2014年08月01日
東京第五検察審査会が判断の根拠として重視したのは、政府の地震調査研究推進本部(推本)が2002年7月31日に公表した「三陸沖から房総沖にかけての地震活動の長期評価」。推本はその中で、マグニチュード8クラスの津波地震が福島県沖を含む日本海溝近辺で今後30年以内に発生する可能性が20%程度あると予測していた。
東電は当時、土木学会の津波評価部会の「原子力発電所の津波評価技術」に基づく想定で原発の安全対策を決めていたが、推本の「長期評価」はそれを抜本的に覆す内容だった。しかも、2004年5月、土木学会の津波評価部会で研究者らにアンケートしたところ、土木学会の「津波評価技術」よりも、推本の「長期評価」を支持する意見のほうが多かった。検察審査会は、
推本は、地震予測に関し、日本で権威を有する機関であり、その予測は科学的な根拠に基づくものと考えられ、当然、推本の長期評価は最新の知見として取り込むべきものである。
と断定している。
議決要旨によると、東電の土木調査グループは、国の新耐震指針(2006年)に照らした耐震バックチェック(安全性再評価)の最終報告の中で推本の「長期評価」をどう取り扱うべきか、2007年11月ころに検討を始めた。2008年2月、東電社内で、勝俣会長(当時)らが出席して「中越沖地震対応打合わせ」が開かれ、参加者から「14メートル程度の津波が来る可能性があるという人もいて、前提条件となる津波をどう考えるか。そこから整理する必要がある」との発言があった。これに対し、原子力・立地本部長だった武黒副社長(当時)は、福島第一原発と同様に太平洋岸にある東北電力の女川原発や日本原子力発電の東海第二原発に触れて、「女川や東海はどうなっている?」と質問した。同年3月に開かれた「中越地震対応打合わせ」では、耐震バックチェックの中で推本の「長期評価」を「考慮する」との方針が了承された。
すると、同年7月、武藤氏と吉田氏は
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