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餃子と芋煮会がある宇都宮から東京に新幹線通勤、その効用

新幹線通勤のススメ?

アンダーソン・毛利・友常法律事務所
弁護士 内田恵美

内田 恵美(うちだ・えみ)
 1997年3月九州大学法学部卒業、1999年3月同大学大学院公法学研究科終了、司法修習(53期)を経て、2000年10月第二東京弁護士会に弁護士登録、現事務所に入所。

 新幹線通勤

 もう10年以上、栃木県宇都宮市に居住し、新幹線通勤を続けている。

 他人に「宇都宮から新幹線で通勤しています。」と話すとほぼ必ず驚かれ、「大変ですね。」と言われる。(但し、夜、事務所から東京駅までタクシーに乗ってその話になった場合には、「自宅まで送りましょうか?」と冗談で宇都宮までの乗車を勧められるか、「(静岡県の)三島まで客を乗せたことがある」などと最長どこまで運転したか、というタクシーの運転手さんの自慢(?)話になるのが常である。)

 以前は、事務所からタクシーで10分で帰宅できる場所に住んでおり、片道約1時間半の通勤は、その頃に比べると確かに利便性では劣る。

 しかし、良い面もある。

 まず、何より、座って通勤できる。特に、朝は、宇都宮駅の一つ手前(下り方向)の那須塩原駅始発の列車(なすの)が比較的多く走っているし、仙台駅始発の列車(やまびこ)も宇都宮駅に到着するまでに満席となることは、大きな地震などがあり、ダイヤが大幅に乱れるという特別の事態が発生した場合を除いては、まずない。従って、自由席を利用しても、ほぼ確実に座席を確保できる。帰りは、始発駅の東京から乗車するので、やはり、座れない事は、まずない。

 新幹線の中での片道約1時間(往復では2時間)、座席を確保できれば、それは、自分のためだけの時間を確保できることになる。

 子どもを持ち、フルタイムで働いている女性であれば誰でもこなしていることであり、従って特筆すべきでないことは承知しているが、私には二人の子どもがおり、朝は、子ども二人を起こし、ご飯を食べさせ、身支度させ、車で保育所に連れて行き、先生に引き渡して・・・と、あわただしく過ごしているので、新幹線の中での片道約1時間(往復約2時間)の自分の時間は貴重である。

 通勤時間の使い方

 朝の新幹線では、普段は、まず新聞を読む。朝、家を出るときに郵便受けから取ってきた新聞を新幹線の座席で広げて読む。全体に目を通し、気になったニュースについてあれこれ考えたりしていると、乗車時間の半分くらいは過ぎてしまう。

 そのほかには、「事務所に着いたら、まず、この案件のこの作業をして、次は、あの案件のあの作業をして・・・。」と一日の仕事の大体のスケジュールを立てることに時間を使っている。もちろん、依頼者から急な連絡が入ることもあるし、交渉事など相手方のある案件もあるので、自分が立てたスケジュールどおりに一日が進まないこともある。それでも、効率的に作業を進めるためには、朝、一日のスケジュールを考えておくことは有用である。

 帰りの新幹線では、自宅に帰ってからの作業の手順を考えている事が多い。うちの子どもたちは、同じ保育所に通う園児たちの中でも迎えに行くのが最後の方になる事が多い。それでも、基本的には機嫌良く待っているが、おなかがすいていたり、疲れていて眠かったり、時には他の園児が早く帰るのを見ていて寂しくなったりして、機嫌が悪いこともある。一日の中での子どもとの限られた時間を、お互いに(親子共に)できるだけ気持ち良く過ごすため、また子どもが寝たあとの時間を確保するため、保育所で子どもたちをピックアップしたら、如何にして、素早く自宅に連れ帰り、スムーズに食事をさせ、風呂に入れて、寝かし付けるか、ということには結構気を遣っている。

 また、守秘義務の問題があるので、新幹線の座席で仕事の作業自体をする事は避けているが、夜、子どもを寝かせた後に自宅で仕事をすることはある。そのため、帰りの新幹線の中で、自宅でする仕事の手順や作業内容について考えていることも多い(例えば、「まずあの件のメールを送ろう・・・こういう風に書けば分かりやすいだろう。それが終わったら、この件の書面に手を入れよう・・・。」等と考えているとすぐに宇都宮駅に着いてしまう。)。

 他には、本を読んだり、ぼーっと考え事をしたりしていることもある。新幹線の規則的な振動や音は、心地良く、眠気を誘われることも多々あるが、考え事をするのにも適していると思う。

 往き又は帰りの新幹線で、遠距離通勤仲間に会うこともある。宇都宮在住で東京の職場に新幹線で通勤している女性は、意外と多いように思う。うちの子どもを通わせている保育所には、私以外にも東京に通勤している母親が複数名存在するし、市が運営するファミリー・サポート・センターの事業(保育所の送迎、保育所送迎前後の子どもの預かり等の援助を受けたい依頼会員が、センターの仲介を受けて同援助を行う提供会員から援助を受けることができる。)で以前うちの子どもを担当して頂いていた援助会員の女性も、定年まで宇都宮にあるご自宅から東京都内の勤務先に通勤した経験を持つ方であった。宇都宮市在住で、うちの子どもと同じ年齢の二人の子どもを持ち、東京に職場があって新幹線通勤をしている友人もおり、彼女と新幹線の中で偶然会ったときには、大概、他愛のない子どもの話をすることになる。そうすると、あっという間に東京駅(又は宇都宮駅)に到着してしまう。

 このように、新幹線での通勤は、人によっては時間のロスでしかないと感じるかもしれないが、自分の時間を確保して、その日の予定を立てたり、リフレッシュしたりすることができる貴重な時間でもある。特に仕事と家事と育児という三足のわらじを履く働く母親にとっては、有用であり、利点も多いと理解している。

 職場のハラスメントと芋煮会?

 ところで、遠距離通勤は(有用でも)必ずしも楽ではないが、宇都宮(郊外)に住む楽しみもある。私の住む宇都宮は、餃子を前面に押し出した街づくりに取り組んでおり、毎年、11月3日の連休の頃には、餃子祭りが行われている。当日は市内の餃子店が出すテントで、1皿100円といった、通常よりも安い価格で餃子を食べることができる。会場付近を通りかかると、ビールの入った紙コップを片手にしたお父さんと紙皿の餃子を食べつつ歩く子どもたち、二人同じようにリュックを背負い、紙皿を手にして並んで歩く高齢の夫婦など、微笑ましい風景を目にすることもある。

 また、これは、宇都宮に限ったことではないが、自宅から車で少し行けば田んぼが広がっていたり、川の土手があったりするので簡単に自然を楽しむことができる。例えば、夫の職場では、毎年秋に、「芋煮会」という催しが行われている。所属する課の従業員(希望者のみ)とその家族が参加して、東北地方の伝統的行事である「芋煮」を行うのだ。大体は、鬼怒川の土手に集まって、炭で火を起こし、大きな鍋で豚肉を使った味噌味の仙台風芋煮と、牛肉を使ったしょうゆ味の山形風芋煮を作り、参加者みんなで分け合って食べる。子どもたちは、芋煮が完成するまでの間、川でメダカを獲ろうとあれこれ試したり(そう簡単には獲れない。)、草原の土手をダンボールのそりで滑り降りたり(3~4人でダンボール1枚に乗るので、両端に乗った子は体のほとんどがダンボールからはみ出している。)して楽しんでいる。

 私は、仕事では、人事労務関係の案件を中心に担当している。昨年(平成24年)1月に厚生労働省の「職場のいじめ・嫌がらせ問題に関する円卓会議ワーキンググループ」から職場のいじめ・嫌がらせ問題に関する報告が公表されたところであるが、依頼者から、職場のハラスメントに関係するご相談を受けることも増えてきており、この問題が社会問題化していることを実感している。もちろん、その原因は様々であり、表面的な議論をしても意味がないが、コミュニケーションの不足がトラブルを生じさせることもあり得ると思う。昨年秋にも、上記の「芋煮会」に参加したが、このような場で仕事の仲間と和気藹々と過ごす時間は、職場のコミュニケーション不足を補う場となり得るのかも知れない、いや、そもそもコミュニケーション不足に陥っている職場では「芋煮会」などに参加する人はいないか、嫌々参加することになるのか、などとつらつらと考えた次第である。

 最後に

 新幹線通勤と宇都宮(郊外)での暮らし、という一般的にはあまり参考にならない話になってしまったが、これからも通勤時間等を有効に利用し、リフレッシュした気持ちで日々仕事に取り組みたいと思う。

 内田 恵美(うちだ・えみ)
 1997年3月九州大学法学部卒業、1999年3月同大学大学院公法学研究科終了、司法修習(53期)を経て、2000年10月第二東京弁護士会に弁護士登録、現事務所に入所。
 国内企業、外資系企業の人事、労務に関する案件(雇用契約、就業規則の作成、賃金、退職金制度の改定、労働者派遣・業務請負、セクシュアル・ハラスメント、パワーハラスメント、解雇その他雇用契約の終了に関するアドバイス、訴訟、仮処分、労働審判等の使用者側代理等)を中心に、幅広く企業法務の案件を取り扱う。
 主要な著作として、「女性雇用実務の手引き」(新日本法規 2008年~2013年)(共著)、「相談室Q&A(海外法人の管理職が日本国内に出向してきた場合、労働時間管理はどのように行えばよいか)」(労政時報No.3840 2013年2月22日号)、「相談室Q&A(裁判で解雇が無効とされた場合、損害賠償義務は必ず生じるのか)」(労政時報 No.3812 2011年12月23日号)、「The Littler Mendelson Guide to International Employment and Labor Law」 (Japan Chapter) (Lexis Nexis 2008年、2009年)(共著)等がある。