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「圧力過大になるので注水を絞って」福島第一2号機

3月17日午前8時24分から午前8時28分まで

 福島第一原子力発電所(1F)が2011年3月11日に地震と津波に襲われたときから、東京電力は東京の本店と福島第一原発の緊急時対策室を専用回線で結んで、テレビ会議を開いてきている。その録音・録画の一部が東電本店で記者に限定公開されている。そのうち、2011年3月17日午前8時24分から午前8時28分までの場面をここに紹介する。

  ▽まとめ:奥山俊宏

  ▽注:一部の音声が東電において「ピー」音で聴取不能とされており、また、「ピー音」がなくてもよく聞き取れない言葉があり、それらについては適宜「●●」や「○○」「peee」「piiii」などの表現で示しました。

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 17日午前8時24分(注1)、福島第一が本店に呼びかける。震災発生7日目の朝。3号機の使用済み燃料プールに自衛隊ヘリで水を投下するための準備が進められている。


1F●●
:すいません。本店、本店さん。あのー、福島第一のpeeeeですけども。よろしいでしょうか。

本店武藤副社長:はい。本店です。

1F●●:あ、すいません。あの、●●ですけれども。あの、いま炉水位とサプチャンのパラメーターなんですけれども、あの、本店さんからも問題が提起されていて、2号機の炉水位、サプチャンの水位が高くなってるっていうようなことで、あの、炉水に注入する量をですね。発生蒸気相当に絞りたいと思います。

本店武黒フェロー:あの、うまく絞れるの?

1F●●:それで10立米パーアワー。で、それに絞れなければですね。あの、間歇運転みたいな形で、調整したいというふうに考えます。それでよろしいでしょうか。

本店武黒フェロー:え、ちょっと、あの。

1F●●:すいません。あの、復旧班の●●ですが。

本店武黒フェロー:本店で検討・・・。

 福島第一で話が続いているため、武黒フェローは発言を途中でやめる。1時間あたり10立方メートルということは1分あたりだと166リットル余になる。「サプチャン」というのは格納容器の底部にあるドーナツ状の圧力抑制プール、別名、サプレッションチャンバーのことだ。


1F●●
:絞れる方向にはもってけます。ただ、166リッターパーミニッツ、いわゆる10トンパーアワーのとこで安定するかどうかは、はっきり言って自信がもてません。そのあたりまで絞ってみて、で、だめであれば、私の意見としてはもう少し上のほうで安定させた値で連続運転のほうがいいと思うんですが。

本店武黒フェロー:本店の意見は?

本店●●:今、確認します。お待ち下さい。

本店武黒フェロー:ちょっと現場のかた、申し訳ないけど、待ってもらえますか。

 午前8時26分(注2)、8秒ほど間が空いた後、携帯電話の着信音が聞こえ、「ピー」音が入る。
 本店にいる細野首相補佐官が「●●さん。9時半だよね」と言っている。本店のだれかが「9時半って第一投?」と言っている。細野補佐官は前々日の15日未明に東電本店に乗り込んできて、以来、対策本部に詰めている。


本店●●
:はい第一投、9時半ですね。はいはい。

本店細野首相補佐官:もう、次やったほうがいいですよね? 現場でもなんとかしなきゃいかんと。海江田大臣ちょっと挨拶しますから。peeeに説明させていただいて。

 細野補佐官がだれかにマイクを渡す。


本店武黒フェロー
:じゃあ大臣お見えになったら。すぐ。

本店武黒フェロー:えっと、本店のほうのレスポンス早くして下さい。

本店●●:あ、今すぐ来ます。

 午前8時26分(注3)、武黒フェローが、2号機原子炉への注水の量を減らす案について、本店側の見解をせかす。その5秒後、本店にいる峰松顧問が「あの、オッケー。あのpee。もともと10トンパーアワーだからね」と言っている声がマイクに拾われる。


本店武黒フェロー
:ちょっとですね。後ろのミーティングをすぐしたいので、本店側のほうのレスポンスがまだ出来ないようであれば、ちょっと。

 午前8時26分(注4)、本店にいる峰松顧問が2号機への注水の量について話している声がマイクに拾われる。


本店峰松顧問
:10トンパーアワーなので、10トンパーアワーにしてもらって結構ですよ。それ以上やったら、ベッセルのほうがオーバープレッシャーになっちゃう

本店○○:ああ。入れすぎてね。

本店峰松顧問:だからあなた、ちゃんと答えないと。答えて。今それを答えて、答えて。今の!

本店武黒フェロー:もう時間ないんだから早くレスポンス出来ないの。

 親が子を諭すように峰松顧問が別の社員に発言を振り付けている。それに重なるように武黒フェローが返答を急がせる。「ベッセル」というのは「容器」という意味。原子炉圧力容器を指すことが多いが、ここでは、それを含めた格納容器の意味で使われているとみられる。「子」の立場の社員が発言を始める。


本店○○
:はい。えっと、あの、今、だいたい崩壊熱で必要なぶんは概略10トンパーアワーの水分量ですが、それ以上を入れるとオーバープレッシャーになります

 武黒フェローは、いらいらして先をせかすように「はい、はい」と繰り返し言う。そして、「だから?」と結論をせかす。


本店○○
そういう状況なので絞ったほうがいいと思います。

本店武黒フェロー:はい。発電所。絞るということだけど、私は

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