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「企業統治」強化はなるか、政府の社外取締役起用促進策

山本 憲光

 安倍政権の成長戦略のひとつである「企業統治」強化の一環で、金融庁と東証が有識者会議を立ち上げ、11月末までに「コーポレートガバナンス・コード」の原案をまとめる見通しとなった。経営陣のお目付け役になる社外取締役の起用を促し、外から改革を迫ろうとするものだ。一方で、日本の企業社会では社外取締役に対する理解が十分ではない、との指摘もある。山本憲光弁護士が、会社法の改正などにより今議論の的となっている社外取締役の役割について多角的に考察する。

  

日本型取締役会における社外取締役の役割

西村あさひ法律事務所
弁護士 山本 憲光

山本弁護士拡大山本 憲光(やまもと・のりみつ)
 1991年、東京大学法学部卒。司法修習47期。1995年検事任官、東京地検、法務省民事局などを経て、2006年に退官、弁護士登録、西村あさひ法律事務所入所。専門は、一般企業法務、会社関係訴訟、公益法人法制、海事法、企業危機管理(コンプライアンス)、刑事事件等。

■はじめに

 本年(2014年)6月20日、会社法の改正法が成立した。施行は来年(2015年)の春が見込まれている。

 今回の改正は、2007年の会社法の施行後、最も大規模な改正であり、いくつかの柱があるが、その中の目玉の一つとされているのが、社外役員(社外取締役・社外監査役)の社外性要件の見直しと、社外取締役の不選任理由の開示である。もともと、改正法案の要綱が審議された法務省法制審議会会社法制部会では、社外取締役の選任の義務付けの是非として議論されたものであるが、結果としては、義務付けはしない代わりに、選任しない会社は定時株主総会において「社外取締役を置くことが相当でない理由」を説明しなければならないこととされた。

 これは英国等のコーポレート・ガバナンス・コードが採用する、”comply or explain”のルールを採用したものとされているが、いずれにしても、今回の会社法改正において、社外取締役の選任義務付けが大きな論点となったのは、会社法制部会が設置された民主党政権時代から、現在の自民党安倍政権に至るまで、コーポレート・ガバナンスの強化が低迷する日本経済の強化に必要であるという認識、そして、社外取締役の活用こそがコーポレート・ガバナンス強化の最有力手段(の一つ)という認識が一貫して政府の要路において存在していたからであろう。

 もっとも、いうまでもなく、社外取締役も取締役会の一員であることには変わりはないから、社外取締役の果たすべき役割に関する理解は、当然ながら、取締役会がコーポレートガバナンスにおいて果たすべき役割と連動している。しかしながら、実は、日本の取締役会の位置づけ、ないしこれに対する理解には社外取締役選任義務付けの積極論者の中でもズレがあり、これが社外取締役の役割に関する理解にも影響を及ぼしているように思われる。本稿では、このような観点から、社外取締役が果たすべき役割について考えてみたい。

■コーポレート・ガバナンスの強化と社外取締役

 平成26年6月24日に安倍政権が閣議決定した「日本再興戦略 改訂2014」は、具体的な戦略の項目の「1.日本の『稼ぐ力』を取り戻す」の「(1) 企業が変わる」の2番目の項目として「コーポレートガバナンスの強化」を挙げている。具体的には、「コーポレートガバナンスの強化により、経営者のマインドを変革し、グローバル水準のROEの達成等を一つの目安に、グローバル競争に打ち勝つ攻めの経営判断を後押しする仕組みを強化していくことが重要である」とされている。そして社外取締役に関しては、「各企業が、社外取締役の積極的な活用を具体的に経営戦略の進化に結びつけていくとともに、長期的にどのような価値創造を行い、どのようにして『稼ぐ力』を強化してグローバル競争に打ち勝とうとしているのか、その方針を明確に指し示し、投資家との対話を積極化していく必要がある」と指摘されている。

 ここに現れており、また、期待されている社外取締役の役割は、「グローバル水準のROEの達成等を一つの目安に」と謳われていることからも分かるように、資本の効率性を向上させるような経営判断を可能にするものであるということができるだろう。

 問題は、こういった役割を、社外取締役が取締役会の中で具体的にどのように果たすか、である。

■モニタリング・モデル

 コーポレート・ガバナンスの強化において社外取締役の役割を重視する論者の(もちろん全てではないが)多くが取締役会について抱いているイメージは、いわゆるモニタリング・モデルというものである。

 モニタリング・モデルとは、一言でいうと、取締役会は業務執行の決定ではなく、業務執行者の監督を行う機関であるとする考え方である。より具体的には、①取締役会は主として業務執行者の監督を行う、②取締役会は基本的な経営方針、内部統制の在り方、業務執行者の選解任、報酬といった事項を決定にするにとどまり、業務執行に関する具体的な決定は行わない、③監査委員会は取締役会の内部に置かれるが、このことは取締役会が業務執行の具体的な決定にコミットするわけではないことと整合的である、というものである(藤田友敬東京大学教授「『社外取締役・取締役会に期待される役割-日本取締役協会の提言』を読んで」旬刊商事法務2038号4頁参照)。

 ここでいう「監督」は業務執行「者」の監督であって、業務執行そのものの監督ではないため、関与する事項は基本的な経営方針、内部統制の在り方、業務執行者の選解任(人事)、報酬といった基本的な事項にとどまっているといえるが、逆に、特に人事と報酬についてのコントロールは、業務執行者、つまりは経営者に対する監督権のうち、最も強力なものである。「ヒト」と「カネ」が権力の源泉であるという実態は、いかなる組織であっても変わることはない。

 このようなモニタリング・モデルは、典型的には米国企業の取締役会が採用しており、人事、報酬、及び監査(内部統制)それぞれの重要事項ごとに委員会が設けられているのが通常であるが、これらの委員会のメンバーの多数は会社と特別の利害関係を持たない、いわゆる独立取締役である。独立社外者であるからこそ、経営者のパフォーマンス(株主から運用を委託されている資本をいかに効率的に経営に用い、利益をあげているか)を公平・客観的に評価することができ、これを人事・報酬の判断に反映させることができると考えられているのであろう。

 すなわち、モニタリング・モデルにおいては、(独立)社外取締役は、このように業務執行者の監督者として、より具体的には、そのパフォーマンスの評価者としての役割が求められているということができる。

 このようなモニタリング・モデルを取締役会のあるべき姿として考える論者は、近時わが国でも増加しており、例えば、本年(2014年)3月7日付けで、日本取締役協会が公表した「社外取締役・取締役会に期待される役割について」は、前掲の藤田教授の論考では、「いわゆるモニタリング・モデルの考え方を基本において、社外取締役および取締役会に期待される役割を説く、いわば『経営者のためのモニタリング・モデル入門』というべきものである」と評価されている。

■日本型取締役会

 しかし、日本の会社法が規定する監査役会設置会社における取締役会の権限が、このようなモニタリング・モデルに親和的かというと、必ずしもそうではない。

 なぜかというと、わが国での一般的な株式会社の形態である監査役会設置会社の取締役会の権限を規定した会社法362条2項は、「取締役会設置会社の業務執行の決定」(1号)、「取締役の職務の執行の監督」(2号)、「代表取締役の選定及び解職」(3号)を取締役会の権限としているからである。

 すなわち、日本の会社法における監査役会設置会社の取締役会は、基本的に、業務執行の決定機関として位置づけられており、モニタリング・モデルのように、業務執行「者」の監督機関として位置づけられているわけではない。そして、取締役会の監督権限は、そのメンバーたる取締役の「職務執行」そのものを対象としている。すなわち、取締役会のメンバーは、相互に他の取締役の職務執行を監督する義務を負っているのである。後者の義務は、「相互監視」義務と呼ばれることもある。

 モニタリング・モデルでは、取締役会を、業務執行機関やその決定機関でなく、業務執行「者」の監督機関に特化したことにより、(自らは業務執行そのものには関与していないため、)取締役は、経営者のパフォーマンスを冷徹に評価することができると考えられるが、取締役が業務執行そのもの(決定のための一票を投じる立場と、これに加え執行自体を担う立場の2つがある)にも関与する日本の監査役会設置会社の取締役会の場合、その人事構成が、代表取締役を頂点とし、専務、常務、平取締役の位階に分かれるピラミッド構造であることとも相俟って、少なくとも何の工夫もなしには、モニタリング・モデルが想定するような経営者のパフォーマンス評価という機能を期待することは困難であるといわざるを得ないように思われる(むしろ、かかる機能はもっぱら株主総会に期待されているということになろう。ただし、株主総会には代表取締役の選定権限まではないことには留意が必要である)。

 ただし、日本の会社法に、モニタリング・モデルを想定した制度がないわけではない。委員会設置会社(改正会社法施行後は「指名委員会等設置会社」)がそれである。委員会設置会社は、平成14年(2002年)改正商法において「委員会等設置会社」として導入されたもので、いずれも過半数の社外取締役から構成される「指名委員会」、「報酬委員会」及び「監査委員会」の3委員会を取締役会に設置することを義務付け、また、業務執行機関としての「執行役」を設置することによって、まさにモニタリング・モデルが想定する取締役会を日本にも実現することを可能にするものとして導入された。

 しかしながら、委員会設置会社の取締役会の権限を規定する会社法416条1項1号は、「次に掲げる事項その他委員会設置会社の業務執行の決定」としており、基本的には業務執行の決定機関であるという性格においては、通常の取締役会設置会社と異なるところはない。それでも、委員会設置会社においては、一定の重要事項を除き、取締役会の決議によって、業務執行の決定を執行役に委任することができ(会社法416条4項)、これによって、取締役会を業務執行者に対する監督機関にほぼ特化することが可能となっている。とはいえ、このように、基本的には取締役会に帰属させられている業務執行の決定権限を、(重要事項を除いてとはいえ)執行役に委任することは実際には抵抗感を持つ会社も多いようであり、そもそも委員会設置会社制度を採用している会社自体が少ないだけでなく、同制度を採用している会社でも、モニタリング・モデルが本来想定する業務執行者の監督機関に特化した権限分掌を定めている会社はさらに少ないのが実態のようである。ここには、そもそも合議によって業務執行の決定を行うことにより、互いに責任を共有し合うのが取締役会の在り方であるとか、あるいは、取締役会に付託された権限を下位機関に委任することは株主からの批判を免れない、というような、日本型取締役会制度の長年の運用の中で培われた経営者の意識が影響しているのではないかと思われる。

■日本型取締役会においてモニタリング・モデル的色彩を取り入れるための工夫

 委員会設置会社においてすらこのような状況であるから、通常の監査役会設置会社においてモニタリング・モデル的色彩を取り入れるにはかなりの工夫を要することはいうまでもないであろう。

 多くのわが国企業で採用されている執行役員制度は、その導入の経緯も態様も会社によって千差万別ではあるものの、業務執行に専念する機関としての執行役員(業務担当取締役の執行権限も存置される)を創設することにより、取締役会の監督機関としての性格を強化しようとする試みといえる。

 また、これも最近導入している例は多いようであるが、取締役会が、社外取締役ないし外部専門家を構成員とする、任意の諮問委員会としての指名(人事)委員会や報酬委員会を設け、取締役会人事や取締役の報酬に関する決議に関してはそれら委員会に諮問することとする運用も、監査役会設置会社においてモニタリング・モデルの長所を取り入れようとする試みであるといってよいであろう。

 上記の諮問委員会の設置を別にすると、前掲の日本取締役協会の「社外取締役・取締役会に期待される役割について」は、日本型取締役会をモニタリング・モデルに引き付けて運用するための積極的な工夫を提言したものということができる。例えば、提言の2は、取締役会の主たる職務としての経営者(業務執行者)の「監督」を、「経営者が策定した経営戦略・計画に照らして、その成果が妥当であったかを検証し、最終的には現在の経営者に経営を委ねることの是非について判断すること」としており、「監督」の本質が経営者のパフォーマンス評価にあることを明らかにしている。また、提言の6は、個別的業務執行は、法令の許す範囲内で、できる限り経営者に委譲することを求めている。さらに、提言の9は、経営者の監督機能を高めるために取締役会における社外取締役の割合を高めることが望ましいとしている。

 他にもいろいろな提言がなされているが、これらを参考にすると、監査役会設置会社の形態を採用している日本型取締役会を、モニタリング・モデルに近づけるためには、①取締役会の「監督」の本質が経営者のパフォーマンス評価にあることを明らかにすること、②業務執行者への積極的な権限委譲を行うこと、③社外取締役の割合を高めること、が重要であるといえるであろう。

■各取締役会の類型が想定する社外取締役の役割

 そこで、モニタリング・モデル及び(主として監査役会設置会社の形態を採用している)日本型取締役会の双方において想定されていると考えられる社外取締役の役割について考えてみたい。

 まず前者のモニタリング・モデルにおいては、既に再三述べているとおり、業務執行者(経営者)のパフォーマンス評価が取締役会の主たる役割であり、(独立)社外取締役は、会社との特別な利害関係がないために、そのような役割を適切に果たすことができる存在として期待されている。

 他方、監査役会設置会社の形態を採用している日本型取締役会において社外取締役に期待されている役割は、そう単純なものではない。まず、先に紹介した、日本取締役協会の「社外取締役・取締役会に期待される役割について」は、日本型取締役会を可能な限りモニタリング・モデルに引き付けて運用することを可能にしようというものであるから、当然ながら、社外取締役に期待される役割も、モニタリング・モデルにおける社外取締役の役割と近いものになるであろう。しかしながら、取締役会中における社外取締役の員数の割合等の事情によっては、期待される役割と、実際に果たし得る役割との間でのズレが生じる可能性があることは否定できない。

 他方、監査役会設置会社の形態を採用している日本型取締役会を必ずしもモニタリング・モデルに引き付けて運用しようとするわけではない場合、すなわち、本来のいわば伝統的な業務執行決定機関として運用しようとする場合、そこで社外取締役が果たす役割は、大きく分けると、①業務執行決定(経営判断)に際して、当該社外取締役固有のバックグラウンド(企業経営者、法律家、会計士、学者等)に基づく専門的な知見を提供することで、経営判断の合理性確保に寄与すること、②客観的な第三者の視点から意見具申をすることによって、業務執行の決定プロセスに透明性をもたらし、経営判断に関して株主ないしステークホルダーへのアカウンタビリティ(説明可能性)を増大せしめること、③取締役の相互監視ネットワークの中における客観的第三者として、取締役会の、ひいては全社的な内部統制の強化に寄与すること、の3つであると考えられる。

 これらの3つの役割は、もちろん択一的なものではなく、併存し得るものであるが、これまで一般に、「コーポレートガバナンス強化のために社外取締役を新たに選任した」という場合、特に③の役割が念頭に置かれていたように思われる。というのも、①及び②は、ある意味、社外取締役が取締役会での審議に参加する限り当然に期待できることであるし、また、社外取締役がいなくても必要に応じ外部者の意見を求めることによって実現できる(その意味では、上記①及び②の役割は、少なくともそれまでの経営判断の中身が特段問題視されてこなかった会社にとっては、特に「コーポレート・ガバナンスの強化」の名の下に社外取締役を導入する積極的な理由にはならない)からである。むしろ、企業不祥事の発生によって市場の信頼を失った会社が、「コーポレート・ガバナンスの強化」策の一つとして社外取締役の導入を打ち出すとき、社外取締役に期待されている役割は上記③であるものと思われる。

 ただ、上記③については、既に監査役会設置会社では監査役会の半数以上を占めているはずの、社外監査役との役割分担が問題となる(今回の会社法改正で導入される監査等委員会設置会社は、この問題を解消させるものということができる)。むしろ、監査役は独任制であり、取締役の不正監視に関する権限は同輩の他の取締役よりもむしろ強力であると言ってよいから、少なくとも監査役会設置会社においては、結論的には、上記③が社外取締役を選任することの唯一の積極的理由にはなり得ないと考えられる。

 このように考えてくると、伝統的な業務執行決定機関としての取締役会の在り方を前提とする場合、監査役会設置会社において「コーポレート・ガバナンスの強化」のために社外取締役の導入が不可欠であるという理由は、必ずしも十分とはいえないのではないか、少なくとも、何らかの形でモニタリング・モデルに引き付けるような形での取締役会の在り方も同時に実現するのでなければ、監査役会設置会社における社外取締役の存在意義を十分に説明することは困難なのではないか、という疑問を禁じ得ない。

■日本版コーポレートガバナンス・コードが想定する社外取締役の役割

 冒頭に言及した、「日本再興戦略 改訂2014」が、「コーポレートガバナンスは、企業が、株主をはじめ顧客・従業員・地域社会等の立場を踏まえた上で、透明・公正かつ迅速・果断な意思決定を行うための仕組みである。コーポレートガバナンスに関する基本的な考え方を諸原則の形で取りまとめることは、持続的な企業価値向上のための自律的な対応を促すことを通じ、企業、投資家、ひいては経済全体にも寄与するものと考えられる。こうした観点から、上場企業のコーポレートガバナンス上の諸原則を記載した『コーポレートガバナンス・コード』を策定する」こととし、このために「東京証券取引所と金融庁を共同事務局とする有識者会議において、秋頃までを目途に基本的な考え方を取りまとめ、東京証券取引所が、来年の株主総会のシーズンに間に合うように新たに『コーポレートガバナンス・コード』を策定することを支援する。新コードについては、東京証券取引所の上場規則により、上場企業に対して”Comply or Explain”(原則を実施するか、実施しない場合にはその理由を説明するか)を求めるものとする」として、日本版コーポレートガバナンス・コードの策定を決定したことを受け、現在有識者会議での議論が進んでいる。

 この有識者会議においては、少なくとも現段階で議事録が公表されている第3回(2014年9月30日)段階までは、配布された資料を含め(独立)社外取締役の役割に関して突っ込んだ議論がなされたようには見受けられない(なお第2回では監査役制度の意義については若干の議論がなされている)が、同じく「コーポレートガバナンス・コードの制定」を掲げている、自民党・日本経済再生本部が2014年5月23日に公表した「日本再生ビジョン」では、英・仏・独などの欧州諸国の状況について言及した後、「わが国においても同様に、独立取締役設置、取締役など幹部の人事における指名手続き・報酬決定等の透明性確保、経営における監督機能と執行機能の分離、幹部研修のあり方など、日本の上場企業のあるべき企業統治の具体的姿を示し、それを企業がComply or Explainルールの下で尊重する、コーポレートガバナンス・コードの制定を提言する」として、コーポレートガバナンス・コードの中に独立取締役の設置を盛り込むことが提言されているだけではなく、「取締役などの幹部の人事における指名手続・報酬決定等の透明性確保、経営における監督機能と執行機能の分離」まで謳われている。これらに鑑みると、「日本再生ビジョン」においては、モニタリング・モデル的な取締役会像がコーポレートガバナンス・コード制定の前提とされていることが窺われる。

 前述のとおり、「日本再興戦略 改訂2014」は、コーポレート・ガバナンスの強化により、「グローバル水準のROE」の実現を目標としているわけであるが、これを受けて日本版コーポレートガバナンス・コードについて議論を進めている有識者会議が、上記目標達成の手段として、「日本再生ビジョン」と同様に、モニタリング・モデル的な取締役会像を打ち出すこととなるかどうかまでは現在のところ明らかでない。しかし、モニタリング・モデルが企業統治に関するいわゆるグローバル・スタンダードとなっていることや、そのような意識を持つ外国機関投資家への分かりやすさ、説明のしやすさをも勘案すると、少なくとも方向性として同様のものとなる可能性はそれなりにあるように思われる。

 いずれにしても、監査役会設置会社形態を採る日本型取締役会を前提に「グローバル水準のROE」の実現といったような政策目標(もちろんそれ自体の合理性、妥当性は別論であるが)を達成しようとするのであれば、上述したような様々な工夫が必要となってくることは十分留意する必要があると思われる。

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筆者

山本 憲光

山本 憲光(やまもと・のりみつ) 

 1991年、東京大学法学部卒。司法修習47期。1995年検事任官、東京地検、法務省民事局などを経て、2006年に退官、弁護士登録、西村あさひ法律事務所入所。現在、同事務所パートナー。
 専門は、一般企業法務、会社関係訴訟、公益法人法制、海事法、企業危機管理(コンプライアンス)、刑事事件等。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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