2012年07月22日
▽この記事は2012年6月30日の朝日新聞朝刊に掲載された原稿に加筆したものです。
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訴えていたのは、浜田正晴さん(51)。2007年6月、上司が取引先から相次いで社員を引き抜こうとしたことを問題視して社内の「コンプライアンス室」に通報し、同年10月に配置転換されたことから提訴した。昨年8月の二審判決は(1)内部通報は正当なものだったのに、上司は制裁的に配転を命じた(2)配転は「内部通報者に不利益な処遇を行ってはならない」とする社内規定に反する――などと認めた。
この決定により、「浜田さんが、オリンパス株式会社ライフ・産業システムカンパニー統括本部の品質保証部システム品質グループにおいて勤務する雇用契約上の義務がないことを確認する」とした東京高裁判決が確定した。
記者会見した浜田さんは時折ハンカチを目にあてながら、「司法を信頼してきてよかった。会社でなく、会社の『闇』と闘ってきた。これからは普通のサラリーマンとして、楽しく安心して働けるオリンパスにしていきたい」と話した。オリンパス広報IR室は「主張が受け入れられず残念。今後の対応については、今回の決定を厳粛に受け止め検討する」とのコメントを出した。
浜田さんと弁護団の記者会見でのやりとりの一問一答は以下の通り。
■「国民の利益・権利を守るベースとなる公益通報制度に」
浜田氏:オリンパス内部通報関連の裁判で、会社側が最高裁に上告しておりましたが、きょう、上告、上告受理申し立て、両方とも棄却ということで、私の勝訴が確定したという連絡を受けまして、大変ありがたいとともに、ここまで長い長い戦いを、一人で、自分の愛するオリンパス株式会社、オリンパスグループと戦ってきて、本当に改めて、我が国の司法を信頼しながら戦ってきてよかったというふうに感じてます。そして、もう一つの側面としては、ただ単に、普通に社内のコンプライアンス通報窓口に通報した、正直に会社の本当にためを思って通報しただけなのに、なぜこのような厳しい戦いを強いられるのか。おそらく私以外にも、このような状況に遭っている全国の真面目に働く方々、また、その制度で悩んでいる経営者の方々、たくさんいらっしゃると思います。そういう意味で、正直に普通にしたことがここまでやらなければいけないということそのものの制度は、やはり今後、いろんな方々が、本当に自分のことのように考えて改正をしていただき、この国を高めるという意味で、国民の利益・権利、これを守る基本的な、ベースとなる公益通報制度にしていっていただかなければいけないということを強く認識しました。
特に、このオリンパスのオリンパスブルー、このいつも、今でも厳しい状況で会社に通い続けている中ででも、これを胸にぶら下げていることによって、揺るぎない愛社精神を貫いてよかったと思うとともに、今回、損失隠しの件で、大変厳しい状況に陥ってるオリンパスを、私は、現在の心境としては、新しい経営陣と共に、私の力を発揮して、何としてでもオリンパスを再生したい、再生させたいというふうに思っております。会社は昨日、定期株主総会を行いまして、私は株主として出席し、この件に関して質問もしましたが、残念ながら、昨日行われた株主総会においては「裁判中であるからコメントできない」ということで、これまで同様、本当に真面目に働くオリンパスの全ての社員、特にオリンパスを支える何ら権力も持たない一般的な社員の方々に私の件をずっと隠し続け、きのうまでも、株主の皆様にも、透明性を高めてオリンパス、通報制度、内部通報制度を改善しなければいけない、改善しているんだ、と言いつつも、私の件だけは、先ほど申し上げたように全ての国民の皆様に隠蔽し続けてきた、裁判になっているのに。こういう姿勢では、オリンパスは絶対に再生できない。ですから、私は笹宏行社長と木本会長、並びに藤塚英明コーポレートセンター長・取締役専務執行役員、この新しいオリンパスを支える経営者と共に、私の力を、このオリンパスのコーポレートガバナンス、内部統制、いわゆる誰からも愛されるこのオリンパスブランド、このために協力して歯を食いしばって頑張っていきたいと思ってます。
そこで私はその思いを託して、この本も出版させていただいて、『オリンパスの闇と闘い続けて』。これも、やはり光文社のほうから出しましたが、このオリンパスを愛するブルーでやってくれということで、このオリンパスと闘うのではない、オリンパスの闇と闘って、オリンパスを本当にオリンパスブルー、これをやっぱり取り戻していきたいという思いで、この本に、私の裁判過程を含めて、苦しい闘いを綴らさせていただいたので、やっぱりこれはいろんなオリンパスの社員にも役員にも、皆さんに読んでいただきたいというふうに思ってます。
それで、最後に、勝訴をしたからといって、別に誰を批判しようが、私を苦しめた方たちを批判しようが、何の解決にもならないので、私はあくまで、私が最初ここでこの場で何回も最初から申し上げているように、公益通報者保護法、これの国会決議に基づいた5年目の見直し、というところに、消費者庁の皆様、消費者委員会の皆様、あと関係者の皆様とともに、この法律がやはり理念通り、社会正義・人権擁護、これに資する形の本当の優しい実効力のある法律になるように、これからも新たな気持ちで尽力していきたいというふうに思っています。
本当にきょうは急に勝訴確定連絡をいただいたので、何を言っていいか、頭の中で整理ができておりませんが、やはり私はオリンパスの一員として、もう一度私の後輩たち、先輩たち、そういう方々と、本当に普通に、普通のサラリーマンとして、和気あいあいとオリンパスの中で、楽しく安心して働けるオリンパスにするために、オリンパスグループ全員の皆様と一緒にやるべきことをやっていきたいと。自分で考えて、やるべきことをしっかりとやっていきたいというふうに思ってますので、これからも国民の皆様には、オリンパスのカメラも含め、内視鏡も含め、オリンパスの全てのプロダクト(製品)に対して本当によろしくお願いしたいというふうに思っております。
簡単ではありますが、以上でご挨拶とさせていただきます。
■質疑応答
――男性記者:日経新聞の朝倉です。改めてなんですけれども、現在の職場での仕事の状況と、それから今回の確定判決を受けて、会社にどういうようなことを求めていきたいかということを伺いたいのですが。
浜田氏:端的に言いますと、職場の状況は、行っても、まともな仕事は何も
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