2012年08月15日
▽筆者:杉浦 幹治
2010年に実施された公募増資では、公表前に不自然に売買高が急増し、株価が下落するケースが相次いだ。企業が調達できた資金が、予定額を数百億円以上下回るケースも現れた。増資を引き受けていた主幹事証券会社から事前に情報が漏れ、ヘッジファンドが大量に空売りしているのでは、という疑惑が浮上した。
日本の証券市場に対する国内外の信用を落とす事態を重くみた証券取引等監視委員会は昨年8月、増資インサイダーを専門的に調査するため、「国際取引等調査室」を20人規模で新設。調査を本格化させた。
その成果として今年3月、野村証券からの情報でインサイダー取引をしたとして、旧中央三井アセット信託銀行(現三井住友信託銀行)に課徴金命令を出すよう金融庁に勧告。これを皮切りに、監視委は6月までに立て続けに計5件の増資インサイダーに関する勧告をした。
当初、証券会社側の反応は鈍かった。「(増資引受部門と営業部門で情報を遮る)ウォールはしっかりしている」「あくまでグレーで、たいした問題ではない」と、問題を過小評価した。「銘柄名までは言っていない」といった言い訳まで聞こえた。「銘柄名さえはっきり言わなければ、実質的にインサイダー取引になっても問題ない」と言っているのに等しい。
これに対して、監視委の幹部は「情報が漏れない仕組みが外見上あっても、従業員の意識は『それをうまくかいくぐること』にしか向いていない」と厳しい姿勢で臨んだ。
例えば、ウォール一つをとってもそうだった。
「証券会社の営業は『私はウォールの
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