ロッキード事件、リクルート事件など戦後日本を画する大事件を摘発し、「検察のレジェンド」と呼ばれた吉永祐介元検事総長が亡くなって1年が経つ。それを機に、吉永さんを長く取材してきた元NHK記者の小俣一平さん(62)と元朝日新聞記者の松本正さん(68)に、吉永さんと特捜検察、さらに検察報道の今と昔、それらの裏の裏を語ってもらった。6回目は、前回に引き続き、ロッキード事件の捜査について語る。今回の話題の中心は、米国の裁判所で贈賄側のロッキード社幹部に刑事免責を約束して贈賄供述を得た嘱託尋問と、田中角栄元首相の電撃逮捕だ。
●嘱託尋問調書入手の苦労
吉永祐介さん=1988年12月19日、東京・霞が関
小俣:さて、検察の捜査です。特捜検察は、8年間の眠りから覚め、事件の解明に向け動き出します。主任検事に抜擢されたのが、特捜部副部長の吉永祐介さんでした。表面上、全日空や丸紅関係者に対する偽証罪などでの捜査が先行するのですが、それは、あくまで、田中角栄元首相を逮捕するための準備行動でした。
米司法省が提供してくれた調査資料に決定的な記述があったのです。ロ社元社長のコーチャンさんは議会での証言に加え、4月6日に米証券取引委員会(SEC)の聴取を受け、売り込み工作を詳細に供述していました。
村山:政府は日米司法取り決めを結び、検察は、SECの調査資料を米司法省から提供されたのですね。4月10日に検察事務官2人が米国から持ち帰った資料に
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