検察不祥事と猪瀬知事5千万円を暴いた原動力
(2)調査報道記者たちと、萎縮し、やる気を失った検察
村山 治
ロッキード事件、リクルート事件など戦後日本を画する大事件を摘発し、「検察のレジェンド」と呼ばれた吉永祐介元検事総長が亡くなって1年が経つ。それを機に、吉永さんを長く取材してきた元NHK記者の小俣一平さん(62)と元朝日新聞記者の松本正さん(68)に、吉永さんと特捜検察、さらに検察報道の今と昔、それらの裏の裏を語ってもらった。猪瀬直樹・前東京都知事と徳洲会の事件の捜査処理に焦点をあてた
第1回「ネズミを捕らない猫になってしまったのか特捜検察」に続き、今回は、猪瀬前知事の5千万円受け取りの事実と史上最悪の検察不祥事を明るみに出した調査報道の原動力の真実へと話題が進んだ。
●特ダネ連発
松本 正(まつもと・ただし)氏
中央大学総合政策学部特任教授。
1970年、中央大学法学部卒。朝日新聞の東京社会部で司法クラブキャップ、次長、編集委員、部長代理、部長。その後、広報宣伝本部長、編集局長、ジャーナリスト学校長を歴任。
松本:話は変わりますが、最近の朝日新聞は、いい特ダネが相次いでいます。猪瀬さんへの5千万円資金提供を暴いた2013年11月22日朝刊の記事がきっかけで、猪瀬さんは辞職し、公選法違反で罰金刑を受けました。2014年3月5日の朝刊では、元警察庁長官の後藤田正晴さんと元国家公安委員長の村井仁さんのそれぞれの秘書に西松建設が警察病院の工事受注の口利きをしてもらった謝礼として計2千万円の裏金を渡していたことを暴いた。あれも、見事なスクープでした。いずれも特別報道部の記者が活躍したと聞きました。
2005年に当時の秋山耿太郎社長から私が特命を受けて編集局長として調査報道専従チームをつくりました。各部や各本社から希望する記者を募り、「手探り」という形でのスタートでした。それが2011年に特別報道部となりました。「プロメテウスの罠」企画や除染手抜きの特ダネで成果を上げてきましたが、ここに来てますます期待に応える成果が現れてきた、と思っています。
小俣 一平(おまた・いっぺい)氏
東京都市大学メディア情報学部教授。
1952年2月、大分県杵築市生まれ。早稲田大学大学院博士後期課程修了(博士・公共経営)。NHK鹿児島放送局、社会部で記者、司法キャップ、NHKスペシャル・エグゼクティブプロデューサーを歴任。出版社「弓立社(ゆだちしゃ)」代表。坂上遼の筆名で探訪記者。著書に『新聞・テレビは信頼を取り戻せるか』『消えた警官』『ロッキード秘録』『無念は力』など。
小俣:猪瀬さんへの5千万円資金提供の特ダネは、特捜部が摘発した徳洲会の組織ぐるみの選挙違反事件捜査の関連で出てきた話ですね。あれは、
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