2012年10月02日
▽筆者:朝日新聞編集委員・出河雅彦
▽出河雅彦記者執筆の記事: 医療用ガス取り違え事故の背景に高圧ガス識別色の不統一
▽出河雅彦記者執筆の記事: 急増する精神障害の労災認定「手続き法に不備」
▽出河雅彦記者執筆の記事: 脳死臓器移植で「死因究明のために解剖すべきだった」との意見
はじめに
「郵政民営化」を最優先公約に掲げて首相となった自民党の小泉純一郎氏は、2001年~2006年の政権期間中、「聖域なき構造改革」をキャッチフレーズに、経済活性化のためにさまざまな分野で規制緩和を推し進めた。その推進力となったのが、内閣府に設置された経済財政諮問会議と総合規制改革会議及びその後継の規制改革・民間開放推進会議だった。医療分野も例外ではなく、株式会社による医療機関経営と混合診療の解禁が最大のテーマとなった。解禁派は経済界や一部の経済学者らで、それに厚生労働省や日本医師会などの医療団体が異を唱える、という構図だった。最終的に、株式会社による医療機関経営は構造改革特区における保険外の高度医療に限定して認め、混合診療は例外的に認める範囲を拡大し運用ルールも緩和する、という形で決着した。連載第2回で紹介したように、保険外併用療養費制度が新たに導入されたのである。混合診療解禁をめぐる論争の中で、欧米に比べて新薬の導入が遅いという問題が焦点となり、未承認薬問題を解決するための仕組みがいくつか考案され、今日に至っている。患者のニーズに応えるとともに、新しい薬や医療機器の開発によって経済の活性化を図るというのが一連の制度改革の目標だったが、さまざまな課題も浮き彫りになった。小泉政権下での混合診療禁止原則の緩和は何をもたらしたのか。「解禁」をめぐる論争にさかのぼって、その意味を考えてみたい。
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