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どうする?粒子線治療の保険適用、施設建設

出河 雅彦

 健康保険に費用を請求できない「自由診療」と、健康保険が使える「保険診療」を組み合わせる「混合診療」。厚生労働省によって原則禁止とされてきたが、その政策の妥当性をめぐり、過去10年激しい議論が交わされてきた。禁止原則の適法性を問う訴訟も起こされ、自由診療と保険診療の併用を認める範囲は少しずつ広げられてきた。医療を受ける国民にとって、この変化は何を意味するのか。朝日新聞の専門記者がAJ連載「混合診療の将来」で追う。その第6回。(ここまでの文責はAJ編集部)

出河 雅彦(いでがわ・まさひこ)
 朝日新聞編集委員。1960年生まれ。92年朝日新聞社入社。社会部などで医療、介護問題を担当。2002年から編集委員。医療事故や薬害エイズ事件のほか、有料老人ホームや臨床試験について取材。「ルポ 医療事故」(朝日新聞出版)で「科学ジャーナリスト賞2009」受賞。

 2004年12月の厚生労働大臣と規制改革担当大臣による「いわゆる混合診療問題に係る基本的合意」(以下、両大臣合意と言う)以降、保険導入される先進医療の件数は増えている。「必要かつ適切な医療は基本的に保険診療により確保する」と明記された両大臣合意に沿った制度運用がなされており、財政的理由から新しい医療技術の保険導入が抑制され、経済力によって受けられる医療に差が出るのではないかという懸念は、いまのところ現実化していない、とこれまで述べてきた。しかし、例外がないわけではない。今回は、長い間先進医療として実施されてきて、関係学会が保険導入を要請しているにもかかわらず、財政負担の増大を主な理由として公的医療保険の対象となっていない医療技術を取り上げる。

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