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クラスアクションを起こしにくくする米最高裁判決と日本

宇野 伸太郎

 消費者裁判手続特例法案が4月に閣議決定されるなど日本版クラスアクション(集団代表訴訟)の立法化が進む中、本家の米国では、クラスアクションの承認をより厳格化する連邦最高裁判決が相次いでいる。宇野伸太郎弁護士が、一連の判決のポイントを詳しく紹介し、厳格化の背景などを読み解く。日本版クラスアクション法案の国会審議などで参考にすべき貴重な分析だ。

 

クラスアクション承認基準を厳格化する米国連邦最高裁判決と日本への示唆

弁護士・ニューヨーク州弁護士
宇野 伸太郎

宇野 伸太郎(うの・しんたろう)
 2002年、東京大学法学部卒業。2003年、弁護士登録(司法修習56期)。2010年、カリフォルニア大学バークレー校ロースクール修了(LL.M.)。2011年ニューヨーク州弁護士登録。現在、清水建設国際支店(シンガポール)に出向中。

 ■はじめに

 2013年3月27日、米国連邦最高裁判決は、クラスアクションの承認をより厳格化する判決を下した(Comcast Corp. v. Behrend, 569 U.S. __ (2013)(以下、「コムキャスト事件」という)。

 これは、クラスアクション承認基準を厳格化する判断を下した2011年6月20日のWal-Mart v. Dukes, 564 U.S. __ (2011)(以下「ウォルマート事件」という)に続く判決であり、また、仲裁条項によってクラスアクションを回避することを許容した2011年4月27日のAT&T Mobility v. Concepcion, 563 U.S. ___ (2011)(以下、「AT&T事件」という)も含め、クラスアクションを入口段階で制限しようとする近時の連邦最高裁の流れに沿う判決といえる。

 なお、いずれの判決も、9名の最高裁判事の賛否が5対4と分かれ、多数意見に賛成・反対した判事は全く同じであり、いわゆる保守派とされる判事が賛成に、リベラル派とされる判事が反対に回っている。

 我が国でも、いわゆる日本版クラスアクションの立法化作業が進み、この4月19日に「消費者の財産的被害の集団的な回復のための民事の裁判手続の特例に関する法律案」(「消費者裁判手続特例法案」)として閣議決定されたところである。これら一連の米国連邦最高裁判決は、日本版クラスアクションの解釈・運用においても参考になると思われる。本稿では、コムキャスト事件とウォルマート事件について、問題の所在と判決の概要を紹介し、日本への示唆について若干の考察を行いたい。

 なお、上記のAT&T事件については、本サイトにおける拙稿「仲裁条項によるクラスアクションの回避-米連邦最高裁AT&T事件判決の衝撃-」をご参照頂きたい。また同判決の射程について争われているアメリカン・エキスプレスに対するクラスアクション事件について、間もなく連邦最高裁判決が下されることが予定されている。

 ■米国のクラスアクション

 米国のクラスアクションは、一個人が、同じような立場にある多数の人々(クラス構成員)を代表して訴訟提起し、集団的な請求を行うことを可能とする制度である。その大きな特徴は、オプトアウト方式と呼ばれる仕組みであり、クラス構成員の定義(例えば「某メーカーの某商品を特定期間内にアメリカ国内で購入した者全員」などと定義される)に該当する者は、自ら参加する意思表明を行わなくとも、その訴訟から離脱(オプトアウト)する意思を積極的に表明しない限り、当然にクラス構成員に取り込まれる(なお、厳密には離脱が許されない類型のクラスアクションもある)。

 よって、米国のクラスアクションでは原告の数が数百万人に及ぶことも珍しくなく、請求金額の合計も膨大なものとなる。

 ■クラスアクションの承認

 クラスアクションは裁判所から「承認」(certification)されて初めて正式なクラスアクションとなる(それ以前は暫定的なクラスアクション(putative class action)として手続が進められる)。

 連邦民事訴訟規則23条は、3種類のクラスアクションを定め、それぞれが成立するための要件を定めている。まず、23条(a)は3種類のクラスアクションに共通する要件として、

(1) 提案されているクラス構成員が十分に多数であり(多数性)、

(2) クラス構成員が共通の事実問題又は法律問題を有し(争点の共通性)、

(3) クラス代表者がそのクラスに典型的な請求又は防御を有し(代表者の請求・防御の典型性)、

(4) クラス代表者が公平適切にクラスを代表できる(代表の適切性)

 

ことを定めている。

 次に23条(b)は、23条(b)(1)~(3)まで3種類のクラスアクションごとの要件を定めている。但し、23条(b)(1)は一つの不動産をめぐる所有権の争いなど特殊な類型であり、23条(b)(2)は差止め・宣言判決を求める類型であり、あまり使用されない。それ故、多数のクラス構成員が高額の損害賠償を求める典型的なクラスアクションは、概ね23条(b)(3)に基づき行われ、そこでは、

(5) 共通の争点が、個人に固有の争点に対して支配的であり(共通争点の支配性)、
かつ

(6) クラスアクションが当該紛争解決の方法として、他の方法に比して、公平性及び効率性の点から優れている(紛争解決方法としての優越性)

 

 ことを承認の要件としている。

 ■「争点の共通性」と「共通争点の支配性」

 上記の中でクラスアクションの承認においてよく争われるのは(2)「争点の共通性」と(5)「共通争点の支配性」である。

 「争点の共通性」はクラス構成員に含まれる原告全員の請求に、共通の争点があることが必要とされるが、共通の争点は一つあれば足り、全ての争点が共通であることまでは必要とされない。従前、「共通の争点」は比較的容易に認められてきたが、後述の通り、ウォルマート事件最高裁判決で厳格化された。

 「共通争点の支配性」とは、クラス構成員に共通する事実又は法律上の争点が、各個人に固有の争点に比べて支配的であること、言い換えると、共通の事実証拠又は共通の法的分析によって、全てのクラス構成員の請求について、その実質的な当否を判断できることが必要となる。

 上記の点を満たすために、原告は、一つの立証方法で、クラス構成員全員分を立証できる、ということを示さなければならない。例えば、反トラスト法の事件において、全ての消費者が、被告の独占力行使の故に、競争水準を上回る価格を支払ってきたということの立証、あるいは、虚偽広告の事件において、全ての消費者が被告企業の広告によって誤導されたということの立証を、個々の消費者に固有の立証方法ではなく、一つの共通の立証方法でクラス全体について証明できることを示すということである。

 もし各々のクラス構成員の状況を、個別に立証しなければならないとすると、クラスアクションとして一つの手続で集合的に訴訟遂行することは効率的ではない。従って、「共通争点の支配性」に欠ける事件は、クラスアクションではなく個別の訴訟で解決すべきことになる。

 共通争点の支配性が特に争われるのは、(虚偽表示等への)信頼、因果関係、損害額の算定、消滅時効などクラス構成員の個々の事情が問題となりやすい要件である。

 ■クラスアクション承認の判断基準

 従前の判例では、クラスアクション承認を求める原告は、23条(a)及び(b)の要件について“何らかの立証”(“some showings”) あるいは“入り口程度の立証”(“threshold showings”) を行えば足り、「その後の訴訟手続で十分な証拠が提出されるであろう」という見込みや推測に依拠して、クラスアクションが承認されてきた。

 これらの緩やかな基準が採用されてきた理由としては、クラスアクション承認手続は請求の実体(merits)についての審理、つまり、本案審理を行うことを目的としたものではないため、クラスアクション承認段階で、請求の中身に関わってくるような厳格な調査を行うことは不適切であるという考えがあった。つまり、23条(a)(b)の承認要件に関する審理が、請求の実体要件にも関わり、争点が重複するような場合、本案の判断を先取りすることになりかねないとして、これらを深く検討することなしにクラスアクション承認が認められてきたのである。

 また、従前の判例では、クラスアクション承認の段階では、原告側と被告側のどちらの専門家証人が正しくて、間違っているのかについて結論を出すことは求められていないとされていた。代わりに、原告側の専門家を尊重し、原告側の専門家が示した方法が、「致命的に誤っているとは言えない方法論に基づいている」ことが示された場合は、承認要件は充足されるとされていた。

 ところが、最近になって、下級審において、徐々に承認基準を厳格化する判決が出てきた。これらの判決は、クラスアクションが承認されるためには、予備的な入り口程度の立証では足りず、“証拠の優越”(preponderance of the evidence)の基準を満たすことを要求した。また、クラスアクション承認の判断が、請求の実体的な争点と重複しているとしても審理を避けるべきではないとした。さらに、専門家証人についても、原告側の専門家証人を尊重することを止め、専門家同士の対立があれば、両方の専門家意見を評価し、どちらの信頼性が高いかを判断することを求めた。

 このような中、ウォルマート事件において連邦最高裁が判断を下すことになった。

 ■ウォルマート事件

 空前のクラスアクションと言われたウォルマート事件では、ウォルマートの女性従業員が、同社の雇用条件に不当な男女差別があり、公民権法VII章(Title VII of the Civil Rights Act of 1964)に違反するとして、全米3400店舗の現在及び過去13年間の女性従業員約150万人をクラス構成員に含めるクラスアクションを提起した。クラスアクションが成立すれば、請求総額は約2兆円にも及ぶと言われていた。

 原告は、ウォルマートには全米中の店舗に共通する男女差別方針があり、差別についての“パターン又は慣行”(“pattern or practice of discrimination”)があったとし、このような差別方針は「争点の共通性」を満たすと主張した。

 ウォルマートは、同社の各店舗の従業員の昇進・昇給などの人事は、店舗ごとのマネージャーが裁量をもって判断しており、全米の店舗に共通する差別的方針はないため、争点の共通性はないと反論した。

 なお、同訴訟は(最も多い類型である)23条(b)(3)ではなく23条(b)(2)に基づくクラスアクションが主張されたため、「共通争点の支配性」は要件とされていない。(因みに、23条(b)(2)は差止め・宣言判決を求める類型のクラスアクションであり、金銭請求は許されないと考えられていたが、差止め・宣言判決に付随する金銭請求を求めるクラスアクションは可能であるという下級審判例があり、ウォルマート事件ではその点も争点となっていた)

 連邦地裁はクラスアクションを承認し、控訴審の第九巡回区控訴審裁判所では所属裁判官全員による審理(en banc)の結果、6対5で承認を認め原審を維持した。

 ■ウォルマート事件連邦最高裁判決

 ウォルマート事件の連邦最高裁判決は、厳格な基準を採用する近時の下級審判例を追認し、クラスアクションが承認されるためには、厳格な審査の結果、裁判所が23条(a)の要件が充足されたと判断しなければならず、その厳格な審査において、実体的要件の争点と重複するとしても、それはやむを得ないことであると判示した。

 また、連邦最高裁は、「争点の共通性」について、共通となる争点は一つで足りるが、抽象的な共通性で足りず、その紛争における中心的な争点について具体的に共通することが必要であるとした。そして、中心的な争点とは、その共通争点を判断することで、クラス構成員各々の請求権の当否にとっての中核的な問題を解決できることが必要であると述べた。

 そして、上記の基準をウォルマート事件に当てはめると、共通の争点として、どのような差別的なパターン又は慣行があったのかについて具体的な主張が必要であり、それがクラス全体に共通するものとして存在したということが示される必要があると述べた。

 原告は、(1)給与及び昇進についての男女差別を示す統計データ、(2)社会学者による分析、(3)差別を受けたことを述べる数百の女性従業員による陳述書、という証拠によって、ウォルマート全店舗に共通の差別的方針があることを示そうとした。しかし、連邦最高裁は、これらでは全米3400店舗を包括する差別方針があることの立証としては足りないと判断し、「共通の争点」に欠けるため、クラスアクションの承認は認められないとして、結論的に原審判決を破棄した。

 ■コムキャスト事件

 コムキャストは、フィラデルフィア地域における競合するケーブルテレビ業者を買収し、コムキャストが地域外に保有するケーブルテレビの施設を対価として、競業事業者が当該地域に有するケーブルテレビ施設を獲得するという取引を合計9回行った。コムキャストの契約者は、これら同社の行為は反トラスト法に違反し、結果として、競争価格よりも高い価格を支払わされたとして、当該地域のコムキャストの現在及び過去の契約者約200万人をクラス構成員とするクラスアクションを提起した。

 連邦地裁は、本件で23条(b)(3)の「共通争点の支配性」が満たされるためには、

(1) 反トラスト法違反によって、クラス構成員に損害が生じたことが、クラス全体に共通する証拠で立証可能であること、及び

(2) 上記の損害額について、クラス全体に適用になる共通の方法によって算定可能であること

 

が必要であるとした。

 原告は、反トラスト法違反による損害として、コムキャストの行為によって生じた「反競争的な効果」(antitrust injury / antitrust impact)について4つの理論を主張し、また、これらの反競争的な効果から生じた損害の額については、クラス全体に共通する方法で測定が可能であるとしてクラスアクションの承認を求めた。

 これに対して、連邦地裁は4つの反競争的効果の理論のうち、3つについては拒絶したが、1つの理論についてはクラス単位での立証が可能であるとして受け入れた。また、その理論から導かれる損害の額はクラス単位での算定が可能であると判断し、クラスアクションを承認した。

 これに対し、コムキャストは反競争的効果の理論と損害算定との因果関係に問題があるとして争ったが、控訴審は、クラスアクション承認の審理は、損害算定方法の当否という請求の実体について判断を行う場ではないとして、連邦地裁の決定を維持した。

 ■コムキャスト事件連邦最高裁判決

 連邦最高裁の多数意見は、(ウォルマート事件で明示的に判断された)23条(a)の要件のみならず、23条(b)についても厳格な審査が行われなければならず、クラスアクションの承認を求める者は、23条(b)の要件の少なくとも一つ(つまり、クラスアクション3類型のうち一つ)が満たされていることについて、証拠による証明を行わなければならないと判示した。

 また、連邦最高裁は、「共通争点の支配性」の要件を満たす為には、クラス全体に適用される損害算定方法を提示しなければならないと述べた。つまり、それが提示できなければ、各個人の損害算定という問題がクラスに共通する争点に優越してしまうため、「共通争点の支配性」が認められなくなるとした。

 さらに、連邦最高裁は、損害の算定方法は、法的責任(liability)についての主張と一貫性がなければならないと述べた。

 そして、連邦最高裁は、本件で原告が提出した損害算定方法は、4つの反競争的効果の理論のうち、連邦地裁が拒絶した3つの理論から生じる損害と、連邦地裁が受け入れた理論から生じる損害とを区別していないと述べた。

 つまり、連邦地裁は、反トラスト法違反によって生ずる(クラス全体に共通する証拠で立証可能な)損害として、4つの反競争的効果の理論のうち1つしか認めなかったにもかかわらず、損害額の算定方法については、4つの理論が区別されておらず、結果として、連邦地裁が認めた理論のみに起因する損害額を算定できる方法となっていない。よって、連邦最高裁は、原告が主張した損害算定方法は、クラス全体に共通する方法で損害を算定できるものではないと判断した。

 以上より、連邦最高裁は、原告の損害論は「共通争点の支配性」を満たさないため、クラスアクションは承認されないとし、原審を破棄した。

 ■連邦最高裁判決の影響

 両事件によって、クラスアクションの承認要件について、23条(a)及び(b)のいずれについても、厳格な審理が行われることが明らかになった。

 コムキャスト事件連邦最高裁判決は、「共通争点の支配性」の要件を満たす為に、クラス全体に適用される損害算定方法を提示しなければならないと述べた。この点、従前は、損害額の立証については、個人の事情が影響するとしても、それによってクラスアクションの承認が妨げられるものではないと判断する判決も多かったが、連邦最高裁は、損害額の算定方法についてもクラス全体に共通する方法を求めるものとした。

 換言すれば、クラスアクションの承認を求める原告は、「共通争点の支配性」を満たすために、法的責任の成否についての重要な争点のみならず、損害額についても、クラス全体に共通する方法で算定できる方法を提示しなければならなくなったといえる。

 以上のように、近時の連邦最高裁はクラスアクションを承認段階で厳格に吟味することにより、クラスアクションを制限する傾向にあるといえる。これにより、これまでは、クラスアクションが承認された後、サマリージャッジメント等のトライアル前申立て、あるいは、トライアルにおいて審理されてきた請求の実体的要件についても、クラスアクション承認段階で、相当の立証が要求されることになる。

 ■厳格化の背景

 クラスアクションが承認されれば、被告企業は、莫大な損害賠償の評決のリスクが間近に迫ることになり、和解交渉における立場が著しく弱くなる。クラスアクションは、「被告に法的責任がない場合でさえ和解金の支払いを強いる脅迫手段」であると批判されることもあるが、巨額の請求額と、予測が極めて困難とされる陪審員裁判を目の前にする企業の恐怖は計り知れない。近時の連邦最高裁は、クラスアクションの濫用のおそれを問題視して、クラスアクションを制限していく方向に針が振れているといえよう。

 米国のクラスアクションは連邦裁判所のみならず、州裁判所に提起される事件も多い。この点、2005年に成立したクラスアクション公正法(Class Action Fairness Act of 2005)は、クラスアクションに対する連邦裁判所の管轄を広げ、州裁判所から連邦裁判所への移送(removal)を容易にしている。

 このように米国は、クラスアクションを連邦裁判所に集め、連邦裁判所では、クラスアクションの承認を厳格化して、クラスアクションの濫用を抑えようとしている。

 ただし、必ずしも厳格化一辺倒ではなく、2013年2月27日に下されたAmgen Inc. v. Connecticut Retirement Plans and Trust Funds, 568 U.S. ___ (2013)では、連邦最高裁は、不実開示を理由とする証券訴訟クラスアクションにおいて、開示事実の「重大性」(materiality)の要件は、「共通争点の支配性」要件のために立証することは不要であると判示している。

 ■終わりに 日本版クラスアクション(消費者裁判手続特例法案)への示唆

 先日、わが国でも法案が閣議決定され、消費者裁判手続特例法案の具体的内容が明らかとなった。それによると、これまでに審議されてきた制度案のとおり、一段階目の手続として、特定適格消費者団体が「共通義務確認の訴え」を提起し、その結果、被告企業の責任が認められれば、二段階目の手続として、該当する消費者が加入する「簡易確定手続」が行われることになる。

 「共通義務確認の訴え」について、公表された法案の第3条4項では、

 「裁判所は、共通義務確認の訴えに係る請求を認容する判決をしたとしても、事案の性質、当該判決を前提とする簡易確定手続において予想される主張及び立証の内容その他の事情を考慮して、当該簡易確定手続において対象債権の存否及び内容を適切かつ迅速に判断することが困難であると認めるときは、共通義務確認の訴えの全部又は一部を却下することができる。

 とあり、これは米国のクラスアクションにおける「争点の共通性」、「共通争点の支配性」に類似する要件を取り込んでいると理解される(パブリックコメントに対する消費者庁の回答からもそれが窺われる)。

 しかし、具体的な運用に当たっては、

(1) 「共通義務確認の訴え」が正式に成立するために、裁判所による「承認」を要するのか

(2) 「共通義務確認の訴え」の成立の要件について、どの程度の審査が行われるのか

(3) 立証責任は誰が負うのか

(4) 本案の争点と重複する場合、深い審理を避けて要件を認めるべきなのか、あるいは、重複を恐れず要件の充足を厳格に判断すべきなのか

 

という問題が生じてくるであろう。

 その回答次第で、日本版クラスアクションの提起のしやすさ(濫訴の危険)は大きく変わってくる。

 前述の通り、米国では、

(1) クラスアクションが正式に成立するためには、裁判所の「承認」を要する

(2) クラスアクションの承認の要件については厳格な審査が行われる

(3) 原告がクラスアクション承認要件の充足を立証する責任を負う

(4) 本案の争点と重複しても厳格な審理を行わなければならない

 

ものとされている。

 この点、日本ではどうなるのであろうか。法案3条4項の文言からは、「共通義務確認の訴え」の成立のために裁判所の

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