ■ はじめに

伊藤剛志弁護士伊藤 剛志(いとう・つよし)
 弁護士。1999年東京大学法学部卒。司法修習(第53期)を経て、2000年に弁護士登録。2007年ニューヨーク大学ロースクール(LL.M.)修了(Arthur T. Vanderbilt奨学生)。2008年ニューヨーク州弁護士登録。現在、西村あさひ法律事務所・名古屋事務所代表。金融取引および税務を中心に担当。レポ取引に係る源泉徴収税を巡る税務訴訟を始め、様々な税務調査・税務争訟に関与・助言している。

 先日、弁護士会の委員会に出席した折、ある弁護士さんが、次のようなことをおっしゃっているのを耳にした。

 「日本人がスイスなどの海外の銀行に預金を持っている場合には、日本の課税当局には、その預金の存在はわからない。日本の金持ちの中には、スイスなど海外にある銀行に資産を預けて日本の課税当局から資産を隠し、日本の税金を免れている者がいるのではないか」

 この弁護士さんがおっしゃったようなことは、世間一般の人々が抱いているイメージに近いものではないだろうか。確かに、納税者の資産が日本の主権が及ばない地域にある場合には、租税の徴収・執行について様々な困難と問題が生じる。しかしながら

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