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東電、鉛カバー被曝隠しで下請け作業員への「再教育」を元請けに指示

7月27日、東電本店記者会見詳録

 放射線被曝の線量を測る個人用の線量計を鉛の板で覆って福島第一原発構内で働いた5人の労働者について、東京電力の松本純一原子力・立地本部長代理は7月27日の定例記者会見で、今後は放射線管理区域での作業を行わせないようにするため、放射線業務従事者の登録を解除すると明らかにした。また、この作業を元請けした東京エネシスに対し、下請け会社の作業員を対象にした「再教育」を行うように指示したとも述べた。元請け会社が下請け会社の労働者に直接の指揮命令をすることは法令で禁じられている。

 

 松本本部長代理によると、27日、東京エネシスから「鉛カバー」の問題に関する中間報告があった。それによると、実際に鉛カバーを装着していたのは下請け会社「ビルドアップ」の作業員9人のうち5人で、残りの4人は装着を拒否し、結果として当日の作業には従事しなかったという。動機は「数字を低く見せようと思い至った」というものだった。鉛カバーを装着していた作業員とそうでない作業員の放射線量の差は、最大0.39ミリシーベルトだった。鉛カバーの使用は1日限りでやめ、カバーは発電所構内の廃材置き場に捨てたと説明しているという。

 東京電力は、この報告に「こういった不適切な行為が許されることではない」と非難し、東京エネシスに対し調査を引き続き継続し、報告するなど4点の指示を出したと発表した。

 鉛カバー問題についての記者会見の説明と、質疑応答の主な内容は以下のとおり。

 ■東京エネシスによる中間報告

 松本代理:月曜日にご説明させていただいております、福島第一の発電所内で工事にあたっている方が個人線量計(APD)に鉛のカバーをつけたという件に関しまして、本日東京エネシスさんの方から中間的な報告を私どもが受けましたので、その内容につきまして改めて皆様にご説明させていただきます。

 まず、事実関係の確認でございますけれども、昨年の12月1日になりますが、旧事務本館の脇にございます淡水装置の保温材を凍結防止対策の一環で取り付け作業を行っていたビルドアップ社さんの作業員の方でございまして、当日働いていた方9名のうち、5名の方が個人線量計を鉛のカバー覆ったということに関しまして、聞き取り調査の結果、認められております。また残りの4名の方に関しましては鉛のカバーは着けていないということでございます。この当該工事に関しましては全員で14名の作業員の方が作業上登録されておりますけれども、うち2名の方は12月7日以降作業に入った方でございまして、今回の取り付け、12月1日の時点ではまだ作業員としては登録されていないという状況です。それから3名の方に関しましては、当日Jヴィレッジでこちらの作業責任者の方から鉛のカバーを取り付けるということに関しまして指示を受けたところ、「そういったことはできない」ということで、拒否をされて、その作業にはされず、当日はそのまま帰宅されたということでございまして、この3名の方は鉛のカバーをつけていないという状況でございました。従いまして14名のなかで、5名の方がカバーをつけていた。実際の作業行ったかたでは9名のうち5名という状況でございます。

 それから当日の線量の実績でございますが、鉛カバーを装着した5名の被ばく線量に関しましては、1.18から1.38ミリシーベルト、鉛のカバーをつけていない方4名の被ばく線量は、0.33から1.69ミリシーベルトという状況でございまして、特に鉛のカバーを着けた方と着けられなかった方で大きな著しい差はなかったというふうに考えております。なお、着けなかった方で0.33という方がいらっしゃいますが、こちらの方は当日作業現場に到着したのが遅れまして、実質上ほとんど作業をされていないという状況でございました。そのかたをのぞく、3名のかたを比較致しますと、0.93から1.69という状況でございます。それからガラスバッジとの比較でございますけれども、これまで私どもがもっとおります当該の作業員のかたのAPDの積算値とガラスバッジの差を見ますと、最大でも0.39ミリシーベルトでございまして、著しい差はなかったというふうに考えております。こちらのかたはAPDの指示値が13.31ミリシーベルト、ガラスバッジでは13.7ミリシーベルトというような状況で、0.39ミリシーベルトの差があったというような状況でございます。

 なお動機でございますけれども、この作業責任者のかたが、現場が線量が高いので、今回初めて作業するかたもいるので、数字を低く見せようということを思い至ったということで11月30日、この作業責任者と作業員3名で鉛カバーを12個製作したということだそうです。こちらに関しましては当日装着いたしましたけど、コの字型で作業中にずれるですとか、実際に着けた人と着けない人の差がなかったということで、1日限りで使用をやめまして、12月2日になりますけれども、翌日に5・6号機側のございます廃材置き場、廃材捨て場のところに廃棄したという状況にございます。なお、この廃棄した鉛カバーにつきましては、労働基準監督所の了解のもとに東京のエネシスさんが捜索致しましたけれども、なにぶんゴミ捨て場でかなりの物量がございますので、現在の時点では鉛カバーの発見には至っておりません。以上の報告を受けております。

 それから東京電力としての対応でございますけれども、私どもと致しましては、こういった不適切な行為が許されることではないと思っておりまして、本日東京エネシスさんに対しまして、口頭で4点の指示を行っております。1点目は東京エネシスさんが元請けでビルドアップ社さんが行った全ての作業を、それから作業に従事した作業員の方の被ばく線量に関しまして、もう一度今回の事案を含めて再評価するようにということが1つ。2点目は東京エネシスさんが元請けとなっております作業の中の各協力企業さんに対しまして、類似の不適切な事例がないかという一斉点検を行うということと、個人線量計の適切な使用に関する仕組みを立案して実行すること。3点目にビルドアップ社さんの作業員のうち、法令遵守の観点から放射線管理上の遵守事項に対して再教育を行うこと。4点目では、東京電力が今後実施する調査に協力するということと、東京エネシスさんが行う引き続き行っている調査結果については報告してほしい、という4点につきまして、東京エネシスさんのほうに本日指示をしたところです。なお、鉛カバーをつけた5名のかたに関しましては、管理区域内の作業を行わせないということで、従事者の登録の解除の手続きに入っております。本件に関しましては以上でございます。

 ■質疑応答

 男性記者:すいません東京新聞のモリノと言います。今日厚生労働省のほうで記者会見がありまして、下請けの作業員の男性が、多重派遣構造のもとで問題があるということで東京の労働局と長崎の労働局にそれぞれ下請けの企業何社かを相手に取って申し出たということが発表があったんですけれども、この点について元請けの東京電力さんとして事実をどのように把握されているのかということと、会見の中で弁護士が「東電さんのほうとしても責任があるはずで、会社のほうにも是正を求めたい」というふうに説明されたのですけれど、この指摘についてはどのように対応されるおつもりなのか伺います。

 松本代理:厚生労働省さんで行われた会見についてはちょっと承知しておりませんですけれども、まず1点目ではこういった鉛カバーの話にしろ、雇用契約の賃金の支払いですとか、雇用の形態については法令を必ず遵守してほしいということで私どもとしては元請け企業さんのほうにお願いはしておりますし、契約書上もそういった契約の形態になっています。したがいまして、今後そういったお話に関しまして調査を進めておりますので、そういった事実関係が確認されましたら発注者としてとるべき対応はしたいというふうに思っております。それから2点目でございますが、やはりひとりひとりの労働者、作業員のかたに関しましては、やはり実際に自分が結んだ雇用契約、労働条件と実際に払われる賃金ですとか条件が違うというような場合には、私どもの契約窓口のほうに連絡してほしいということでJヴィレッジさん等にはポスター等で掲示してありますのでもしそういった条件が変だという話があれば、直接当社のほうご連絡いただきたいというふうに考えております。

 男性記者:当該の元作業員のかたが労働局に訴え出たという事実は把握されているということですか?

 松本代理:報道を通じて知っておりますけれども、実際どういったことになっているかについては現在元請企業を通じて調査を進めております。

 男性記者:調査というのは、報道を通じて事実を把握したことによって、調査を始めたということでいいのですか。

 松本代理:動き始めたかっていうような状況でございます。

 男性記者:そうですね、調査を始めたきっかけというのは何かありますか。

 松本代理:そういった意味では報道を通じてそういったことがあるということになりましたので、実際に始めておりますけれども、以前からは法令の遵守に関しまして元請企業さんに周知徹底をお願いしているところです。

 男性記者:わかりました、ありがとうございます。

 ■「鉛カバー装着拒否の3人はいわきまで送った」

 男性記者:読売新聞の三井といいますが、鉛カバーの件で基本的なことで恐縮なんですけど教えてほしいのですが、5人の方が鉛カバーをしていて、してない人が4人いて、4人のうち一人は作業をされなかったというのは車に乗り遅れたのですか。

 松本代理:乗り遅れたと言いますか、少し細かい話をさせていただきますけれども、Jヴィレッジで鉛カバーの着用を拒否された3名のかたをいったんいわきの方まで送っていきましたので、このかた一名は実際現場に到着するのが出遅れています。従いまして作業現場に実際到着した際にはほとんど当日の作業は終わっていたというような状況です。

 男性記者:一人は作業をしていなくて、鉛カバーをした5人と鉛カバーをしていない3人を比べると、その差があんまりないということで、先ほど効果がないので一日だけで着けるのをやめたと会社の人がおっしゃったというのは、これはこの5人と3人を比較した結果としての判断ですか

 松本代理:はい、そうです。

 ■ガラスバッジとAPDの違い

 男性記者:ガラスバッジというのはそれは10月1日から12月30日までの積算線量で比較されたということですけど、ガラスバッジというのはリアルな値、その刻刻の値というのは読めないものなんですか。

 松本代理:はい。刻刻日々の管理は、APDの方は数字で出ますけれども、ガラスバッジのほうは所定の処理をしないと読めませんので、日々というよりもある程度の一定期間の積算線量という形で計測する特性があります。

 男性記者:被ばくの労働管理というのはどちらの数字をもとにやるのですか

 松本代理:基本的には日々の管理をAPD、トータルの被ばく線量はいくつですかという管理の仕方ではガラスバッジを使います。毎月月末になりますと厚生労働省さんに提出する線量の分布をお示ししますけど、そちらのほうはガラスバッジのほうを正にして、集計をしています。ガラスバッジの現像結果が出るまでの期間はAPDのほうで仮集計をしているという状況です。

 男性記者:そうしますと1年で最大で50とか目安として20とか数字がありますけど、その管理場合の労働管理はガラスバッジのほうで行うということなんですか。

 松本代理:ガラスバッジとあとホールボディで計測する内部被ばくの線量の合計値ということになります。

 男性記者:そうしますとAPDでこれを鉛カバーをつけたとしても、なんか本質的な意味がないような気がするんですけど、どうなんですか?

 松本代理:はい。ほんとにですね、被ばく線量をごまかすといいますか、操作するという意図があればですね、APDのほうとガラスバッジのほうの両方を何か細工するなりどっかに置いてくるというようなことが必要になりますけれども、今回の範囲ではAPDのみに鉛カバーをつけて、ガラスバッジのほうには何もしいないような証言が得られています。それがどこまで、なぜガラスバッジを(細工)しなかったのかというところまでは聞き取れておりません。

 男性記者:わかりました。それを受けて東電としての対応なんですけれども、一つは鉛カバーをしていた5人の従事者の解除手続きを今しているということなんですか。

 松本代理:はいそうです。

 男性記者:完了はしていないんですか。

 松本代理:もう手続きに入っておりますので、実際に業務に従事することはないと思いますけれども、最終的な確認、手続きが終わったかというのはちょっと確認させてください。

 男性記者:わかりました。それと元請けに何か指示されたというのをもう一度おっしゃっていただいてもよろしいですか。

 松本代理:はい。元請企業さんのほうに今回東京エネシスさんになりますけれど、指示されたのは4点ございます。1点目は東京エネシスさんが元請けでビルドアップ社さんが行った全ての作業を、それからその作業に従事した作業員のかたに関しましては、今回の事案を含めてもう一度線量の再評価を行ってほしいというのが1点。それからエネシスさんの他の協力企業さんに関しましては類似の不適切な事例がないかということで一斉点検をするということと、合わせて個人線量計の適切な使用を確実にするような仕組みを立案して実行するというのが2点目。3点目はこちらはビルドアップ社さんの放射線業務従事者の全員に対しまして再度法令遵守の観点からの放射線管理上の遵守事項に関する再教育を行うこと。4点目が東電が実施する調査に対して協力するということと東京エネシスさん自身が行う調査結果については東京電力のほうに報告するようにという4点でございます。

 男性記者:すいません、3番目の法令遵守の再教育というのは東京エネシスがどこに対して再教育するんですか。

 松本代理:東京エネシスさんがビルドアップ社さんの放射線業務従事者に対して実施します。

 男性記者:元請けが下請けに対してやるということなんですか。

 松本代理:はい。

 男性記者:はい。わかりました。

 男性記者:すいません、読売の三井ですけど、ちょっと細かいことで恐縮なんですけど、さきほどのガラスバッジで最大の差が出たという0.39ミリシーベルトの方というのは、これは先ほど鉛カバーをしてた5人のかたが該当しているという理解でよろしいのでしょうか。

 松本代理:はい、そうです。

 男性記者:では、鉛を装着した5人の中で、ガラスバッジとAPDで差があるのが最大の人が0.39ということでよろしいのでしょうか

 松本代理:はい。そのかたがいます。

 男性記者:わかりました。それと、ガラスバッジの積算の期間は10月から12月でよかったのでしょうか。

 松本代理:10月1日から12月31日の3カ月間です。

 男性記者:それとすいません。責任者というの人は、先ほど5人の人が責任者と一緒に乗ってたから着けたのであろうけれども、残りの人が違う車だったのでということでしたけど、この責任者というのは作業をせずに別のところでいるだけなのでしょうか。

 松本記者:その現場のところにはおります。8プラス後から1人来ましたけど、8人と一緒にいます。

 男性記者:ということは、今の5人とか4人とは別の、別枠の数字として……

 松本記者:違います。車に乗った5人の中の1人は作業責任者で、残り4人が部下になります。

 男性記者:ということは、鉛をつけた5人のうち1人が責任者ということなんですね。

 松本記者:そうです。

 男性記者:Jヴィレッジで着用指示したのもこの責任者なんですか。

 松本記者:はいそうです。

 男性記者:わかりました。それとこの差はあまりないというのは、これは5人と3人というのはほぼ同様の被ばくするような作業をしていたということでよろしいですか

 松本代理:はい。基本的には配管に保温材を巻きつける作業でございますので、多少体の向きですとか実際におもにその配管に巻きつけるような作業をやっていた人なのか、補助的に保温材を渡すような人なのか、針金で留めているような人なのかという作業の分担は少しありますけれども、環境としてはほぼ一緒ですので、あまり差としては認められておりません。

 男性記者:この記事を見ると資材の運搬などをしてたという記述もあるんですけど、それは保温材の運搬とかそういうことですか。

 松本代理:はい。運搬です。

 男性記者:はい、わかりました。

 松本代理:それから三井さんの質問で1点訂正させてください。ガラスバッジを正にするかAPDを正にするかについては、これは協力企業さんごとに違います。それで東京エネシスさんに関しましては、APDの積算値を正の値として集計して、放管手帳に記入していくということだそうです。

 男性記者:では、APDが低ければAPDの値で年間20とか50とかに対応する数字をつけていることになるんですか。

 松本代理:はいそうです。

 男性記者:わかりました。

 ■「作業時間は3~4時間」

 男性記者:朝日新聞の今と申します。鉛カバーの件なんですけれども、今回実際にその鉛カバーをつけて作業したのは12月1日の一日だけしか確認できてないということでしょうか。

 松本代理:はい。これは聞き取りの調査の結果ですけれども、11月30日の当該の鉛のカバーを12個製作しています。翌12月1日に装着して、効果がなかったということで12月2日には廃棄したというふうに聞いてますので、実際にそれ(鉛カバー)を入れて作業をしたのは12月1日一日限りというふうに考えています。

 男性記者:完全な一日限りで、そのほかの日に何か使ったということはないと受けたのか、まだそれは、そのほかの日のことは調査中ということなのか、どちらなのですか。

 松本代理:現時点では一日限りということで聞いておりますけれども、今後聞き取り調査を引き続きやっておりますので、その中で新たな事実が出てくればまたご説明したいというふうに思います。

 男性記者:わかりました。あと今回一日限りということなんですけれども、もっと正確に言うと、かつ今のところ5人という、実際の鉛カバーをつけて作業した人は5人ということになるわけですか。

 松本代理:はい結構です

 男性記者:5人の作業時間というのは確認できますか。

 松本代理:作業時間。そうですね。当時の雰囲気線量が確認できておりませんけれども、雰囲気線量が0.3から1.2ミリシーベルトper hourという状況でございますので、当時働いたとしてもせいぜい2、3時間長くてもその程度ではなかったかと思います。(その後、「作業時間は3~4時間でした」と訂正)

 男性記者:わかりました。ありがとうございます。