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会社の監査役と監査人の会計士の関係を金融庁審議官に聞く

公認会計士・監査審査会の佐々木清隆事務局長にインタビュー

加藤 裕則

 会社の会計監査人の選任を株主総会に提案する権限を取締役から監査役に移すことなどを盛り込んだ会社法改正案がこの4月25日に衆議院を通過し、現在、参議院で審議されている。会計士の独立性と会計士に対する社会の信頼感を高めることが狙いだ。同時に、監査役との協力体制の強化も期待されている。昨春、制定された不正リスク対応基準にも盛り込まれた会計士と監査役の関係は今後、どうなるのか。会計監査人はどのように対応するべきなのか。金融庁の公認会計士・監査審査会の事務局長を務める佐々木清隆氏(金融庁検査局審議官)に聞いた。

▽聞き手・筆者: 加藤裕則

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佐々木 清隆(ささき・きよたか)
 東京都出身。1983年、東大法学部卒業後、大蔵省(当時)に入省。金融監督庁(現金融庁)検査局、OECD(経済協力開発機構)、IMF(国際通貨基金)など海外勤務を経て、2005年に証券取引等監視委員会事務局特別調査課長。2007年に同総務課長。2010年に金融庁検査局総務課長。2011年から現職。
 ――そもそもこれまで会計監査人と監査役の連携は十分だったのでしょうか。

 佐々木氏: 我々はそれは不十分だと言ってきた。審査会の立場から見ると、監査法人は監査役と十分なコミュニケーションを取っていない。監査法人は、監査役に対して会計監査の状況を十分に説明してこなかった可能性がある。一方、金融庁の立場で金融機関の監査役から聞いてみても、コミュニケーションが十分ではないことが分かった。

 ただ、両者の協力は、不正リスク対応基準に明示的に盛り込まれ、少しずついい方向に変化が出ている。例えば、監査法人が監査役に説明することが増えている。会計士協会がルールをつくったほか、監査役協会と共同研究報告も作成した。従来よりもコミュニケーションを取るようになってきている。

 ――会計監査人は、監査役のことを信用していない気がします。経営者と監査役が一体だと受け止めている監査人が多い気がします。

 佐々木氏: 会計士にとって、企業側のカウンターパート(窓口役)は監査役だ。ただ、実際に監査役がその機能を果たしているのかが問われている。確かに、会計監査人が不信感を持っている事例もあるようだ。監査役は、独任制で権限も十分にある。それでも機能していないと見られるのは、人の問題ではないだろうか。やはり、社長に指名されて就任していることが大きいと思う。監査役の手足になるスタッフが十分でなく、監査役に社内の情報が十分に上がらないことも問題だ。会社の内部監査部門との連携が必要だ。

 ――金融商品取引法193条の3で、会計監査人が企業における法令違反を発見した場合には、監査役に通知することになっています。この運用状況は。

 佐々木氏: この193条の3の通知が表面化した事例としては、春日電機やセラーテムテクノロジーの案件があった。ただ、それ以外にも、複数の事例がある。これは個人的な考えだが、(通知の事実について)監査法人が公表することはできないが、通知を受けた企業が公表する必要はあると思う。投資者の判断に影響を与える情報ではないか。情報開示の必要な場合についての、取引所の上場規則で包括的な条項もある。

 ――監査法人の交代では、「適正」との意見を求めて新しい監査法人を探す、いわゆる「駆け込み監査法人」の問題が指摘されています。また、交代時の適時開示資料でも、「任期満了により」「特段の意見はない」と無味乾燥な表現が多く、実態を表していないのではとの問題提起も出ています。

 佐々木氏: 監査法人が交代する場合、実際にはいろんな理由があると思う。開示の仕方、させ方に課題がある。もっと、任期満了の理由を正しく、投資家が納得するような形で書くべきだと考える。審査会としては、本当に任期満了なのか、引き継ぎはどうなっているのかについて関心を持っている。日本公認会計士協会の実務指針などでは、前任と新任がお互いにコミュニケーションをとることになっている。そういうところは重点的に検査している。

 ――企業不祥事などに出てくる「不良会計士」のリストを作っていると聞いていますが、どんなものでしょうか。

 佐々木氏: 公表資料や金融庁の検査等から、問題となる特定の会計士を抽出している。制度としては、5人いれば監査法人をつくれる。設立後に届け出ればいい。処分されるとすぐに解散して別の法人をつくる。こんな中で、共通して出てくる人(会計士)がいる。そういった人たちが、どこの企業を監査しているのか、フォローしている。監査法人の名前がころころ変わ

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