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オリンパス粉飾事件論告、菊川元社長「10年で14億円の役員報酬」で懲役5年求刑

 1100億円に上る損失を隠蔽して決算を粉飾したとして証券取引法違反などの罪に問われたオリンパスと同社の菊川剛・元社長ら3人の公判が3月26日、東京地裁刑事第104号法廷で開かれ、検察官は、オリンパスに罰金10億円、菊川剛・元社長(72)に懲役5年を求刑した。

  ▽筆者:奥山俊宏

  ▽関連資料:検察官の論告の要旨

  ▽関連資料:検察官の冒頭陳述の要旨

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 検察官の論告によると、オリンパスは1985年ごろから積極的に資産を運用し、その後、バブルの崩壊によって、多額の含み損を抱えるようになった。しかし、当時の経営者の了解のもとで、この損失の大半を公表決算に反映させず、帳簿外に隠す方針をとった。

 刑事事件として検察が立件したのは、2007年3月期から2011年3月期までの各期末の決算の損失隠し。検察官はこれらについて「20年近くの長期間に渡って行われたオリンパスの簿外損失隠しの延長線上に位置する犯行」と指摘した。

 立件された中で粉飾の金額がもっとも大きかったのは2008年3月期の1178億円。「粉飾金額は過去に類例を見いだせないほど巨額である」と検察官は述べた。同期の実際の連結純資産額は2500億円で、粉飾額はその47%に上っているとも検察官は指摘した。

 その上で、検察官は「本件は、我が国の証券市場に対する国内外の信用を大きく揺るがした上、我が国企業のガバナンス自体の信用をも大きく傷つけた」と述べ、「証券市場の信用回復や企業のガバナンスの一層の徹底を図るためにも、本件のような例をみない悪質事犯に対しては、一般予防の見地から、厳罰をもって臨むべきである」と主張した。

 起訴された元オリンパス役員3人の中では菊川元社長に対する求刑がもっとも重かった。その理由として、検察官は「一部上場企業として極めて大きな社会的責任を負っていたオリンパスの最高責任者として粉飾決算の事実を公表して会計処理を正常化させる決断をするべき責任を有していた」と指摘。菊川元社長が2001年6月に社長に就任してから2011年10月に辞任するまでの間に「約13億9860万円もの極めて高額な役員報酬」を受領していると明らかにし、「正当な職務遂行の対価が含まれているとはいえ、この役員報酬は、本件各犯行を含む一連の粉飾決算により自己の地位を保全することによって受領し得たものであるのもまた事実であり、この点も含め、犯情は悪質である」と主張した。