メインメニューをとばして、このページの本文エリアへ

左遷先に夜回り重ね、伝説の検事に食い込む

(13)宇都宮病院事件、ロス疑惑

村山 治

 ロッキード事件、リクルート事件など戦後日本を画する大事件を摘発し、「特捜検察のエース」と呼ばれた吉永祐介元検事総長が亡くなって1年が経った。それを機に、吉永さんを長く取材してきた元NHK記者の小俣一平さん(62)と元朝日新聞記者の松本正さん(68)に、吉永さんと特捜検察、さらに検察報道の今と昔、それらの裏の裏を語ってもらった。吉永さんは、多くの取材記者にとって、とっつきが悪く、情報漏れに口やかましく、いやな取材相手とみなされていた。第13回の本稿では、多くの記者が難攻不落と見ていた吉永さんの懐に深く食い込んだ小俣さんの「成功体験」を中心に、検事に対する記者の取材の実態に迫る。

●吉永さんとの接点

村山 治(むらやま・おさむ)
 朝日新聞記者。
 徳島県出身。1973年、早稲田大学政経学部卒業、毎日新聞社入社。大阪、東京社会部を経て91年、朝日新聞社入社。著書に「特捜検察vs.金融権力」(朝日新聞社)、「市場検察」(文藝春秋)、「小沢一郎vs.特捜検察、20年戦争」(朝日新聞出版)、「検察: 破綻した捜査モデル」(新潮新書) 。
 村山:小俣さん、松本さんとも、検察取材を通じて吉永さんと極めて親しい関係になられました。おそらく、お二人とも、吉永さんが最も信頼している記者と言ってよいと思います。松本さんは、吉永さんが東京地検検事正時代に司法記者クラブキャップをされ、キャップとして吉永さんと濃密に付き合われた。その時代はさておき、
・・・ログインして読む
(残り:約13063文字/本文:約13517文字)