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サイバー犯罪条約が発効:情報セキュリティの現状と対応

渋谷 卓司

 パソコンの遠隔操作で他人になりすまし、ネット掲示板に脅迫文を書き込んで警察の誤認逮捕を招いた事件、ネットバンクを悪用して他人の預金を引き出す詐欺事件が相次いで発覚し、多くの市民に衝撃を与えた。情報通信技術の装備が進む企業にとっても、サイバー攻撃の対象になったり、なりすまし犯罪に巻き込まれる脅威は身近なものになっている。元検事の渋谷卓司弁護士が、今月1日、日本でも発効したサイバー犯罪条約の内容を紹介し、軽々と国境を越えるサイバー犯罪に対する捜査の現状と限界を示し、企業は、どう備えるべきかを論じる。

サイバー犯罪条約の概要と課題
    - 情報セキュリティの現状と対応策

西村あさひ法律事務所
弁護士 渋谷 卓司

渋谷 卓司(しぶや・たかし)
 1990年慶應義塾大学法学部卒業、2004年ジュネーブ国際大学(MBA)修了。1992年から2010年まで検事。東京地検特捜部、法務省刑事局(刑事法制課、国際課)、外務省在ジュネーブ国際機関日本政府代表部などで勤務。2010年4月弁護士登録。危機管理・コンプライアンスを中心とした企業法務を主に担当。

 ■はじめに

 最近、いわゆる「なりすまし」によるインターネット掲示板への脅迫的書込みや、インターネットバンキングを悪用し、暗証番号を不正に取得した上で銀行口座から預金を引き出すといった、コンピュータ・ネットワークを悪用した犯罪が相次いで発覚している。多くの企業でICT化が進められている中、こうした犯罪は決して他人事では済まされない。ある日突然

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