ロッキード事件が特捜部とメディアの関係を変えた
(10)嘱託尋問調書排除、検察、裁判所と記者クラブ、密着の後遺症
村山 治
ロッキード事件、リクルート事件など戦後日本を画する大事件を摘発し、「特捜検察のエース」と呼ばれた吉永祐介元検事総長が亡くなって1年が経った。それを機に、吉永さんを長く取材してきた元NHK記者の小俣一平さん(62)と元朝日新聞記者の松本正さん(68)に、吉永さんと特捜検察、さらに検察報道の今と昔、それらの裏の裏を語ってもらった。ロッキード事件で総理大臣の犯罪を摘発した特捜検察は、国民から喝采を受け、以後、常に政界の腐敗摘発を期待されることになった。第10回の本稿では、そうした構造が、「独善」「暴走」などの批判をいま検察が受けている遠因となったこと、検察に対するメディア側のチェックは十分に機能したのか、などを論じる。
●嘱託尋問調書でスタンスを変えた裁判所
村山 治(むらやま・おさむ)氏
朝日新聞記者。
徳島県出身。1973年、早稲田大学政経学部卒業、毎日新聞社入社。大阪、東京社会部を経て91年、朝日新聞社入社。著書に「特捜検察vs.金融権力」(朝日新聞社)、「市場検察」(文藝春秋)、「小沢一郎vs.特捜検察、20年戦争」(朝日新聞出版)、「検察: 破綻した捜査モデル」(新潮新書) 。
村山:ロッキード事件に対する裁判所のスタンスと、それに対するメディアの報道姿勢についても触れなければなりません。
象徴的な問題が、捜査段階で触れた、違法の疑いがあった嘱託尋問調書に対する評価です。
公判で田中角栄元首相ら被告側は「嘱託尋問は、検察側が証拠収集を焦る余り、証人にはわが国の法制にない刑事免責の保証を与え、一方で、被告側の反対尋問権は奪うなど多くの違法を積み重ねて行われた。こうして入手された調書には
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